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2020年9月25日(金)

コロナ禍で遠のく!? “女性活躍社会”

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、働く女性に暗い影を落としています。最新の就労者数(2020年7月)をみると、去年(2019年)の同じ時期に比べて、男女合わせて76万人減っていますが、このうち女性が54万人で全体のおよそ7割を占めています。女性が、より影響を受けているとみられるのです。取材から見えてきたのは、コロナ禍で増えた家事や育児の負担が、働く女性を苦しめている現実です。

理学療法士として高齢者施設に勤める田村泰穂さんはこの半年、思うように働けない日々が続いています。始まりは緊急事態宣言が出された4月。子どもたちが通う保育園から、登園の自粛を求められたことでした。

田村さんは、4歳と2歳の娘、夫と都内で暮らしています。コンサルタント会社に勤める夫も在宅勤務を始めましたが、取引先や会社とのオンライン会議が立て続けに入り、昼間、自室から出てこられるのは会議の合間のおよそ10分だけ。田村さん1人で子どもたちを見ることになり結局、3か月以上、休職を余儀なくされました。

田村泰穂さん
「夫としては結構協力しようと思ってくれていると思うんです。そういうのも伝わるんですが、でもどうにも休めない。『休職するのは私だよね』、『そうだね…』みたいな感じでしたね。」

インターネットの動画配信会社が行ったアンケートによると、一斉休校が始まった際、夫婦のどちらが対応したか聞いたところ、「すべて妻」が半数以上、「8割以上が妻」と答えた人と合わせると、全体の80%に上りました。アンケートに寄せられた声からは、「結局対処するのは主に母親で悲しい」、「親子ともにストレスがすごかった。疲弊しすぎて家が回らなかった」など、緊急時は女性が対応を迫られる傾向が見えてきます。

保育園が再開された7月以降、田村さんは職場に復帰しましたが、週に2日の出勤も思い通りできていません。子どもにかぜの症状が少しでもあれば登園はできず、家事や育児の負担が続いているからです。

田村泰穂さん
「理想はフルタイムで働いて、親2人で子ども2人の世話をできること。男性の勤め方も会社側がもうちょっと理解してくれて、働きながら女性1人じゃ見れないっていうことを理解してほしい。」

家事や育児の負担が増す中で、職を失ってしまった女性もいます。千葉県内で夫と3歳の娘と暮らす藤田さん(仮名)は、ことし(2020年)6月、5年間勤めた会社から雇い止めにあいました。

藤田さん
「もう本当にびっくり。会社側からそういう更新をしたくないって言われることはなかったので。」

最新の調査(2020年7月)では、非正規で働く人は去年、同時期に比べ、131万人減少。そのうち女性は81万人におよびます。国は、感染拡大の影響で雇い止めなどが増えているとみています。

大学で建築を学んだ藤田さんも結婚後、非正規雇用で設計の仕事を続けてきました。しかし、ことし4月、保育園に子どもを預けられなくなり休職。雇い止めにあったのは、2か月ぶりに職場に復帰した直後のことでした。その後、藤田さんは再就職しましたが、時給は1,600円から最低賃金に近い930円になり、月収は7万円以上減る見込みです。新たな仕事は荷物の梱包で、設計の専門知識も生かせなくなりました。

藤田さん
「やっぱり設計の仕事に未練があって、実際にいまのパートで働いていると、図面を描いてる方が楽しいなって思うこともありますね。スキルはあって、それを生かせる職場がないというのは、社会にとって損失なんじゃないかなって、すごく思います。」

感染が広がって半年あまり。働く女性たちの厳しい状況はいまも続いています。背景を見ていくと、女性を取りまく労働環境があります。

実は、働く女性自体は近年増え続けています。政府が女性活躍推進を掲げた2012年度から、昨年度までに330万人増えました。保育所の整備などが進められたことも背景にあると見られます。しかし働く女性のうち、非正規の割合をみると、昨年度は56%。男性の23%と比べると、圧倒的に不安定な状況にあるのです。専門家は、コロナ禍で、女性活躍推進の課題が浮き彫りになったと指摘します。

日本女子大学現代女性キャリア研究所 大沢真知子教授
「結局全体で見て、女性の地位が本当に向上したかっていうと、そうはいえない。一部の女性はよくなったけれど、全体で見ると非正規が増えてしまって、低賃金の女性が増えた。働く女性は増えたんだけど家事労働は女性っていう役割分担っていうのは変わらなかったっていうことだと思うんですね。だから政策においても、それが考慮されないような形で突然休校になってしまった。」

家事・育児の女性偏重を解消するために、いま何が必要なのでしょうか。専門家によると、例えばオランダやドイツなどでは、パートタイムでも時間当たりの給料や待遇をフルタイムの正社員と同じにしたといいます。そうすることで女性が安定した環境で働いて収入を得やすくなり、男性、夫の側もそれまでのように長時間働かなくてもよくなったそうです。その結果、仕事と家事育児の分担につながったということです。さらに、コロナ禍で必要に迫られた在宅勤務のような、柔軟な働き方の推進も大きなポイントになるといいます。感染拡大により、男女問わず、そして企業も働き方の見直しが迫られる中、真の女性活躍の推進につながる具体的な政策を、いまこそ議論し、打ち出していく必要があると思います。

取材:松田伸子記者

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