2020年11月11日 (水)
感染症専門家 "感染拡大防げるか いまが勝負"
これから本格的な冬を迎えようとしています。
欧米では感染が再び拡大し、フランスやイギリスなどのヨーロッパ各国では、外出の制限や飲食店や劇場の閉鎖など、再び厳しい措置が始まっています。
日本でも感染が拡大していくおそれがあるのか、いまの状況と今後について、感染症に詳しい、国立感染症研究所の元主任研究官で、済生会中津病院の安井良則医師に聞きました。
(インタビューは11月6日に実施)
(大阪放送局記者 井上紗綾)
■感染者が増えている
済生会中津病院 安井良則 医師
-まず、現在の感染状況についてどう見るか-
「海外を見ると、特に北半球のヨーロッパやアメリカの感染者数が過去最高になっていて、日本国内でも全国的に右肩上がりになってきている。特に北海道などの寒い地域が、先に急増してきているという印象をもっている。
大阪でも10月の初旬から中旬にかけてが、いちばん少なかったが、いまは1日100人以上の新たな感染者が出てきている」
-なぜ感染者が増えているのか?-
「感染者の増加の原因の1つは、一般的にコロナウイルスの流行に適している寒い冬に向かっているということ。そしてもう1つは、国内で行われているGo ToトラベルやGo Toイートなどのキャンペーンで、旅行や外食の機会が増えていることが考えられる」
「飲酒を伴う懇親会や、大人数で長時間に及ぶ飲食が、感染の場になったことが多い。酒を飲むこと自体ではなく、大きな声を出すことが問題だ。お酒を飲むと声が大きくなるし、大人数の宴会で大きな声を出していると、いわゆるマイクロ飛まつ=ごく小さな飛まつが飛びやすくなる。宴会の中に感染者が1人いると、距離が離れている人でも感染してしまう。いわゆるクラスターが起こりやすくなるので、注意が必要だ」
-この冬、インフルエンザとの同時流行はあるか-
「現在のインフルエンザの日本国内の発生者数は過去に例を見ないくらい少ない。過去の患者数と比べると100分の1くらいになっている。その理由はよくわからない。もちろんソーシャルディスタンスを保っているからとか、マスクをしているからとか、コロナ対策そのものがインフルエンザ対策になっているのではないかいう指摘もある。しかし、それだけで説明するのはなかなか難しいと思う。ただ、夏に比べると少しずつだが全国的に増えつつあるという印象をもっている。例年、1月から2月にかけてむかえる流行の本格シーズンには、流行の規模は例年よりずっと小さくても、ある程度患者が出てくる可能性はある。そうなると、発熱した患者が医療機関にかかったときに、新型コロナと見分けるのは結構難しい問題になるかもしれない」
■最も怖いのは医療崩壊
-このまま増え続けるとどうなるか-
「ヨーロッパのように感染が拡大するおそれは十分にあると思う。このままの勢いで感染者数が増えていけばそうなる可能性が高い。日本ではマスクをする人が多く、周りの人と同じような行動をとる傾向が強いため、いまは感染がある程度抑えられているのかもしれない。しかし、1年で最も流行に適した季節に向かっていっていることに加えて、春や夏に比べると、社会活動が活発になっている。今後も従来の対策だけで抑えられるとは限らず、政府が行うキャンペーンの見直しも検討しなければならない可能性もある。
さらに最も怖いのは、重症患者が増えて、これ以上患者をみられない状態になったり、入院が必要な人が入院できなくなったりして、医療機関が崩壊すること。これは医療従事者だけではなく、国民の皆さんで対策を徹底して防がなければならない」
■3つの感染経路を知って有効な対策を
-わたしたちはどんな対策を行えばよいのか-
「個人が行うべきことは、基本の感染対策を徹底することに尽きる」
「その際、感染経路によってどんな対策が有効かを知っておいてほしい」
「感染経路には、▼飛まつ感染 ▼接触感染 ▼マイクロ飛まつ感染の3つがある。
▼飛まつ感染は、日常生活で友人と会話する場合など、人との距離が近くなるときにマスクを着用することでかなり防ぐことができる。マスクを外す会食などのときは、距離を取ることが有効だ。
▼接触感染は手や指を衛生的に保つことで防げる。せっけんで洗うだけでも十分効果があるので、手洗いや消毒をこまめに行うことが重要になる。
そして、▼マイクロ飛まつ感染、これは、ごく小さな飛まつが舞い、一時的に空気感染に似た感染を起こす。大人数での飲み会や、大声で歌う場面などで発生しやすい。これを防ぐためには換気してマイクロ飛まつを外に出してしまうことが大切だ。
マイクロ飛まつ感染はクラスターの原因になっている。できれば大人数での会食などは避けることが望ましい。ふだんの会話では、マイクロ飛まつが出ることはあまりないのでマスクをすれば十分だが、大声を出したり叫んだり、歌ったりするなど、マイクロ飛まつが出やすい行為を行う場合は、密閉された空間では行わないようにし、換気を十分に行うなど、環境を整えるべきだ」
■新型コロナは決して軽い感染症ではない
済生会中津病院 安井良則 医師
「新型コロナはインフルエンザと同じだなどと言う人もいるが、決してそうではないと思う。若い人は症状が軽いことが圧倒的に多いが、高齢者にとっては短期間で命に関わってしまう。新型コロナがはやり始めた今年の3月から4月は、患者をみることも手探り状態で使える薬も限られ、どのような経過をたどるかわからない状態で治療せざるをえなかった。しかし現在は、ある程度の治療方針や見通しもわかってきつつある。ただやはり今でも急激に病状が悪化して、人工呼吸器を装着しないといけなくなる患者が少なくないのが現状だ。
この感染症の対策が難しい原因の1つに、発病する直前が最も感染力が強いということが挙げられる。そのため、症状がないのにウイルスを持っている人が周りに移してしまう。こうした感染の広がりを防ぐためにも、症状がある人だけがマスクをすればいいというわけではないということを理解してほしい。マスクは、もらわないためにするのではなく、人にうつさないためにするものだ。日常的に感染の機会はあるため、自分が感染している前提で、人に感染させないためにはどうしたらいいかを考えて行動してほしい。
日本は本格的な冬を迎えようとしている。今後の感染拡大を防げるかは、いま、一人一人がどれだけ感染対策を徹底できるかにかかっている」
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