かんさい深掘り

2019年11月01日 (金)

水が金属に変わる!?天王星と海王星の謎に迫る

fukabori191030_1.jpg太陽系の最も外側に位置する天王星海王星
ボイジャー2号の撮影した、青白い見た目の写真が印象的ですよね。

この2つの惑星には、地球と同じように「磁場」が存在しますが、なぜ磁場ができるのかは長年、謎となっていました。

この謎の解明に挑んだ大阪大学などの研究グループが、2つの惑星の内部と同じ状態を実験室で再現することに成功。謎の答えが明らかになりました。

(大阪放送局記者 三谷維摩)

 

天王星と海王星の謎


fukabori191030_2.jpg水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星

私たちが暮らす太陽系で確認されている、太陽の周りを回る8つの「惑星」です。
(9番目の惑星として親しまれてきた冥王星は、2006年に「惑星」の定義を見直された際に、「惑星」から外れました)

fukabori191030_3.jpgボイジャー2号

このうち、最も外側にある天王星と海王星は、アメリカの探査機「ボイジャー2号」しか、たどり着いたことがなく、多くの解明されていない謎があります。

その1つが、2つの惑星に磁場があることです。

fukabori191030_4.jpg星に磁場があるというのは、星が磁石のような特徴を持っているということを意味します。

たとえば、地球には、磁場があり、磁石のような性質を持っています。地球上で方位磁石を使うと、N極が北を向き、S極が南を向きますよね。磁石のN極とS極はお互いに引き寄せ合うので、ややこしいですが、地球を大きな磁石に見立てれば、地球の北極が磁石のS極にあたり、南極がN極にあたります。

天王星と海王星も磁石のようになっていることが分かっていました。

しかし、このことが、長年、研究者を悩ます大きな謎でした。

なぜ、不思議なのかというと、天王星と海王星は「氷惑星」と呼ばれることもある、ほとんどが水や氷でできている惑星だからです。

磁石には、地球のように、鉱石がとてつもない圧力を受けることでできる「永久磁石」と、電気が流れることで作り出される「電磁石」の2種類があります。

天王星と海王星に鉱石はないので、永久磁石はできません。

では電磁石でしょうか?

ところが、水は電気を通しにくい性質があります。確かに、水に電気コードがつかっていると感電の危険がありますが、水は銅や鉄などと比べるとはるかに電気を通しにくく、電磁石にはなりません。

それなのに、なぜ磁場が発生しているのか・・・?

 

惑星の内部を実験で再現


fukabori191030_5.jpgこの謎に挑んだのが、大阪大学大学院工学研究科の尾崎典雅准教授や、岡山大学惑星科学研究所の奥地拓生准教授らの研究グループです。

実験には、大阪大学にある世界有数の大規模なレーザー施設を使いました。
12本のレーザービームを1か所に集めて対象物に当てることで、大きな圧力をかけることができます。

fukabori191030_6.jpg研究グループがまず用意したのは、天王星や海王星と同じ成分の液体です。

天王星と海王星がどのような成分でできているのかは、これまでの研究から明らかになっています。私たちが飲むこともできる通常の水に炭素を混ぜた液体が、2つの惑星を作っています。

fukabori191030_7.jpgこの液体を、レーザー研究所の実験装置に取り付け、2つの惑星の深さ5000キロほどと同じおよそ300万気圧の圧力をかけて、2つの惑星で何が起きているのか探りました。

fukabori191030_8.jpgその結果、液体が高い圧力で圧縮されることで、液体の原子どうしが近づき、さらに、原子の周りを飛び交う電子も近づくことで、電子が動けるようになり、電気が流れる状態になった様子を観測することができました。

本来なら電気を通しにくいはずの水が、電気を通す金属のような状態に変化したのです。

fukabori191030_9.jpgこの状態を再現できたのは、10億分の1秒という極めて短い時間でしたが、研究グループは、この様子を撮影することに成功しました。

この結果から、研究グループは、2つの惑星では、内部の液体が高い圧力の影響で、電気を通すようになり、電磁石のような形で磁場を発生させていると分析しています。

今後は、2つの惑星の磁場について、さらに詳しい解析が進むのではないかと期待されています。

 

レーザー施設の活用拡大にも


fukabori191030_10.jpg今回の研究成果は、宇宙の謎を1つ解明するだけでなく、惑星の地下、奥深い場所でどのような反応が起きているのか分析することで、地球に存在しない物質や素材を作る研究や、新たな物質を合成したり、新たな化学反応を起こしたりする研究に役立つと期待されています。

研究に携わった尾崎准教授は、もともと、宇宙の研究を行っていたわけではなく、レーザーを作ったり、計測機器を作ったりする研究を専門に取り組んできました。

今回の実験で使用したレーザーも、もともとは次世代エネルギー開発の研究のために整備されました。しかし、最近になって分野を超えた研究にも有効活用できることが分かってきて、宇宙プラズマ科学、地球惑星科学、物質材料科学など、さまざまな分野に活用の場が広がっています。

尾崎准教授も、「私たちの太陽系と地球、私たちを取り囲む物質や生命はどこから来たのかという問いに少しでも近づきたい」と考えて、レーザーに関する研究を、地球惑星科学と物質材料科学に結びつけたということです。

fukabori191030_11.jpg

「個人的な興味が、人類にとって価値のあるものか、社会にとって重要であるものか、という物差しを持ちつつ研究を進めていく、というのがより現代的な科学者のマインドです。今回の研究成果は、氷惑星の残された謎を解き明かすステップになると思いますし、巨大な惑星の中でしか作られない物質を地球で作れるということに新たな可能性を感じています」

※掲載された論文はこちら(NHKのサイトを離れます)
https://www.nature.com/articles/s41598-019-46561-6



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