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沖縄では、新型コロナウイルスの感染がこれまでにないペースで拡大している。新たな感染者の数は連日最多を更新し、自宅療養者も含めた療養者数もこれまでで最多となった。なぜこうした状況に陥ったのか。医療現場はどのような危機を迎えているのか。デルタ株の脅威は。そして、ワクチンの有効性は。専門家の解説とともに伝える。

[出演者]山 義浩(県立中部病院 感染症内科医師) 荒木さくら(アナウンサー) ※2021年8月11日放送の内容です。


「デルタ株の脅威@若い世代の症状悪化が増加」

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うるま市にある県立中部病院です。今年5月から6月にかけて、クラスターが発生。51人が感染し、20人が亡くなりました

再発を防ぐため、入院する患者全てにPCR検査を実施するなどの対策を新たに行っています。

新型コロナに感染した30代の男性。感染当初は比較的症状が軽く、基礎疾患もなかったため1週間自宅療養を続けていました。しかし、急激に症状が悪化、呼吸困難の状態に陥ったといいます。

男性の肺の状態をCTスキャンで調べました。白くすりガラス状になった部分は炎症を起こしており、ほとんど機能していません。

医師
「いまが発症1週間目なので、症状のピークだと思います。今日、あすがいちばん辛いと思います。」

男性はこの後、中等症患者専用の病棟に入院することになりました。

医師
「44 才、35 才、30 才ですね」

7月以降、中部病院で目立つのは、40代や30代といった比較的若い世代の入院です。病院は、「デルタ株の出現に伴い若く健康な人でも症状が悪化するケースが増えている」と分析しています。

医師
「前は結構ご高齢の方が多かったのに、最近は30 代、40 代、50 代がかなり多い印象ですね、このデルタは。前回よりも今回の方がすごい増え方も半端ではない」

「デルタ株の脅威A家族が全員感染するケースも増加」

感染力の強いデルタ株。家庭内での感染も増えています。新型コロナに感染した40代の男性です。

患者
「息苦しさが。どれくらいのものかって きつい。」

医師
「息苦しさが一番キツい。そうですよね。」

医師
「いまってご家族は何人暮らしですか?」

患者
「4名。妻と、長男と長女。」

医師
「他に症状のある家族はいますか?」

患者
「家族?家族全員です」

医師
「全員陽性がわかっている」

デルタ株はこれまで、感染しにくいとされてきた10代以下の子どもにも、猛威を振るっています。

医師
「前は子どもは大丈夫だみたいな感じで、最近はデルタになってからはお子さんも感染するので、普通に家族全員で感染してみたいなっていうのは結構ありますね。」

「デルタ株の脅威B 妊婦の感染も増え・・・」

妊娠中の女性も深刻な影響を受けています。外出を控えていても感染したというケースが相次いでいるのです。妊婦専用のベッドを5床設けている中部病院。患者の増加に伴い、受け入れは限界に近づいています。

医師
やはり家庭内で旦那さまがかかられたということが一番多いような印象です。肺炎になった場合には重症化するリスクがあるというふうに言われているんで、その中で使える治療薬というのはある程度限定されてしまいますので、治療に難渋する可能性があると。

妊婦が感染した場合、ドリーイン生まれた赤ちゃんは別の場所に隔離されます。母親が新型コロナに感染した疑いがあるという赤ちゃん。2日前、早産の状態で生まれました。

感染症の専門医による指導のもと看護師採血防護服を着た看護師が赤ちゃんの健康状態を24時間体制で確認します。

医師
「胎盤感染は、データとして確率が低いということがわかっているんですけれども、水平感染といって接触や、いまはお母さんの分娩のあとちゃんと距離をとって、赤ちゃんが生まれたあとの処置をさせていただいていますけど、早産のお子さんは通常よりも重症、呼吸症状が出てくることがあるというデータがありますので、私たちはそのあたり注意して見させていただいています」

「近づく“医療崩壊”の恐れ」

中部病院では、患者の増加に伴い受け入れ体制を広げてきました。今年6月には、病棟それまで30あった中等症患者専用のベッドを50にまで増やしました。しかし、受け入れは限界に近づいています。

