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2021年2月3日(水)

DXでビジネスに変革を

企業の競争力に欠かせないとされる「DX」。デジタルトランスフォーメーションの略で、IT技術の活用によって業務の効率化やコストの削減だけでなく、ビジネスモデルそのものの変革を目指す取り組みです。成功事例として有名なのが、動画配信大手のネットフリックス。当初はアメリカ国内でDVDの郵送レンタルサービスを展開していましたが、そのサービスを動画の配信へと転換。顧客をグローバルに拡大し、事業を急成長させました。このDXに、国内企業も力を注ぎ始めています。

コミュニケーションアプリで移動時間を削減

国内の企業でDXのモデルケースとして注目されているのが、「DX銘柄2020」でグランプリを受賞したトラスコ中山。工場などで使われる工具や備品を扱う卸売りの大手企業です。顧客の要望に細やかに応えるのが事業の要ですが、その打ち合わせの移動時間には1日2.5時間もかかっていました。

そこで、おととし(2019年)導入したのが、顧客とのやりとりに使用する独自のコミュニケーションアプリです。顧客のちょっとした質問にも、担当者が即座に回答することができ、新製品の情報や配送状況もアプリで共有できます。移動時間を削減できたことで、営業担当者と顧客との接点が増えたといいます。

デジタル技術を活用して“究極のジャストインタイム”を実現

この会社では、デジタル技術を活用して「いち早く届ける」という事業最大のミッションにも変化を起こしました。これまで工具を使う工場から、「急ぎで道具を使いたい」という声が多く寄せられてきましたが、発注してから届けるまで、急いでも数時間はかかっていました。

その課題を解決するために始めたのが、「富山の置き薬」から発想を得た現代版「置き工具」。工場や工事現場の空きスペースに予め商品が並べられ、ユーザーはスマホを使って欲しい商品を、その場で購入できます。商品は購買データをもとに、自動的に補充されるので欠品する心配もありません。

“置き工具”を利用する 守山乳業 服部覚工場長
「納期ゼロということで、究極のジャストインタイムで備品管理ができる。備品を管理する手間も省けて、従業員が実務に専念できるのもいい。」

今後、トラスコ中山では人工知能(AI)を駆使して購買データを分析。ユーザーのニーズを先読みして、需要を掘り起こしていく計画です。

トラスコ中山 中山哲也社長
「顧客が必要とするものを、どうやって提供できるかということを考えると、需要予測であったりとか、在庫管理であったりとか、いろんなところでデジタルの力が必要ですので、(企業はDXに)積極的に取り組むべきだろうと思う。」

DX 遅れる日本の現状

しかし、DXに積極的な国内企業は、まだ少ないのが現状です。経済産業省が去年(2020年)行ったアンケート調査では、9割以上がDXに「まったく取り組めていない」か「散発的な実施」と回答。このままでは、DXに積極的なアメリカや中国に立ち遅れ、大きな経済損失につながると経済産業省は警鐘を鳴らしています。

中小企業のDX “第一歩”を地銀がサポート

そんな中、資金や人材に限りのある小規模な企業にもDXの第一歩を踏み出してもらおうと、支援する取り組みが始まっています。
長崎県松浦市にある養鶏場では、これまで、気温や風向き、エサの種類などの飼育の記録を、手書きで行ってきました。常に人手が足りない状況で、飼育の質の向上に手を回すことは、できなかったといいます。
そこで去年導入してみたのが、月々数千円で利用できるクラウドサービスです。データの相関関係が一目でわかるようになったため、鶏の健康状態のカギを握る温度管理がより綿密に行えるようになったといいます。実は、このクラウドサービスを提案したのは、日ごろからこの養鶏場と取引していた地銀の行員です。経営改善の相談をしたのが、きっかけだったといいます。

長崎県の十八親和銀行では、2年前にデジタル化支援チームを立ち上げました。およそ20人のチームメンバーは、もともと融資や資産運用を担当していましたが、情報の処理やシステムの知識をいちから学び、お金だけでなく“ITの御用聞き”も担っています。

十八親和銀行デジタル化支援グループ 井川浩二さん
「地域の経済が衰退していっては、銀行自体の発展もないということになりますので、その部分を支えるためにはデジタル化が欠かせない。」

DXに取り組む秘訣は?

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業がテレワークの導入を余儀なくされるなど、いまビジネスのさまざまなシーンでデジタル化の必要性が高まっています。
DXを加速させるためのポイントは何なのか。中小企業のデジタル化を支援する十八親和銀行の井川浩二さんは、「身近なIT技術を活用して、日々の業務の効率化をはかる“小さなデジタル化”を積み上げることがDXにつながる」と指摘しています。一方、大手卸売り企業の中山哲也社長は「デジタル化は目的ではなく手段。まずはなりたい企業像を明確にすることが大切だ」といいます。企業を取り巻く環境が激変するいま、DXに取り組むことが新たなチャンスにつながるのではないでしょうか。

取材:大江麻衣子(経済部)、中島奨(おはよう日本)

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