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環境保護につながる大入島のカキ養殖

執筆者のアイコン画像和田 弥月(NHK大分アナウンサー)
2023年01月19日 (木)

ぷりっぷりのカキ
おいしそうでしょう?

これは佐伯市の大入島のブランドカキ
「大入島オイスター」

年々漁獲量が増えていて
東京や関西、海外でも人気となっています

このカキ
島の活性化だけでなく環境保護にもつながっているんです

まずは佐伯市のカキ小屋を訪ねました
何事にも味わってみないと取材は始まりません!よね

 

人気! 大入島オイスター

 

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私の目の前に運ばれてきたカキ
身がとってもきれいです
いただきます!

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う~~~ん♪
とっても甘くて濃厚な味が口いっぱいに広がります!
とろとろしていてとてもおいしい♪

カキ小屋のお客さんもその味に感動していました

中身がジューシーですごくおいしかった
身がぷりぷりでとってもおいしかったです!

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みんなを感動させる味わいの大入島オイスター
どんなところで養殖されているのか
いざ!大入島へ

 

おいしさの秘密は育て方にあり!

 

訪ねたのは島のカキ漁師 宮本新一さん


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10年ほど前からカキの養殖を始め
以来試行錯誤を重ねてきました

大入島のカキ養殖はシングルシードという方法で行われています
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カキの養殖はロープで吊り下げたホタテの貝殻に
種ガキをつけて行うのが一般的です
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ただこの方法だとカキ同士がくっついてしまうこともしばしば

一方、シングルシード方式だと
かごの中ではなればなれに育つので身が大きく成長します

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波に揺られカキとカキがぶつかりあうことで
殻にフジツボなどが付着することもなく
丸みを帯びたきれいな見た目に育つんだそうです

さらに成長に合わせて出荷までに3回かごを入れ替えます
かごの中のカキの大きさをそろえることで
餌となるプランクトンがまんべんなくいきわたるようになります


そしてもうひとつの工夫がこちら
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矢印の部分、よく見てください
カキの入ったかごが海面からでていますよね
これ、「天日干し」しているんです
かごをひっくり返して海水から出し空気にさらして
ストレスを与えるんだそう
でも、なぜこのようなことを? 宮本さん?

宮本:天日干しをすると日光に当たるので
水分が逃げないよう耐えるために固く口を閉じるので
貝柱が鍛えられ、太くて甘みの強い貝柱になります

大事にしながらも、ときに負荷をかけることで成長をうながす
人間にも同じことが言えそうですね

 

カキが海を守る? その働きとは?

 

大入島のカキは佐伯湾の環境を守ることにもつながるのではと
期待されているそうなんです
どういうことでしょう?
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かつて佐伯湾では大規模な赤潮がたびたび発生
6年前にはおよそ2億円にのぼる被害が出ました
カキ漁師の宮本さんは、当時アワビやサザエなどの漁をしていましたが
ほとんどが死んでしまったそうです
11osakimakkura.JPG

宮本:絶望的でお先真っ暗な感じでした
収入がなくなるので他のアルバイトに行ったりしていました

でもカキだけは赤潮の被害をうけなかったことから
本格的にカキ養殖に取り組みはじめました

実は近年の研究で
カキは赤潮の被害を受けないだけでなく
発生を抑える効果があることがわかってきています

12miyamurasann.JPG

この日宮本さんのもとを訪れたのは
大分県農林水産研究指導センターの宮村和良さん
県も赤潮対策としてのカキの存在に注目し
定期的にデータをとったり
補助金を出したりしてカキ養殖をサポートしています

宮村:カキはプランクトンをエサにするため
養殖を拡大することで
赤潮プランクトンの異常増殖を防げるといわれていて
赤潮の被害軽減に役立つのではないかと考えています

大入島オイスターは
佐伯の海を守る存在としても注目され始めているんです

 

カキと地域を未来へつなぐために

 

大入島全体のカキの生産量は当初のおよそ6倍に
いまでは東京や関西などのオイスターバーのほか
海外にも輸出するようになっています

カキ漁師の宮本さんは大入島を新たなカキの産地にしようと
養殖協議会を設立しました
島全体で大入島オイスターのブランド力をアップさせようと
自分が得た知識やノウハウを惜しみなく仲間たちと共有しています
13ikemenn.JPG

カキ養殖がうまくいけば
次の世代が続いてくれると思うので
この島でカキ養殖を成功させて人口減少に歯止めをかけたり
若い人の仕事がこの島にあったりすることで
移住したりビジネスモデルを作ったりすることになるとおもう
それが原動力となっています


大入島オイスターの貝殻は
細かく砕いて家庭菜園用キットの肥料にも使われているそうです
SDGsという観点でも注目ですね


大入島オイスターは佐伯市のカキ小屋でたべられます
また佐伯市のふるさと納税の返礼品にもなっています
みなさんもぜひ味わってみてください!