医師
「もしもし、中部病院の山本です。はいお疲れ様です。はい。50代の男性ですよね・・・」

この日、県の対策本部から「呼吸困難に陥った患者を受け入れてほしい」と要請がきました

医師
「空いているんでしたっけ、HCU(高度治療室)。場所がないなら・・・くー。6西(病棟)もほとんどないんだよね」

病院はひとまず、臨時のベッドを設け患者を受け入れることにしました。その後、3時間かけて、病床を調整。ようやく入院が可能になりました。8月に入ってからは、病床が満床となる日もでています。

医師
「どんどんどんどん、毎晩こんな感じで。日中も結構来てますからね。どの病院もそうだと思うんですけど、あっという間に余剰病床が埋まっちゃうような状況ですね。病棟の入院の数を制限して、その分の看護師とかをコロナの病棟の対応に回したりしてますけどね、なかなか難しい状況ですね。」

医師
「今回は、とにかくスピードとインパクトの大きさが違う。もう段違いと言っていいですね。いったん広がり始めたら、1週間前と全く風景が変わっているということです。今までの経験でどうにか追いついていますが、やはり患者数の増え方に対応するのは本当にぎりぎり。毎日毎日、次のレベル、次の段階に行く。いま現在でも正直いえば、悪い方向、つまりは患者数も増え、重症度も増しというのがとどまらない状態ですよね。」

「一人でも多くの命を守るために 中部病院の取り組み」

中部病院では、新型コロナの入院制限の張り紙患者を受け入れるため、緊急性の低い外来診療や入院を制限することにしました。さらに、7月から新たな取り組みも行っています。入院患者の中で、症状が軽くなった人に対して、自宅での療養を打診することにしたのです

医師
「いまだ感染力が残ってるような状況なので、ご本人と一緒にいるとどうしても家族に感染の可能性があります。なので、部屋を完全に分けるとか言う必要があります。できそうですか。」

患者に家族がいる場合、自宅に隔離できる部屋があるかを確認した上で、家族全員に2週間外出を控えてもらいます。病床確保のためには、こうしたお願いも致し方ないと考えています。

医師
「病院でしっかり隔離をして治療したほうがいいというのが本当のところであると思うんですけど、そう言ってると、本当に酸素が必要な患者さんが入院できなくなってしまうので、やむを得ずそういった対応をとっているというところですね」

中部病院では、独自の取り組みも行っています。自宅療養者への、健康観察です

医師
「ちょっと咳があるんですね。息苦しい感じとか、ありますか・・・OKです。下痢はどうですかね。うんうん。わかりました」

医師が、「症状が深刻だ」と医師判断した場合、すぐに病院で治療を施します。新型コロナから、ひとりでも多くの命を守ろうとしてきた中部病院。デルタ株の脅威により病院はかつてない状況に追い込まれています。

医師
「病院側は、正直、最大限の準備をするつもりでいますが、簡単に言えば必ず限界があります。どの施設でも、ここ以上のことはできないというレベルがあるんですね。それをこの波は乗り越えようとしているところが、非常に懸念されます。/結局のところ、影響が出るのは病院の中ではないんですね。外でかかってしまった方、その人たちが必要なときに医療を受けれなくなっていくということが起こり得ることが一番の問題です。」

「沖縄“過去最悪”の感染拡大 山義浩医師に聞く」
ゲスト: 山義浩医師 MC:荒木さくらアナ

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荒木アナ
まずはこちらをご覧ください。新型コロナウイルスの新規感染者は7月の下旬から急増しています。県はこれまでで2番目に多い、新たに638人が新型コロナウィルスに感染していることが確認されたと発表し、累計は3万人をこえました。年代別では多い順に20代が143人、30代が119人、40代が94人などとなっております。ここからは県立中部病院の山義浩医師とお伝えします

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山医師
まずは本当に大変な状況で、街中で暮らしてるとなかなか見えないと思いますけど、病院に来るとびっくりされると思います。本当に大変な事が始まっています。この背景にはデルタ株に置きかわってきたということが大きいと思いますけれども、もう1つ、やはり自粛疲れというふうに思いますけれども、なかなか対策に協力できないという方々が増えてしまったところも背景にあると思います。1つに功名があるとすれば、ワクチンの効果は確実に上がってきてるというふうに感じてまして、高齢者の感染事例が減ってきてます。一方で相対的に40代50代の感染者、そして重症になる方々が増えていて病院を本当に逼迫している状況です。

