2019年12月11日 (水)
広がる医療通訳
ことばの通じない外国でけがをしたり病気になったりしたら、不安ですよね。そんなときに頼りになるのが、医療の専門用語を外国語でも理解する「医療通訳」です。医師と外国人患者のやりとりの橋渡しをする「医療通訳」が、G20大阪サミットや日本中が熱狂したラグビーワールドカップといった、大勢の外国人が訪れた機会を通じて、大阪でも広がりを見せています。
(大阪局ニュースリポーター 小川真由)
■医療通訳の現場では
「医療通訳」の需要が最も高い場所の1つ、多くの外国人が利用する大阪の空の玄関口、関西空港にいちばん近い病院「りんくう総合医療センター」です。ここでは2006年に、関西で初めて外国人を専門的に受け入れる診療科を設けました。
取材に訪れた日は、ブラジル人の女性が診療に訪れていました。母国語のポルトガル語で病状を伝え、これを医療通訳が日本語に翻訳して医師に伝えていました。医師にとって、医療通訳がいることで、患者の訴えをしっかりと把握するだけでなく、患者への説明が的確に伝わっているという安心感を得られ、診察に集中できるといいます。
ブラジル人の女性は、「言いたいことをすべて言うことができるし、お医者さんの言っていることがすべてわかるので、とても安心して診察が受けられました」と話し、ほっとした表情を浮かべていたのが印象的でした。
■医療通訳をもっと広げたい
この病院には13人の「医療通訳」が常駐し、英語・中国語・スペイン語・ポルトガル語と4か国語に対応しています。こうした病院がどんどん増えていくと安心なのですが、医療通訳が常駐している病院は、現在大阪では4か所のみ。
増え続ける訪日外国人に対応するため、限られた数の医療通訳をどう効率的に運用して外国人の安心につなげるか、大阪府が打ち出したキーワードは「遠隔通訳」です。
読んで字のごとく、「遠隔」で「通訳」を受けられるようにするこの取り組みは、6月のG20大阪サミットの期間中に、まずはトライアルとして始まりました。
最新のタブレット端末を使って、病院での医師と患者のやりとりに、離れた場所にいる医療通訳がビデオ通話で参加します。
大阪府によると、G20サミットの期間中、大阪市内23の医療機関で英語・中国語・スペイン語・ポルトガル語・韓国語と5つの言語で24時間対応し、15件の遠隔通訳を行ったということで、本格的な導入を検討する医療機関も出てきているということです。
■ラグビーW杯で浮かんだ課題
来年の東京オリンピック・パラリンピックで大勢の外国人を迎え入れようとしている中、日本で初開催となったラグビーワールドカップは、遠隔通訳がうまく機能するかを検証する場ともなりました。東大阪市の花園ラグビー場や東京スタジアムなど全国の6会場には、ビデオ通話で遠隔通訳ができるよう機材が配備され、準備は万端かと思われていました。
しかし、そう簡単でもありませんでした。
遠隔通訳、とりわけビデオ通話をする場合には、それなりに大容量でデータをやりとりすることになるのですが、何万人もの人がひとところに集まるスタジアムでは、通信容量の確保が難しくなる事態が発生していたということです。
また、一度に大勢の人の医療通訳が必要になる事態が発生した場合はどうするか、まだまだ解消しなければならない課題もたくさんあったと、サービスを提供した会社の担当者は振り返っていました。
■2020年にはどうなる?
厚生労働省のデータによると、全国で医療通訳を配置している病院は4.3%、電話およびビデオでの遠隔通訳ができるところも8.7%にとどまっています。
政府はオリンピック・パラリンピックが開かれる2020年に、外国人旅行者の数を4000万人に増やす目標を掲げていますが、どう安心して過ごしてもらうか、「おもてなし」の準備を急ぐ必要がありそうです。
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