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2020年9月27日(日)

新型コロナ 最前線の病院が“寄付”を募る理由

長引く新型コロナウイルスの影響は、感染者を受け入れてきた病院の経営に及んでいます。病院団体の調査によると、一般の入院患者の受け入れや手術を控えたことなどで、全国の病院の6割以上が赤字に陥っているということです。こうしたなか、最前線で治療に当たる病院が、自力で資金集めに奔走するという事態が起きています。

新型コロナの治療に当たる病院が赤字

新型コロナウイルスの患者を受け入れている京都大学医学部附属病院です。入り口には、熱が高い人を案内するトリアージエリアを設け、水際での対策を徹底してきました。3月下旬から重症患者の治療に当たり地域医療を支えてきましたが、今年度の赤字は70億円になる見通しです。

患者を受け入れ、院内感染を防ぐためさまざまな設備が必要とされました。空気が外に漏れないよう室内の気圧を低くする「陰圧化」の装置や、安全に空気を排出するため、天井につけた特殊なフィルターなどです。

国や自治体は、これまで医療機関に対して陰圧化装置の設置、医療物資などの購入、患者受け入れに備えた空きベッドの確保などに補助金を出すなど支援を行ってきました。ただ、この病院の場合、陰圧化装置の設置については、補助の対象が外来の診察室など一部に限られていました。

感染の収束が見通せないなか、京都大学医学部附属病院では、将来に備え補助の対象から外れる部屋も陰圧化の工事をすることを決めました。手術室や検査室などその数は14に上り、赤字を抱えながら、数千万円の費用を自前で用意しなければならなくなったのです。

初めてのクラウドファンディングを開始

そこで頼ったのが、インターネットで寄付を集める「クラウドファンディング」でした。当初の目標金額は3,000万円に設定、病院にとって初めての取り組みでした。

京都大学医学部附属病院 宮本享病院長
「一刻も早く陰圧化工事を始めないと、先端的医療や急性期医療がストップしてしまうだけでなく、患者さんや医療従事者を感染のリスクにさらすことになります。できるだけいろんな所から資金を募りたい。」

募集を始めた当初、前例のないことでもあり、寄付はなかなか集まりませんでした。しかし、SNSや報道、院内ポスターで徐々に知られるようになり、病院にかかったことがある人や地域の人を中心に共感と理解が広がりました。

寄付をした1人、今西伸子さんは人工透析のクリニックで働く看護師です。感染すれば重症化の恐れがある患者と接しているため、最後のとりでとなる地域の大きな病院の大切さを日々感じているといいます。

寄付した看護師 今西伸子さん
「コロナの患者さんと会ったわけではないし、その方たちを看病しているわけではないけれども、最先端の(病院で働く)人たちの思いというのはとても大変だと思う。一個人としてもエールがおくれたら。」

寄付の受け付け終了までわずかとなった9月26日時点で、1,354人から、6,200万円近くが集まりました。公的な資金には限りがあり、高度な医療を維持するためには寄付を集めざるを得ない実態があることを知ってほしいといいます。

京都大学医学部附属病院 宮本享病院長
「全国の多くの大学病院で同じ状況であるはずです。今回のプロジェクトは、いわば大手の大学病院である京大病院でもクラウドファンディングに頼らなければならない、という現実を示すメッセージになったのではと思います。」

“収入減を補うための寄付は…”

一方、クラウドファンディングに踏み切るのは難しいと考える病院もあります。2月から80人以上の感染者を受け入れてきた神奈川県の厚木市立病院です。感染対策のための物資や設備の費用は、国や自治体の補助金で賄えることにはなっています。

ただ、最も頭を悩ませているのは、受診控えによる一般の外来患者や入院の減少です。4月からの収入減は12億円になっています。

この病院では、通常診療の収入減に対して公的な支援はありません。毎月かかる固定費などを見直して出費を抑えながら、患者の数が戻るよう自助努力しなくてはなりません。

かつて、クラウドファンディングを利用して災害用車両のために690万円を集めた経験があり、形に残るものに対しては、寄付を利用してきました。しかし今回、収入減を補うという、形に残らないもののために寄付金をあてることには、どうしてもためらいがあるといいます。

厚木市立病院 岸康弘病院事業局長
「経営の安定化を図るのは、病院一丸となって努力してやっていかなければいけないこと。(新型コロナという)災害的影響で受けた減収分については、国や県といった広域的な行政で検討していただいて経営支援をしてもらえたら。」

身近な病院も赤字? 寄付・補助金… どう支える

取材した病院によると、感染者が増えるほど病院の赤字も増え、感染が収まらないかぎり経営の悪化は免れないといいます。新型コロナの患者を受け入れているかどうかにかかわらず、多くの医療機関では経営が厳しい状況ですが、新型コロナの治療に当たる地域の病院への支援は、もっと手厚くあってもよいのではという意見が聞かれました。

新型コロナとの戦いは長期化が予想されるなか、大阪の泉佐野市では“病院の赤字支援を”と寄付を募り、院内感染が起きた東京の永寿総合病院ではOBらが“人件費の補てんのため”などと広く呼びかけ、およそ5,000万円が寄せられるなど、全国各地で同様のケースがあります。いずれの場合も、病院に寄付をしたのは、地元の住民など“個人”がほとんどです。国や自治体による制度的な支援の検討はもちろん大切ですが、寄付の呼びかけは、身近な病院に関心を持ち実情を知る、ひとつのきっかけになるのではないでしょうか。

取材:田中ふみディレクター(おはよう日本)

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