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科学の眼で見る美ら海の生き物展

おきなわHOTeye 沖縄県立博物館・美術館 沖縄の生物
  • 2024年04月25日

周囲を海に囲まれ、海に親しむ機会も多い沖縄。しかし、海に住む生き物の姿や生態にはまだまだ謎や不思議があふれています。そうした生き物の隠された姿を、CTスキャナーや電子顕微鏡、水中エコー検査装置など先進の映像化技術を使って“可視化“した展示会を取材しました。
                       (沖縄放送局カメラマン 木村 史)

▼テーマは“可視化”

展示会を開いたのは、水生生物の調査・研究を行っている沖縄美ら島財団。
会場には肉眼では見えないものを捉えた画像・映像資料などおよそ80点のほか、撮影機材なども展示されています。


天井近くまで届くレントゲン写真、これはザトウクジラの胸びれです。
長さは実物と同じ約3メートル。一度ではすべてを撮ることができないため、胸びれをクレーンでつり上げ、移動式のX線撮影装置を使って撮影した写真をつなぎ合わせたそうです。

ひれの凹凸が、骨の形に沿っていることがよくわかります

▼CTスキャナーで内部をのぞく

体の内部を撮影することができるCTスキャナーの画像データです。
これは水を飲んで丸く膨らんだハリセンボン。

骨格をオレンジで、海水で満たされた胃袋を青で表現しています。
ハリセンボンが膨らむ仕組みがよくわかります。

宮本圭さん

【沖縄美ら島財団総合研究所 主任研究員 宮本圭さん】
CTスキャナーから最初に出てくる絵は色はついていないんですけど、今回ちょっとアートっぽさ、見て楽しんでいただけるようにっていう意味も込めてカラフルに仕上げています。
まずは画像の面白さ、“なんだこれ”っていうところから入っていただいて関心持っていただけたらと。

ウミガメ(タイマイ)のおなかに・・・

このウミガメのCT画像にはおなかの部分に小さなカメが映っています。

カメ???

実はこれは沖縄美ら海水族館のウミガメプールに落ちてしまったカメのフィギュア。
2月6日にウミガメが誤って飲み込んでしまったらしいと連絡を受け、CTスキャナーで調べてみると、おなかの中にあることがわかりました。
その後、注意深く観察を続けていたところ、今月23日、なんと77日後に無事排せつされました。
出てきたフィギュアがこちらです。

全長約30ミリ、前脚を広げた幅は約35ミリ。
ようやく出てきたこのフィギュア。27日(土曜日)から展示に加えられることになりました。

▼電子顕微鏡で見えない構造を見る

肉眼では見ることが難しい微細な構造をはっきり見るために使われるのが電子顕微鏡です。

こちらは、毒のある魚、ゴンズイの針を電子顕微鏡で捉えた画像です。
毒針の先端が折れると、すぐ次の先端が現れて鋭さを保つ仕組みになっていることがわかります。

宮本圭さん

【沖縄美ら島財団総合研究所 主任研究員 宮本圭さん】
鋭さを保ち続ける仕組みっていくつかあるんですけど、たとえばサメの歯なんかはどんどん抜け替わります。ゴンズイの毒針みたいにあえて折って次を出すという仕組みはなかなか珍しいんじゃないかなと思っています。
まだまだ知られていない面白さっていうのが、拡大することで見えてくることっていっぱいあると思うんです!

▼さまざまな撮影用機器

画像データや映像資料と並んで、会場には見えない世界を見るための機器も展示されています。


これはROVと呼ばれる小型無人潜水機です。船の上からリモコンを使って操作します。

水深500メートルまで潜ることができ、撮影するだけでなく、付属のアームでつかんだり、ホースで吸い込んだりして生き物を捕獲することもできます。
2023年までの15年間に111回の潜航調査を行い、159種の生き物を採集しました。
その中には新種も記録されています。


これは水中で生き物の健康状態を調べるための水中エコー検査機器です。イルカなどの哺乳類と違って魚類は水から出すとすぐに弱ってしまうため、ジンベエザメなど大型の魚類に負担をかけず水中で検査するため開発されました。検査は水槽に潜り、魚と一緒に泳ぎながら行います。

村雲清美さん

【沖縄美ら島財団附属動物病院 看護師 村雲清美さん】
これは人間でも使うようなポータブルエコー、超音波検査機器です。それを水中で使えるように特別なハウジングを作ってもらいました。世界初だと思います。これを使うことによって今はジンベエザメの心臓や消化管、あと他の魚の妊娠の状態とかを詳しく見ることができるようになりました。

ジンベエザメやマンタなど大型魚類のエコー検査は、水族館の営業時間中にも行われることがあるということで、タイミングがよければ検査の様子を見ることができるかもしれないということです。


ジンベエザメの排せつ物のCT画像
左はイルカ、右はシュモクザメのCT画像
魚の耳石いろいろ

このほか、会場には深海に住む魚が蛍光発光する様子を捉えた写真なども展示されています。

そっくりな魚でも光らせると別種だとわかります

「科学の眼で見る美ら海の生き物展」は、5月6日まで、那覇市おもろまちの沖縄県立博物館・美術館で開かれています。


【取材後記】
この日会場を訪れていた小学生は「深海にはまだ知られていない生物がいっぱいいることを改めて実感しました」と感想を話してくれました。また、蛍光発光の模型を熱心にのぞき込んでいた5歳の男の子は、手にしたノートに気になった生き物の名前をカタカナで書き込んでいたりと、子どもたちの探究心を刺激する展示会だと感じました。私自身、川や湖にすむ甲殻類への関心が高いこともあって、こういう展示会をきっかけに子どもたちの生き物への興味や関心が高まってくれれば、と思いました。

  • 木村 史

    沖縄局 カメラマン

    木村 史

    生家は海岸からわずか20メートルという九州の漁村で育ちました。趣味はガサガサ。自宅ではミナミヌマエビを飼っています。

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