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2020年10月13日(火)

“コロナ退学”で… 「学べない」「働けない」「帰れない」留学生たち

国が掲げた「留学生30万人計画」達成目標年のことし(2020年)。現在、日本に学びにきている留学生の数は31万人に上り、目標は達成されました。なかでも、存在感を増しているのが中国に次いで多い、約7万3,000人いるベトナムからの留学生です。しかし、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、夢を持って留学してきたはずの彼らが「学べない」「働けない」「帰国できない」の三重苦ともいえる現実に直面しています。

“コロナ退学”で学べない

先月(9月)、都内の支援団体に訪れた、ベトナム人のチェウ・リンリンさん(24)。授業料を納めることができず、ことし8月、専門学校を退学しました。

授業料は75万円。実家が借金して送ってくれた60万円では足りず、月10万円のアルバイトで補っていましたが、新型コロナの影響でどちらの収入も断たれてしまいました。

“コロナ退学”で働けない

さらに、チェウさんには、退学後の生活費を稼ぐ手段がありません。留学生のビザを持っていた時には、週28時間アルバイトすることができました。しかし、就労目的で留学した外国人が違法な労働をできないように、退学後は働けないことになっていたのです。

チェウさんは家賃を払うことができず、いま、友人宅を転々とする生活を送っています。日本で学び、日本企業に就職して、母国の貧しい家族を支えたいと考えていたチェウさんですが、結局、親に背負わせた200万円の借金だけが残りました。

ベトナムにいるチェウさんの両親も、お金がなく、帰国もできない娘を心配しています。この日、父親に電話したチェウさん。

チェウさん
「ほとんどお金がなくて、食費は友だちからお金を借りてるの。いま、手元にあるのは1万円だけ。こちらの1か月分の生活費くらい。」

父親
「お金がいるということだね。借金して送ってあげようか。」

チェウさん
「これ以上借金しないで。送らなくていいから。」

父親
「そうでもしないとお前が餓死してしまうじゃないか。」

新型コロナウイルスの影響でやむを得ず退学した留学生が、働けずに路頭に迷っていることについて、NHKが出入国在留管理庁に取材したところ、「新型コロナウイルスの影響で帰国困難な留学生については、個々の事例に応じて柔軟に対応したいと考えている。一方で言語の壁もあり、きめ細かいやり取りがどこまでできているかは課題が残る」とコメントしています。

“コロナ退学”で帰れない

さらに、新型コロナの影響で苦境に立たされている留学生にとって、特に不安なのは帰国のめどが立たないことです。

グエン・ゴク・ガさんです。2年前に来日し、アルバイトで学費を稼ぎながら、大学でアニメーションを学んでいました。将来は大学で学んだ知識を生かして、大好きな日本のアニメに関わる仕事がしたいと考えていましたが、ことし授業料を払うことができず、除籍処分になりました。
大学からはすぐに帰国するように促されましたが、ベトナムは水際対策として日本からの航空便をほとんど受け入れていません。残りわずかな貯金から4万円もする航空券を購入しましたが、欠航となってしまい、すぐに帰ることはできませんでした。

日本では留学生の受け入れが再開されましたが、ベトナムではいまだ厳しい入国制限が続いており、日本からの航空便は制限されています。そのため、留学生が帰国を希望してもすぐには帰ることができません。

グエン・ゴク・ガさん
「悲しくて戸惑っています。これからどうすれぱいいかわかりません。」

NPO「日越ともいき支援会」では、チェウさんやグエンさんのように行き場を失ったべトナム人たちを保護して、生活の支援をしています。この団体では、3月以降、1,000件以上の相談を受けつけ、150人以上のベトナム人の若者を保護してきました。
取材した留学生のように退学後は大学や公的な支援を受けられず、NPOなど民間の支援に頼らざるを得ない外国人がほとんどです。代表の吉水慈豊さんは、厳しい状況に直面している留学生たちが、安心して暮らせる環境を整えてほしいと話しています。

日越ともいき支援会 吉水慈豊さん
「ここまで帰国できないというのは本当に予想していなかった。留学生は頼るところがないので、家族もべトナムにいるし、学校も退学してしまうと手伝ってくれないので、放置されてしまう。できるだけ早く支援してもらえるような環境に変わっていくといいですよね。」

放送後 制度緩和へ

退学後に経済的に困窮している留学生からの声を受け、国は退学後は働くことはできないという原則を変更し、10月19日付で卒業の時期や有無を問わず、一定の条件を満たせば、1週間につき28時間以内のアルバイトを認めることにしました。

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