かんさい深掘り

2019年09月18日 (水)

石碑の墨入れで伝える 津波の教訓

fukabori190918_6.jpg江戸時代、2度にわたって、今の大阪市内に津波が押し寄せ、甚大な被害が出たことをご存じでしょうか。
津波が到達した現在の浪速区には、被害を伝える石碑が今も残されています。
地域の人たちは、石碑の建立から160年以上にわたって“あること”を続け、先人が未来へ託した教訓を守っています。

(大阪放送局ニュースリポーター 小野田真由美)

 

石碑に刻まれた文字が伝える被害の記憶


fukabori190918_1.jpgぎっしりと文字が刻まれた石碑

大阪・浪速区、大正橋のたもとにある石碑です。
1854年に起きた「安政南海地震」とその直後に発生した津波の被害の状況が克明に記されています。

〈大地震家崩れ出火〉

〈山の如き大浪立〉

地震の翌年に建てられた石碑を、地元の人たちは『お地蔵さん』と呼び、大切に守ってきました。

『お嫁に来てからずっと、お守りしています。石碑があるから、大津波があったことがわかる。拝ましてもらうことが、生活の一部のような石碑です』

 

大坂の町を襲った巨大津波


江戸時代末期の1854年、大坂の町を襲ったマグニチュード8.4の巨大地震。
地震のあと大阪湾から侵入した津波は川をさかのぼり、現在のJR難波駅あたりまで流れ込んだと言われています。

fukabori190918_2.jpg地震が起きた年に発行された瓦版です。
津波の勢いで船が積み重なり、人が川に落ちるなど、道頓堀川の凄惨(せいさん)な様子が描かれています。

当時は地震や火事が起きると、人々は「船に避難する」という習慣がありました。
余震を恐れた人を乗せた船は津波に流されて押しつぶされ、多くの人々が溺れて亡くなってしまったのです。

 

教訓を後世に伝えるために


fukabori190918_3.jpg石碑を代々守ってきた増井健蔵さんです。
先祖は安政の大地震を経験し、石碑を建立した発起人の1人です。
自宅では、石碑と同じ文面が描かれた江戸時代の瓦版も代々保管してきました。

『160年間、今まで家族や地域の人たちが受け継いできたことは、本当にみんな大したもんやと思います』

fukabori190918_4.jpg増井さんや地域の人たちは、毎年の供養に合わせて“あること”を続けてきました。

それは、石碑のひと文字ひと文字に墨を入れることです。

石碑には、こんな言葉が刻まれています。

〈願くハ 心あらん人 
 年々文字よミ安きやう 
 墨を入給ふへし〉

石碑の文字が読みやすくなるよう墨を入れてほしいという意味だけでなく、そこには別の意味も込められています。
墨入れで文字をたどることで、災害の記憶と教訓が呼び起こされるのです。

実は、この地域では、安政の地震からさかのぼること150年近く前、1707年に起きた宝永地震の時にも、数千の人々が津波に襲われ命を落としました。

〈年月がたてば伝え聞く人も 
 ほとんど無く〉

〈今また同じ場所で
 多くの人が亡くなった 
 痛ましいこと限りない〉

〈大地震の節ハ津波起らん〉

時がたつにつれ、忘れ去られてしまった悲しい経験。
地震が発生したら、津波が起こることを心得ておいてほしい

石碑には、その時の後悔も刻まれているのです。

fukabori190918_5.jpg石碑とともに、160年以上続いてきた「墨入れ」
そこには少しでも被害を減らし、同じ過ちを繰り返さないという教訓を、後世に引き継いでいくという地域の思いがあります。

(増井健蔵さん)
『南海地震いうのが来るように言うてますけど、教訓に気をつけないことには。ずっと今まで伝わってきているから、守っていかなくてはと思う。重みがある、この石碑は』

fukabori190918_6.jpg過去の災害の記録を伝える石碑などは、全国各地に残されています。

その教訓を多くの人に知ってもらおうと、国土地理院は、ことし、石碑などを示す地図記号「自然災害伝承碑」を新たに制定し、国土地理院の地図で掲載を始めました。

関西では、安政の大地震を伝えるものなど31あり、浪速区の石碑もその1つです。

詳しくは、国土地理院のホームページで(※NHKサイトを離れます)
https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi.html



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