荒木アナ
その強い感染力であるこのデルタ株が沖縄でここまで猛威を奮っているはどうしてなんでしょうか。

山医師
日本の中でも沖縄って若者の割合が高いですよね。全国で一番高齢化率が低い県でもあります。コロナとの戦いにおいてそれが弱点になっているということはあると思いまして今も感染している方々のうちほぼ半数が30歳未満なんです、沖縄では。若者たちだけのせいにするつもりはないんですけれども、ただやっぱりこの感染拡大の鍵になってる事は間違いないというふうに思います。あともう1つ、デルタ株になってから子供たちに感染が広がりやすくなってきています。特に小学生の増加が顕著でして先週1週間で小学生の感染事例257なんですよ。子どもたち夏休みのはずなんだけど、急速に広がっているということがあります。子どもの多い沖縄、しかも元気な子どもたちが多いというのはデルタ株のインパクトを受けやすいかなっていうふうに思います。

荒木アナ
私たち自身手洗いやマスクの着用だったり基礎的な防止策というのやってるつもりなんですけど、感染がこうしていても拡大してしまうことに無力感を感じているっていう声もあるかと思います。そういった現状を変えるにはどういう事が、どういった取り組みが必要だと思いますか。

山医師
緊急事態宣言が出てるのにどうして広がっているだろうかっていうなかなか無力感が出てくると思いますが、ただデルタ株だからといって今までの感染対策のやり方が通用しないわけじゃないんですね。まずは家族以外との会食は控えてください。そして人混みをできるだけ避けるということ。あと、人が集まるようなイベントはできるだけ遠慮していただきたいというふうに思います。ただ漠然と自粛の延期延期ってものを求められて来ていても対策に協力できないという人たちが増えてくるのは現実としてはあります。実は欧米ではロックダウンをする時っていうのは段階的な規制解除のプログラムで示してるんですよ。ここは行政の役割だと思いますけれどもいつまでに何ができるようになっていくのか見通しを示すということ。また、行政として目標を示してそれを達成するために県民一丸となっていく、そういう呼びかけも必要なんじゃないかなっていうふうに思います

荒木アナ
見通しがあれば一人一人が今何をすればいいのかっていうのがより考えやすくなるかもしれませんね。

過去最悪の感染状況がつづく沖縄県の対策本部でも危機感を強めています。

沖縄県対策本部の分析は

過去最悪の感染状況が続く沖縄県、県の対策本部でも危機感を強めています。沖縄県対策本部の医師、佐々木秀章さんです。全国最悪となった沖縄の感染状況を次のように分析しています

医師
「沖縄県は夜いろいろなところのお店やさんにたくさん人が入っていて、まったく緊急事態宣言の雰囲気を感じないと聞き及んでいます。そういった社会の状況というのが、デルタ株と相まって、このような感染状況を作っているのではないかと考えています。」

このままの状態が続けば、入院の必要な患者を、受け入れることができなくなるといいます。

医師
「各病院は一生懸命努力して、ベッド確保していますが、入院が必要な患者さんの増加がさらにそれを越えている状況ですので、いまそういった入院できない患者さんをとりあえず医療の手が届くというところにということで、入院待機ステーション、これも昨日(8月6日時点)すでに10名くらい入っていますあとは在宅で、おうちのほうで医療を継続。またそのまま経過を見ざるを得ない。そういった患者さんがでてくる予想です。そのための態勢も整えておりますが、患者さんの数があまりに多すぎて、追いついていかない。そのまま医療崩壊につながる可能性があるというのを県民の皆様にもいまのうちにしっておいていただきたいと思います。」

医療資源がひっ迫する中、こう、警戒を呼びかけています

医師
「基本的な感染対策をもう一度お願いしたいです。マスク、手指消毒、あとは会食は避けて、家族とのみ食事を、とりあえず2週間お願いしたいです。あとは若い人にはなかなか響かないという現状がありますので、おうちの方たちから、自分たちの子ども、自分たちの孫、おなかの中の赤ちゃん、そういったものを守るために、もう一度徹底して、普段の感染対策を家族に呼びかけてもらいたいなと思っております。」



