かんさい深掘り

2018年01月30日 (火)

何すればいいの?広がる定年準備

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サラリーマンにとって、いつかは向き合わないといけないのが、「定年退職」です。定年退職に対するイメージは、世代や働き方によってさまざまだと思いますが、「まだまだ先のこと」と感じている人は要チェック!です。

最近、定年退職後に向けた準備活動、略して「定活」が注目されているらしいのです。それも定年までまだまだ時間があるはずの、40歳代から「定活」を始めている人もいるとのこと。

「定活」とはいったいどんな活動なのか、そして、いつから始めればいいのか、NHK大阪放送局の西村敏記者が取材しました。

 

活況!定年準備セミナー


「定年後は好きなことをして過ごしたい」というのは、サラリーマンなら一度は考えたことがある人も多いのではないでしょうか。「退職した後は、しばらくゆっくりしながら次の人生を考えよう」という人も。しかし、そんな「定年」のイメージに変化が現れています。

去年12月、大阪市内であるセミナーが開かれました。参加したのはおよそ50人。全員が55歳以上です。セミナーでは中高年の再就職事情や生活設計、それに年金などについて、専門家が最新の情報を紹介していきます。

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国がおととしから始めた定年準備についてのセミナーの様子です。これまで7回開かれ、毎回、ほぼ満席だということで、この日も受講者はメモを取りながら、真剣な表情で講師の話を聞いていました。受講者には、すでに定年を迎えた人もいたのですが、もっと早くから準備をしておけば良かったという声が相次ぎました。

「ひたすら仕事だけをやってきたので、定年後を考える時間が無かった。」(60代男性)
「60歳を過ぎてから新たに考えるのは厳しい」(60代男性)

 

定活ブームの背景は?


定年後をどう過ごすのか。もちろん、サラリーマンにとってはずっと前から大事なテーマでしたが、ここに来てひときわ大きな注目が集まっています。どうしてでしょうか?

背景にあるのが、伸び続ける平均寿命です。

2016年、平均寿命は男性80.98歳。女性87.14歳。いずれも過去最高を更新しました。これからは100歳まで生きる人たちも増えて、「人生100年時代」の到来も夢ではなくなってきています。定年が60歳だとすると、その後の人生は40年も続くのです。

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一方で、多くのサラリーマン(男性も女性もです)が、働き方改革が叫ばれる今もなお、仕事一筋の人生を送っているとみられます。毎日、一生懸命働いて、仕事で成果を出すことや会社で出世することなどを目指して、日々努力しています。

しかし、そんなサラリーマンたちが、定年を迎えて、会社を離れたとたん、会社での実績も地位も関係のない生活が始まってしまうのです。体はまだまだ元気なのに。

準備のないままに定年を迎えてしまうと何をしていいか分からずに、自宅にこもりがちになり世間から孤立してしまったり、経済的に困窮したりするなどの問題も指摘されています。

年金が支給されるのは原則65歳から。(60歳から繰り上げ支給を受けることもできますが、支給額は減額されます)定年後も働く必要があるのに、希望する職はすぐには見つからない事態にも直面します。

こうした状況を背景に、それなら、定年後を見据えて早めに備えておいた方がいいという人が増えているのです。

 

40代後半から始まる定活


ではいったい、いつ頃から何を始めればいいのか。

大阪の電気メーカーで働く藤村英樹さん(48)は、1年ほどから準備を始めました。藤村さんの「定活」は地域のボランティア活動です。

就職してから、27年間、会社と自宅を往復する毎日だった藤村さん。子育てが一段落した時に、ふと会社以外の人たちとのつながりが薄れていることに気がついたと言います。

「子どもが大きくなってくると、気がついたら土日に家で1人ポツンといる時間が増えてきたなと感じました。定年したら、自分はこのまま1人で何するんだろういう漠然とした不安が出てきました」。(藤村さん)

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藤村さんが参加しているのは「プロボノ」と呼ばれるボランティア活動を行うNPOです。「プロボノ」とは仕事で身につけたスキルを生かして、地域で困っている人たちを支援しようという取り組みです。

