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岡山発 小さく産まれた赤ちゃん リトルベビーの親を支援したい

ママ・パパを支援したい!リトルベビーハンドブック完成
  • 2023年06月16日

「リトルベビーハンドブック」という手帳を知っていますか?早産などで小さく産まれた赤ちゃんの親を支援しようと作られました。厚生労働省の調べによると、令和元年の1年間に産まれた赤ちゃんのうち、およそ10人に1人が2500グラム未満の低体重“リトルベビー”でした。「不安な気持ちを自分だけで抱え込まないでほしい」。手帳には先輩ママ・パパたちの思いが込められています。
(岡山局・國武桃子記者)

“同じ思いをしてほしくない”

3月末にお披露目された岡山県版の「リトルベビーハンドブック」。2500グラム未満で産まれた“リトルベビー”の親に、母子手帳とともに活用してもらおうと、赤ちゃんの治療を行う岡山医療センターの医師や看護師に手渡されました。手帳の作成に携わったのは、当事者の親たちです。

田井優香さん(1585グラムで息子を出産)
「自分たちと同じ思いをしてほしくないという思いから参加した。誰も傷つけない、誰も取り残さないということと、産後のママの気持ちを大事にしたいという気持ちを大切にした」

草野和美さん(356グラムで娘を出産)
「お母さんたちが手帳を見て、“私だけじゃないんだ”って気づいてくれるというか、“頑張ろう”っていう気持ちになってほしい」

新見市の草野和美さんと子どもたち

新見市の草野和美さんは、5人目の子どもの永愛ちゃん(5歳)を身長27センチ、体重356グラムで出産しました。妊娠22週の早産でした。医師からは命の危険もあると言われ、永愛ちゃんは誕生直後から、自宅から車で1時間以上もかかる倉敷市の病院に9か月間入院。生まれたばかりの娘と離れ離れの生活を余儀なくされた草野さんは当時をこう振り返ります。

草野和美さん
「どうしたらいいんだろうっていう何とも言えない不安な気持ち。本当真っ暗な気持ちは誰に相談したらいいんだろうって」

“見たくなかった”母子手帳

孤独を感じていた草野さんをさらに苦しめたのが「母子手帳」でした。母子手帳にある発育曲線は、子どもの身長や体重の変化を記しますが、書き込める体重は1キロ、身長は40センチから。小さく産まれた永愛ちゃんのことを書き込むことができませんでした。

さらに、月齢ごとに書かれた発達の目安には、生後1か月で「手足をよく動かすか」「大きな音に反応するか」などについて「はい」か「いいえ」に○をつけることになっていますが、草野さんはひとつも答えることができませんでした。「ただただ生きてほしい」。そう書くことしかできなかったといいます。

草野和美さん
「正直、母子手帳すら見たくなかった。存在が嫌だった。大事な母子手帳だけど、私の中で大事じゃなくなっていた。何も残せないし、ただの手帳になっていた」

1歩ずつ成長する記録を

かつての自分と同じように、今も悩んでいる親たちがたくさんいる。その人たちの力になりたいと、草野さんたちの経験を基に「リトルベビーハンドブック」が作られました。

通常の母子手帳とは違い、発育曲線が体重は0から、身長は15センチから書き込むことができます。小さく産まれても1歩ずつ成長する赤ちゃんを感じられるように、「初めて赤ちゃんを触った日」「初めて赤ちゃんの声を聞いた日」などを記録することもできます。
さらに、草野さんが最も大切にしたのが、先輩ママやパパからのメッセージが掲載されたページです。「気持ちが追いつかないのも当然」や「あなたは1人じゃない」ということばが記されています。さらに、“リトルベビー”だった人からの「今、元気で楽しんでいるのは産まれてからずっと家族が支えてくれたから」というメッセージも書かれています。

草野和美さん
「小さく産まれただけでも周りと違うじゃないですか。自分たちが経験して本当に孤独とか不安とかもあったから、手帳を通して、“私たち仲間もいるから、1人で抱え込まないで、いろいろなことを共有しよう”っていう思いを込めています」

広がる支援の輪

支援の輪を広げていきたいと考えている草野さんは、手帳の作成だけでなく、“リトルベビー”の親たちが定期的に集まるサークルを令和3年に立ち上げました。交流会を行ったり、子どもたちの写真集を作って“リトルベビー”の治療にあたる病院に配ったりするなどの活動を続けています。

草野和美さん
「リトルベビーでも、遅れながらもちゃんとみんなと一緒に成長していける子どももいれば、わが家みたいに、小さいままの子どもや障害がある子どももいる。そういうことで区切らずに、1人の人として見てほしいし、支援してほしい。そういう子どもたちもいるんだよっていうことをもっと知ってもらいたい」

草野さんたちの思いが詰まった「リトルベビーハンドブック」は、県内6か所の周産期母子医療センターや市町村の窓口などでも受け取ることができます。また、県のホームページで内容を確認することもできます。 

取材後記

岡山局・國武桃子記者

赤ちゃんのおよそ10人に1人が2500グラム未満の低体重で産まれていると知ったときは、正直、こんなにたくさんいるのかと驚きました。無事に産まれてからも、障害があったり、長期にわたる入院や通院、在宅での医療的ケアが必要だったりと、多くの家族が課題と向き合っていることを知りました。この「リトルベビーハンドブック」が家族の精神的な支えになり、支援がさらに広がるきっかけになってほしいと思います。

  • 國武 桃子

    岡山コンテンツセンター記者

    國武 桃子

    平成29年入局、県政や
    教育、子育てなどを取材

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