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執筆者 田淵 慎輔(記者)
2023年09月08日 (金)

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執筆者 戸部眞輔アナウンサー
2023年09月06日 (水)

【元小結・松鳳山に挑む!女子中学生】

全国大会で優勝する選手もいるなど、女子の相撲も盛んな大分県。 今回、相撲に励む子どもたちにもっと強くなってもらおうと、別府市の道場に、特別講師として、宇佐産業科学高校出身で、大相撲の元小結・松鳳山の松谷裕也さんをお招きました。 今回は、松谷さんとの対戦を熱望していた女子中学生の夢が叶いました。   初の全国大会優勝を目指す 高いしこを踏む中学1年生 16人の小中学生が稽古に励む、別府実相寺相撲クラブです。 このうち、5人が女子選手です。 中学1年生の甲斐実里(かい・みのり)さんです。 甲斐さんは身体能力が高く、こんなに高いしこを踏むことができます。 しかし、誰もがここまで踏めるわけではありません。 優勝31回の横綱・千代の富士や、優勝22回の横綱・貴乃花も、高いしこを踏める力士でした。 高い柔軟性とバランス感覚がないと、高いしこは踏めません。 甲斐さんは、初めて出た相撲大会をきっかけに小学1年生から稽古を始め、去年、小学6年生の時には全国大会で準優勝しました。 相撲の魅力をこう感じています。 (甲斐実里さん) 「ものとか使わずに、自分の体で勝負するところが相撲のおもしろいところ。自分より体が大きい人に勝った時が楽しい」   基本的に体重別で争う女子の相撲ですが、線の細さが課題の甲斐さん。 まだ成し遂げたことのない全国大会での優勝に向けて、自分より大きな松谷さんと相撲を取ってみたいと考えています。 実は甲斐さん、こんなことがありました。 NHK大分が去年、宇佐市で開催した「教えて松鳳山」というイベント。子どもたちの質問に対して、松谷さんが実技を交えて答えるというものでした。 このイベントに参加した甲斐さんは、松谷さんに質問ではなく『私と相撲を取ってください』と申し出たのです。 (甲斐実里さん) 「元力士と相撲を取る機会はあまりないので、相撲を取って、思い出になったと思いました。自分より体が大きい人にどうしたら勝てるかを学びたいです」 そのとき対戦はできませんでしたが、今回、松谷さんへの挑戦が実現しました。   元小結・松鳳山に挑む中学1年生! きれいに掃き整えられた土俵に甲斐さんと松谷さんが入ります。 そして、立ち合い!踏み込んだ甲斐さんは左を深く差して、松谷さんの腰の右側に食いつきました。 左脚をうまく使いながら攻めますが、重い腰の松谷さんは動じません。 うまくまわしを切った松谷さんは、甲斐さんの背中に素早く回り込み、送りつり出しで土俵の外に甲斐さんを出しました。 めいっぱいの相撲を取った甲斐さんは、取組後、松谷さんから、大きな相手に勝つためのポイントを教わりました。 (松谷裕也さん) 「もっと密着して、相手に身動きをとらせないようにすること。こっちの脚で、相手の膝を刈りながら出ていく。そうすれば、もっと勝てると思う。当たりもよかったし、しこもきれいだし、このままがんばって!」 (甲斐実里さん) 「自分の良いところや改善点などを教えてもらったので、稽古して、全国で優勝できるようにしていきたいです」   今回、男子も含めて松谷さんから様々な指導を受けた子どもたち。いい表情をしていました。 (松谷裕也さん) 「相撲を取って、楽しいと思ってもらえれば、相撲は好きになると思うんで、それでなおかつ、試合で勝てるようになってくれば、もっと好きにもなると思う。稽古はきついですけど、その先に楽しいことが待っているので、そうやってもっと相撲を好きになってほしいですね」   子どもが稽古できる環境は、大分県内に6カ所(別府市、大分市、宇佐市、中津市、日田市、佐伯市)あります。 少子化の世の中ではありますが、男女問わず、相撲を楽しむ子どもたちが増えていくことを願っています!

執筆者 戸部眞輔アナウンサー
2023年09月06日 (水)

駆除される鳥獣を少しでも活用したい ジビエアカデミー開設

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執筆者 西垣光キャスター
2023年08月31日 (木)

温泉がヒラメを救う

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執筆者 和田弥月アナウンサー
2023年08月31日 (木)

【目指せ 女子相撲日本一】教えて松鳳山!