営業、経理などの事務職、デザイナー、SEなど、様々な職種の人たちがチームを作って支援を行います。地域活動に外から入っていくのは、一見、敷居が高そうに見えますが、「プロボノ」だと気軽に参加できるとして、最近人気を呼んでいます。

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藤村さんの活動は月に2回程度。去年12月に取材に行った際には、大阪・吹田市にある地域の高齢者たちで作る交流カフェで、運営の手伝いをしていました。経費の計算やカフェのスタッフの勤務管理など、得意な分野をほかのボランティアメンバーや地域の高齢者たちにアドバイスしながら、和気あいあいとした雰囲気の中で活動していました。

藤村さんは「定年してから始めるよりも、40代の今からやっておくほうが、ゆるやかに定年後の新しい生活にシフトしていける。いろいろな人たちとつながりもできると思う」と話していました。藤村さんは、他にも新たにマラソンを始めるなど趣味の幅も広げていて、こうした活動が、定年後の居場所作りにつながればと考えています。

 

定活で夢を実現した人も・・・


早くから「定活」を始め、実際に夢を実現させた人もいます。文具メーカーで働いていた兵庫県・西宮市の後中淳司さん(59)です。

後中さんが「定活」を始めたのは50歳になった時。まずは情報収集から始めました。当時、働いていた会社に不満は無く、転職したいとも思っていませんでした。しかし、定年を意識したとき、ずっと長く続けられる、やりがいのある仕事は無いかと考え、「定活」を始めたそうです。

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書籍を読みあさったり、セミナーに参加したりして、どんな道があるのか調べました。当時の会社に再就職した場合や新たな資格を取得した場合など、さまざまな可能性を検討し、経済面でのメリット、デメリットを具体的に比較します。

その中でたどりついたのが、子どもの頃の夢だった「街の本屋さん」開業という選択肢でした。ただ、最近、小規模な書店は、インターネット通販の普及などに押されて、廃業するところも多く、リスクが伴います。

そこで、後中さんは収入の見立てや体力的な負担、やりがいなど時間をかけて細かくリサーチしました。仮に経営が厳しくなった場合に備えて、老後の生活費だけは残るように、数年かけて計画的に貯金をしました。休日には、各地の書店を見て回って、書店経営を学びました。

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そうした中で、書店のフランチャイズ契約であれば、資金面での負担やリスクを減らして開業できるとして、定活を始めてから7年後のおととし、書店の開業にこぎ着けました。
店の名前は地域に愛される小さな本屋になりたいという願いを込めて「リトル書房」としました。

後中さんは言います。
「前もって準備することでいろんな選択肢が出てくる。定年後もやりがいや生きがいを広げていくことはできると思うので、70歳、80歳までがんばっていきたいと思っている。いまは毎日がとても楽しいです」

 

40代50代で何をすれば良いのか?


サラリーマンの人生は人によってさまざまです。当然、立場や業種によっても違います。ですから、定活も10人いれば10通りの定活があります。

ただ、定年について研究している神戸大学大学院の片桐恵子准教授は定活(定年退職に向けた準備活動)には共通するポイントがあると言います。

①会社以外で社会とのつながりを作ること
②50歳で人生の再設計をすること
この2点です。

人とつながりを作ることは一朝一夕には出来ません。早い内から趣味や地域活動、NPO活動などを通じて、徐々に居場所を作っていくことが大切です。また、定年後を見すえて人生を考えるには、50歳ぐらいがちょうどいいとのことです。

片桐准教授は次のように話していました。
「定年後に長く自宅にいると、やはり健康面でマイナスが多く、ちょっとした仕事や地域活動を通じて、社会の役に立つ活動を続けることが大切です。楽しいと感じることや生きがいは人それぞれなので、定年前に自分でしっかり考えて決めていくことが必要です」

みなさんも「そろそろかな?」と思ったら、いえ、「まだ早い」と思っている人でも、定年後の人生に思いをめぐらせて、「定活」を始めてみてはいかがでしょうか。

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