かんさい深掘り

2020年02月26日 (水)

広がる"やさしい日本語"

fukabori200226_1.jpg言葉の通じない海外で、相手が早口かつ無表情で話してきたら不安になりませんか?
私は学生時代にビルマ語を学び、タイで暮らしたことがありますが、幾度となく、そんな経験をしました。

では、日本の中ではどうでしょうか。

いま、外国人とのコミュニケーションで重要性が増しているものがあります。
「やさしい日本語」です。
難解な日本語を簡単な表現に言いかえるもので、全国に広がりをみせています。

(大阪局報道部 ニュースリポーター小川真由)

 

災害現場で広がる「やさしい日本語」


去年10月の台風19号。東日本を中心に大きな被害をもたらしました。このとき、ネット上で話題になったものがありました。長野県のツィッターです。

fukabori200226_2.jpg外国人などに向けてひらがなだけの短いことばで情報を発信。
温かい気持ちが伝わると評判になったのです。

「やさしい日本語」とは、ゆっくり短く簡単な日本語です。
相手が1度で分からなければ、分かりやすい表現に変えて、言い直します。

例えば、「高台に避難する」は「高いところに逃げる」に、
「停電中です」は「電気を使うことができません」に、それぞれ言い直します。

 

“外国人と共に生きる”25年前の気づき


この「やさしい日本語」が誕生したきっかけは、25年前の阪神・淡路大震災といわれています。

当時、被災した外国人は、日本語の壁に直面していました。

「震度」や「避難所」といった言葉は、ふだん、耳にすることがなく、理解できませんでした。
このため行政などからの支援も十分に受けられなかったのです。

fukabori200226_3.jpgそうした中で始まったのが、外国人の支援団体による多言語の電話相談でした。
地震の数日後から相談を始めた団体では15の言語で対応しました。
半年で寄せられた相談件数は、およそ1000件。
安否の確認や避難所の案内、住まいや職探し、補償金の相談まであったということです。

そのとき、生まれたのが「やさしい日本語」による対応でした。
当時、被災外国人の電話相談にあたった田村太郎さんは、すべての言語の通訳を確保することが困難だったことが「やさしい日本語」が生まれた背景にあったと振り返ります。

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田村太郎さん

「外国語でなくても、わかりやすい日本語であれば、外国の方との最初の受け止めや会話のきっかけになるのではないかと考えました。そうしているうちに、やさしい日本語が徐々に普及し始めたんです」

 

進化する“やさしい日本語”


「やさしい日本語」は形を変えながら、広がりをみせています。
岐阜市内で行われた、外国人が多い避難所を想定した訓練で使われていたのは「災害ピクトグラム」です。

fukabori200226_5.jpgピクトグラムとは、言葉ではなく、絵や記号で必要な情報を伝えるものです。
例えば、避難所での食べ物を説明するピクトグラムでは、宗教上の理由などで食べられないものがあるかどうか、一目でわかるようになっています。

訓練に参加した外国人留学生の間では「わかりやすい」と評判でした。

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「何が食べられないか簡単に相手に伝えられ、とても助かります。ただでさえ不安な避難所でコミュニケーションが取れるとほっとします」

災害ピクトグラムの制作に携わり、普及にあたっている菊池信孝さんは、日本に住む外国人が増え続けるこれからの時代に、言葉が分からなくても感覚的に情報を伝えることができるピクトグラムの重要性は増すと考えています。

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菊池信孝さん

「災害ピクトグラムの普及が進む背景には、文化が異なる外国人の増加があります。いまや日本の外国人生活者の比率は50人に1人になっています。在留外国人もひとたび災害が起きれば、われわれ日本人と同じように、避難所で衣食住をするのが当たり前の状況になってきていますから、ピクトグラムでの表示は重要になってくると思います」

 

“やさしい日本語”で住みやすい町に


fukabori200226_8.jpgふだんから「やさしい日本語」を使おうという動きも出ています。大阪市生野区は広報誌(2020年2月号)で「やさしい日本語」を特集しました。

生野区は、もともと在日韓国・朝鮮人が多く、いまや5人に1人が外国人です。
おととし発生した大阪北部地震では「やさしい日本語」で情報発信し、SNSの閲覧数は通常の日本語のおよそ14倍になりました。

fukabori200226_9.jpgこれをきっかけに始まったのが「やさしい日本語」を日常的に使おうという取り組みです。
区では「やさしい日本語」で話してくれる店舗や医療機関にステッカーやバッチを配付しています。

HPでは、ステッカーを誰でも無料でダウンロードできる仕組みを作り、全国に広がることを期待しています。

 

やさしいは「easy(易しい)&kind(優しい)」


fukabori200226_10.jpgいま、大阪を訪れる外国人観光客の数も年々増え続けています。
ことしは、東京オリンピック・パラリンピックも行われ、5年後には大阪で再び万博が開かれます。

最近は、翻訳機の精度も上がり、多言語で対応するハードルは下がりました。
世界のさまざまな言語を学ぶ機会も増えています。
ただ、前提として大切なのは、気持ちの部分です

「やさしい日本語」を使うことは、わかりやすい(easy=易しい)だけでなく、不安を抱える外国人が安心できる(kind=優しい)環境を作ること。

25年前に生まれた「やさしい日本語」はその精神を今に伝えてくれているように感じます。



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