「相撲」というと男子のイメージが強いかもしれませんが、実は大分県は、女子の相撲が盛んです。 女子の大会は基本的に体重別で行われ、これまでに大分県から、全国大会で優勝する選手のほか、世界大会で表彰台に上がる選手も出ています。 夏休み、全国大会での優勝を目指す小中学生に、今回、強力な講師をお招きました。 宇佐産業科学高校出身で、大相撲の元小結・松鳳山の松谷裕也(まつたに・ゆうや)さんです。 松谷さんのアドバイスで、子どもたちがどう変わったのか、見ていきましょう。   男子と一緒に稽古する女子 小学1年生から中学3年生まで、男女16人が稽古する別府実相寺相撲クラブです。 このうち、女の子は5人で、稽古は男の子と一緒に行います。 女子選手たちは、自分の体だけで戦う相撲に魅力を感じています。 (左 中学2年生 黒岩由莉香さん) 「自分が勝っても負けても、そこで負けたとしたら、自分がどんなところが悪かったのか、そういうところを考えて、自分で改善していくところがおもしろいです」 (右 小学3年生 安本奈未さん) 「得意技は下手投げです。(下手投げが決まったときはどう?)監督に『それで行け』って言われる」   このクラブを立ち上げて30年になる末宗公明(すえむね・きみあき)監督(73)です。 これまで、全国大会で優勝を成し遂げた女子選手を4人育ててきました。 女子選手が活躍する理由についてこう考えています。 (末宗公明監督) 「女子だからって気を緩めることもありませんし、男子と同じメニューで、すべてやります。小学生の間は、むしろ女子の方が体幹が強い場合があるんですね。だから、男子に勝てるということが、一番相撲にはまっていく要素かもわからないですね」   特別講師・松鳳山、別府に現る! 夏休み、相撲に打ち込む子どもたちにもっと強くなってもらうため、今回、この方に来てもらいました。 大相撲の元小結・松鳳山の松谷裕也さんです。 松鳳山は、激しい突っ張りと、相手の懐に入る相撲で、金星5個、三賞4回を獲得。38歳まで関取として活躍した人気力士でした。 現役時代の黄金の締め込み姿で指導する松谷さん。 まずは相撲の基本「すり足」を、自ら見本を見せて教えました。 (松谷裕也さん) 「ただ足をすって前に出ればいいものではない。自分の目の前に対戦相手をイメージして、その相手をおっつけて押す、脇を締めて押す。こうやってイメージしながらすり足をやることが大事。バスケットボールを持つようなイメージで手を構えると、自然と下から手が出てくる」 さらに得意の突っ張りも伝授しました。 「後ろに回すイメージで。前に突くより、腕を引くことが大事。じゃないと、次の手が出てこない」 わかりやすいことばで指導し、子どもたちも熱心に取り組んでいました。   隙のない相撲を! 全国大会優勝を目指す小学5年生  ことし6月の全国大会で優勝した、小学5年生の黒岩香莉奈(くろいわ・かりな)さんです。 中学2年生の姉、由莉香(ゆりか)さんと、小学1年生の弟・香之介(こうのすけ)くんとともに相撲に励み、力をつけてきました。 まわしを引いてからのうまさが最大の持ち味です。 (黒岩香莉奈さん) 「自分の技が決まったら気持ちいいし、相手を押し出したらうれしい」 ことし10月に行われる全国大会でも優勝を目指す中で、松谷さんに自分の相撲を見てもらいました。 しかし、2学年上の中学生との稽古では、懐に入られて、寄り切られてしまいました。 松谷さんが気になったのは、香莉奈さんの右手の使い方でした。 まわしを引いて力を発揮する香莉奈さんですが、苦しくなると、深い位置のまわしを引いてしまいます。こうなると、相手に深く差されてしまうため、脇が空いて攻めにくくなります。 (松谷裕也さん) 「差されちゃダメ。深い上手では、絶対に相手に力も伝わらないし、どんどん苦しくなるでしょ。まわしを取ったら、そのまま懐に入るか、そこで我慢しないと。相手の腕をおっつければ、相手は苦しくなって腕を抜いてくれる。そうすれば、中に入れて次が攻めやすくなる。地道に、地道に、コツコツとやっていこう」 松谷さんのアドバイスを受けて、稽古を再開した香莉奈さん。 今度は右手をうまく使って、浅い位置のまわしを引きました。松谷さんのアドバイス通り、そこから相手の懐に入ることができました。 最後は得意の投げも駆使して勝ちました。 (黒岩香莉奈さん) 「教えてもらえて楽しかった。手の使い方が大事。全国大会に向けて、普段の練習でも使いたいです。全国大会で1位になりたいです」 (松谷裕也さん) 「中に入った後は、切り返しや技も上手だったので、もっと体の使い方がうまくなれば、もっと勝てるようになるんじゃないかと思います。女子も世界大会があるので、そういうところを目指して、がんばってほしいですね」   今回、男子選手も指導していただきましたが、これまで稽古場であまり勝てなかった小学4年生の選手が、松谷さんのアドバイスを受けて相撲が変わり、稽古場で連勝するシーンがありました。 松谷さんの指導力もさることながら、子どもたちの吸収力にも驚かされました。 これをきっかけに、大分の子どもたちに、もっともっと相撲が好きになってもらえたら、うれしいです。

執筆者 戸部眞輔アナウンサー
2023年08月30日 (水)