「おじいちゃんだって幸せだった」 74年ぶりに届けられた家族写真 



太平洋戦争末期の沖縄戦に従軍したアメリカ軍兵士が、戦闘中に1冊のアルバムを拾い、保管していました。

今回、その元兵士から、持ち主に返したいという依頼がNHKによせられました。
沖縄戦から74年。

数奇な運命をたどった、家族写真の物語です。



沖縄戦から74年 “戦場の写真” 持ち主へ 

アメリカ西海岸、ワシントン州のオリンピアに住む、ハーヴィー・ドラホスさん(96)です。
22歳のとき、陸軍兵として沖縄戦に従軍し、激しい市街戦の最前線に立ち、旧日本軍と戦いました。


その最中、偶然1冊のアルバムを見つけました。 収められていたのは、洋服で着飾った子どもと男性や晴れやかな着物姿の女性など。 白黒の写真およそ80枚には、戦前の穏やかな日常が記録されていました。



ハーヴィー・ドラホスさん
「マシンガンの銃撃を避けるため、かがんでいたときにこのアルバムを見つけた。 一目見て、これらがとても大切な写真だとわかったから、戦火から守るべきだと思ったんだ。」

74年前の沖縄戦では、20万人を超える人が犠牲になり、沖縄県民の4人に1人が命を落としました。
激しい地上戦で家々は火の手に包まれ、そこに住む人々の思い出の品も失われました。
戦後、3人の子どもを育てるため仕事に追われ、アルバムの存在を忘れかけていたドラホスさん。
去年(2018年)、ガレージを整理していたときにアルバムを見つけました。 大切な写真と思い、戦火から守ったアルバム。
それを必要とし、今も探している沖縄の人がいるのではないか。
その思いが日ごとに強まっていったといいます。

ハーヴィー・ドラホスさん
「この写真は、沖縄の家族にとっては亡くなった人たちとの失われた絆だと思う。
もっと早く返すべきだった。
申し訳ないと思っている。
大切に扱って、もとの家族へ返して下さい。
ありがとう。これはとても大切なものなんです。」


写真の持ち主は、いったい誰なのか。
NHKでは、写真やそこに記された文字を頼りに探し始めました。
そして3か月後。
写真の中の1人が、今も沖縄県内で暮らしていることをようやく突き止めました。
久田友賢さん、78歳です。


幼い頃の久田さんです。
沖縄戦の2年前に一家で撮影していました。
ただ、アルバムの持ち主は久田さんの一家ではありませんでした。
久田さんの話などから、いとこの仲本朝勇さんが、家族や親族を一冊のアルバムにまとめたものだとわかりました。

仲本さんは9年前に亡くなっているため、他の親族に見てもらえばもっと多くのことがわかるのではないか。
久田さんは、そう提案しました。

久田友賢さん
「戦前の写真だから、関係ある親族を集めて見てもらうと一番いいんじゃないですか。」

そして、20代から90代まで、仲本家の人たち15人が集まりました。

仲本さんの義理の妹
「お父さんに似てる。若い時のお父さんに似てない?」

沖縄戦で失ったと思っていた、戦前の家族の姿に思いを巡らせます。
中には、沖縄戦で20代前半の若さで命を落とした親族の写真もありました。
戦後も遺骨は見つかっておらず、写真は大切な形見となるといいます。
74年の時を越え、沖縄に戻ってきた写真。
戦争で失われた家族の歴史をたどり、いま、次の世代へと語り継がれようとしています。



「すごいね。
見られなかったかも知れないんだね。
一生、親族の顔を知らずに。」


「おじいちゃんの若い頃の写真、見せたことなかったね。」


「ないないない。
戦争の前ってさ、幸せだったときがあったんだって、振り返って話してみたいなって思った。」

仲本春子さん
「これだけ残してくれたことは、ありがたいと思っています。
(孫に)戦争のことあまり聞かせてないものだから、写真をあれ(整理)して、戦争中のことも、話して聞かそうと思います。」

報告:沖縄局記者 山下涼太

TOP