「沖縄“過去最悪”の感染拡大 山義浩医師に聞く」

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荒木アナ
いざ感染したときについてです。県は、入院待機ステーションなどで酸素投与が必要な方に対して、次のような姿勢でいることを進めています。まず@うつ伏せ、A右向き、Bもたれ座り、そしてC左向きです。できるだけあおむけは避けて30分から2時間ごとにこの4つの姿勢を変えていってほしいと言うことです。山さん、自宅療養の際はどういった事に気を付ければいいんでしょうか。

山医師
この体位の変換というのは酸素を吸っている方に求められるものなんですね。体位を変える事で肺に空気が行き渡りやすくするというような意味でこうしたものをお勧めしてるんですけれども、多くの方は今入院できてるのでご心配なさらないでください。ただ大事なのは、この酸素が必要な状態になってるかどうかっていう事を自宅療養の方が自分で気付けるかどうかということです。血中の酸素濃度を測定するパルスオキシメーターを県が配布しておりますので、それを受け取られたら1日に3回程度測ってみて下さい。もしこの数字が93%以下にまで下がってきていると肺の機能が落ちているという事を意味してますので、自宅療養の担当者の方の電話番号をご存じだと思いますので、そこに連絡して受診調整を受けてください。40歳未満の方々ほとんどが重症化することなく元気になる方が多いので過度に心配なさる必要はないんですけれども、ただやっぱりそういう方々、特に肥満や糖尿病がある方は持病のある方は特に注意が必要です。

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※首相官邸より医療従事者など(7月30日時点まで)と一般接種(8月9日時点まで)を集計

荒木アナ
そんな感染拡大防止策の重要な要素がワクチンの接種です。沖縄県のワクチン接種情況はご覧のようになっています。1回目の接種が完了している人が37.03%そして2回目が26.62%です。山さん、このワクチンに対して今も不安の声聞かれると思うんですが、改めてワクチンの効果ってどういったところにあるんでしょうか

山医師
ご不安な方多いと思います。やっぱりあの新しい技術でありますし、いろんなデマも飛び交っているのでなるべく正しい情報にアクセスするようにして頂くということ。それともう1つは、みなさんの身近でもワクチンを打ちましたっていう人がいらっしゃると思いますので、どうだったっていうことを聞いていただくのもいいんじゃないかなっていうふうに思います。一般にワクチンの発症予防効果って90%から95%ぐらいをということをお聞きになられた事あると思いますけれども、デルタ株が少し効果が落ちてしまう。80%台にまで落ちるというふうに言われてます。ただやはり80%って結構高い数字ですよね。ですから、特に重症化予防効果はデルタ株であってもしっかりあるというエビデンスが出てきてますので、みなさんワクチンの順番が回ってきたらですね、なるべく積極的に打って自分を守り、周囲を守る事に協力していただきたいと思います。

荒木アナ
最後に私たちが生活の上で注意すべき点をまとめていただきました。

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山医師
高齢者と現役世代、そして若者たちの3通りに分けてお話をします。特に、今高齢者の方々でワクチンが打ち終わったところで少し安心されてる方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますけれども、ワクチンを打っても感染することがあります。特に今大きな流行が起きているので、ワクチンを接種していたとしても過度に安心せずにマスクをつけて手指衛生をきちんとすることを心がけてほしいと思います。そして、現役世代の方々、実はこの世代の方々は、やっぱり会食で感染している事例が多いです。お友達や職場の同僚と一緒の食事をするのは今は控えてください。それで感染するとご家庭に持ち帰って家族に広げてしまうということも起きてしまっています。最後若者たちは流行の鍵になってるってことは率直に申し上げなければいけません。自分たちを守るっていう事も実は大事で、後遺症に苦しむ人もいらっしゃいますので過信することなく自分を守っていただきたいというふうに思います。

荒木アナ
最後に子どもたちにも何かありますか。

山医師
子供たちも頑張ってくれてると思います。夏休みという事で、やっぱり今は、家の中で一緒にみんなが集まってゲームするみたいなことはちょっと控えてください。外で遊びましょう。

荒木アナ
新型コロナウイルスについて山医師とお伝えしました。

  
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