かんさい深掘り

2019年10月09日 (水)

"ただの風邪"と油断は禁物

fukabori191009_1.jpg生まれてまもない赤ちゃんが息をするたびに「ゼイゼイ」「ハアハア」と苦しそうにしていたら・・・。

今の時期、それは、「RSウイルス感染症」という病気のせいかもしれません。

(奈良放送局記者 稲垣雄也)

 

RSウイルス感染症って?


fukabori191009_2.jpg8月末、奈良市内にある小児科の診療所には、RSウイルスへの感染が疑われる子どもが相次いで訪れていました。

診察を受けていたのは、母親と一緒に訪れた1歳の女の子。2週間ほど前からせきが続いているといいます。

診療所の南部光彦医師は、のどの腫れや呼吸の音を確かめたあと、「RSウイルス感染症」の流行が始まっているので注意するよう伝えていました。

診察後、母親に、RSウイルス感染症について、知っているか尋ねると・・。

「名前は聞いたことがありますが、どんな病気なのかは詳しく知りませんでした。子どもの様子をみて不安を感じたら医師にかかろうと思います」

fukabori191009_3.jpg「RSウイルス感染症」は、インフルエンザと同じようにせきなどの飛まつで感染し、5日ほどの潜伏期間を経て、初めはせきや鼻水、発熱など、かぜに似た症状が出ます。

その後、ウイルスが気管支や肺に広がると、特に乳幼児や高齢者では重症化して肺炎や気管支炎などを起こすことがあります。

RSウイルスの「R」は英語でrespiratory「呼吸の」という意味で、こうした呼吸器の症状が特徴の1つです。

2歳までにほぼすべての人がかかる一般的な病気ですが、初めてかかった場合、3人に1人が肺炎や気管支炎になるという報告もあります。

通常は秋から春ごろに流行しますが、ここ数年は時期が早まり、今シーズンもすでに流行が始まっています。

9月29日までの1週間の患者の数を1つの医療機関あたりでみると、次のとおりです。

fukabori191009_gazou1.jpg前の週より減ったところが多いものの、依然として高い水準にあります。

 

急速に悪化することも・・・


fukabori191009_4.jpg取材で、RSウイルスに感染し、重症化した子どもに会うことができました。

奈良市に住む小学2年生の芝淳くん(7)は、生まれて1か月のときにRSウイルスに感染しました。33週の早産だったため、母親の朋子さんは、淳くんの体調の変化に気をつけていたといいます。

退院後、しばらくして自宅のリビングに寝かせていた淳くんが少し苦しそうに呼吸しているのに気がつきました。ところが、熱などはなく、RSウイルスだとは気づかなかったといいます。

fukabori191009_5.jpg

「初めは、あえいでいるだけだったので、何かのどにひっかかったのかなくらいに思っていました。でもそのあと、まず、ミルクの飲みが悪くなり、せきや鼻水が出てきて、呼吸もどんどん荒くなっていきました」

朋子さんは「崖を転がり落ちるように」と表現していましたが、その言葉どおり、淳くんの症状は急速に悪化していきました。

その日の夜は、淳くんが少しでも呼吸がしやすくなるよう一晩中だっこをして夜を明かしたといいます。

fukabori191009_6.jpg淳くんは翌日、集中治療室に入院。検査の結果、RSウイルスへの感染がわかりました。人工呼吸器が必要な状態だったといいます。

fukabori191009_7.jpg当時の肺のレントゲン写真を見せてもらうと、右の肺の上の部分が真っ白になっていました。感染によって肺への通り道がふさがれ、肺がしぼんでしまうという深刻な事態に陥っていたのです。

fukabori191009_8.jpg淳くんは入院後まもなく回復し、後遺症もありませんでした。

朋子さんは、子どもの様子に変化を感じたら迷わず受診することが大事だと改めて感じています。

朋子さん
「子どもが苦しそうにしているサインをちゃんと拾ってあげるのが大事かなと思います。急に元気がなくなったら、早めに病院に行ってもらった方がいいのかなと」

 

家庭でみるポイントは


急速に悪化することもあるRSウイルス感染症。
家庭で子どもをみる場合、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

fukabori191009_10.jpg奈良県立医科大学附属病院の釜本智之医師は赤ちゃんの「呼吸」を注意深く見る必要があると指摘しています。

fukabori191009_11.jpgこの病気は、特に1歳未満の赤ちゃんで重症化しやすいとされていて、ウイルスが肺などに広がると呼吸が浅くなったり、回数が増えたりして、「ゼイゼイ」といった音が出る、顔色が悪くなったり、ミルクを飲まなくなったりするといった症状が出始めます。

特徴的なのが空気をうまく吸えていないときに起きる「陥没呼吸」と呼ばれるものです。
呼吸が速いうえ、息をするたびにみぞおちと首の部分がへこむようになり、重症化の兆候の1つです。

fukabori191009_12.jpg

(奈良県立医科大学附属病院 釜本智之医師)

「胸のみぞおちのところがへこむような呼吸が出てきたり、ヒューヒュー、ゼーゼーというような、『喘鳴(ぜんめい)』と呼ばれる症状が出てくるようであれば、速やかに医療機関を受診してほしい」

 

早まる流行 医療現場の備え


fukabori191009_13.jpgRSウイルス感染症の流行時期が早まる中、患者の発生をいち早く把握し、医療機関を通じて家庭での注意を呼びかける取り組みも始まっています。

fukabori191009_14.jpg釜本医師が中心となって奈良県内の32の小児科の医療機関でメーリングリストを作成。
診療所が中心ですが中には、重症の入院患者を受け入れている救急病院も含まれています。

fukabori191009_15.jpgそのため、県が集めるデータではわからない入院患者の情報なども把握でき、今シーズンも7月の段階で入院患者が相次いでいるという報告が寄せられていました。

こうした情報を共有し、それぞれの医療機関を受診する患者への注意喚起につなげています。

釜本医師
「重症の入院患者が出ているといった話は注意を呼びかけるうえで重要な情報ですが、個々の開業医さんではなかなか把握が難しいということもあり、メーリングリストで共有することを始めました。こうした情報があれば、例えば、家庭に赤ちゃんがいるような人が病院を訪れたときに、流行状況を伝えて注意を促すことで、感染の予防などにつなげられると思います」

RSウイルス感染症は、大人がかかった場合、鼻水程度の軽症ですむことも多く感染に気づかない場合もあるため、乳幼児に触れる可能性がある人はうつさないように注意が必要です。

流行は冬ごろまで続く可能性があり、マスクの着用や手洗いなどの予防策を徹底してほしいと思います。



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