障害に関係なくおしゃれを楽しむ~仲良し姉妹の大冒険~
- 2024年01月15日
日常的に医療的ケアが必要な人がいる家庭では、一緒に外に出かける機会が少ないといわれています。こうした人たちが一緒に楽しめる時間を持ってもらおうと、12月12日、大分市であるヘアメイクショーが開かれました。このショーに出演するのは、医療的ケアが必要な人と、その“きょうだい”です。こうしたショーが開かれたのは県内では初めて。出演したある仲良し姉妹に密着しました。
【おしゃれを楽しみたい!】
ヘアスタイルを整えられて笑顔の男性。この後向かうのは多くの人が待つステージです。ショーの主役は、人工呼吸器など日常的に医療的ケアが必要な人とそのきょうだいたちです。
ショーを企画したのは、重度の障害者などを受けいれる事業所で働く長野美幸さんです。自身も医療的ケア児の母親という長野さんは、普段働く中で、事業所の利用者がおしゃれについて複雑な思いを抱いていることを常に感じていたといいます。
(長野美幸さん)
「知らず知らずのうちにおしゃれって難しいことというか、しょうがないって諦めてしまっているお母さんたちが多い。でも、それって私は違うと思うんです。できないことって正直ないと思っていて。みんなが当たり前におしゃれを楽しめるっていうことをたくさんの人に知ってもらいたい」
【仲良し姉妹モデル 花ちゃんと日々ちゃん】
このショーに参加する川﨑さん家族です。姉の花ちゃん(右)と妹の日々ちゃん(左)が出演します。
低体重で生まれた花ちゃん。生まれつき気管が狭く、入院中に窒息してしまいました。一命は取り留めたものの後遺症で脳性まひと知的障害があります。仲良しの日々ちゃんと一緒に出かけることがなかなか難しいといいます。それだけにショーの出演は、家族にとっても大きな意味がありました。
(母・川﨑桃花さん)
「連れて行くならどちらか1人みたいな。両親が2人とも休みだったら家族そろって出かけるのは可能なんですけど、私だけだと2人連れて行くのは難しいから、ちょっと諦めようかなとか、花がデイサービスなどに預けてその間にちょっと下の子連れて行こうかなとか、そんな感じなので家族で参加できるのがすごくうれしいです」
花ちゃんと日々ちゃんはこの日を楽しみにしていたといいます。
(父・川﨑寛之さん)
「花ちゃんは“花よりだんご”なので、花ちゃんは恥ずかしがるんじゃないかと思うんですけど、日々ちゃんは『アイドルになりたい』とか言うので喜ぶと思います」
モデルたちのヘアメイクを担当する美容師は普段から障害のある人に接する機会が多い人たちです。
鏡の前に座った日々ちゃん。かわいくなっていく自分に大喜びです。
一方の花ちゃんは泣いてしまいました。心細さとうまく気持ちが伝わらず、もどかしさもあったのでしょうか?
心配した父親の寛之さんが励まします。
日々ちゃんもお姉ちゃんの横に寄り添い、お揃いのヘアメイクが完成しました。
【どきどきの本番】
多くの人が見守る中、ショーがスタート。
モデルたちが次々とステージに登場します。
(最後まで弟と手をつないで堂々と歩き切りました)
(お父さんもとってもうれしそう)
大好きなおしゃれをしたモデルたちの姿に会場は笑顔に包まれました。
花ちゃんと日々ちゃんの出番はショーの1番最後。舞台袖でどきどきしながら出番を待っていました。
長野さんに付き添われて車いすで登場する予定だった花ちゃん。出番が近づくにつれ、花ちゃんの様子に変化が……。
車いすから降り、立ち上がったのです。
(長野美幸さん)
「なんか『違う違う、いやだな』という感じだったんです。ほかの子が歩いているのを見て、立って足踏み始めて『花ちゃんもしかして歩きたいの?』って言ったら、『はーい』って手を上げて」
自分の足でステージを踏みしめたい。
その姿に桃花さんと寛之さんも手を振って応援します。
日々ちゃんが待つステージ中央までたどり着いた花ちゃん。この日一番の笑顔を見せていました。ステージで一緒に並ぶ2人の姿に両親も感無量の様子でした。
(母・川﨑桃花さん)
「感動しました。まさか花が歩くとは思わなくて、ね。頑張ったね。日々ちゃんもかっこよかったよ。花と日々はなんだってできるねって思いました」
(父・川﨑寛之さん)
「よく歩いたな。よく頑張りました。かわいかったです」
会場が笑顔で包まれた穏やかな時間。
ちょっと早いクリスマスプレゼントとなりました。
(この記事は2023年12月22日に作成されたものです。)