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2020年9月19日(土)

コロナ禍でも“体感”を 「音楽フェス」の新しいかたち

野外などでミュージシャンのライブを楽しむ「音楽フェスティバル」、「フジロックフェスティバル」や「サマーソニック」などが有名です。近年幅広い世代に人気が広がり、市場規模は拡大を続け、去年(2019年)の市場規模は330億円にまで達しました。しかし、ことし(2020年)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「音楽フェス」のほとんどが中止に追い込まれています。こうしたなかでも安心して楽しめる「音楽フェス」のかたちを模索し、例年と同じ規模で開催に踏み切ったフェスがあります。

取材:下山章太ディレクター(おはよう日本)

「音楽フェス」の灯を絶やさないために

東京・渋谷区にあるイベント企画会社の代表、鈴木幸一さんです。初期のフジロックフェスティバルの運営にも携わるなど、音楽フェスを20年以上手掛けています。ことし会社で予定していたイベントはほとんど中止や延期になりましたが、そうしたなかでも実現可能な音楽フェスのかたちを探ってきました。

緊急事態宣言の出ていた5月に、東京・あきる野市で開催したのは無観客ライブです。その様子を無料でネット配信しました。その後も、数十人、数百人と少しずつ観客を入れながら、コロナ禍でもできる音楽フェスのかたちを探ってきました。模索するなかで、鈴木さんが強く感じたのは音楽フェスは、客が生で感じることが原点だということでした。

イベント企画会社アースガーデン代表 鈴木幸一さん
「音楽フェスというのは、何よりも“体感の場”。やはり配信には体感はないわけです。その体感の場としての音楽フェスというものに、僕は可能性を感じてきているんです。」

コロナ禍でも開催するためには

鈴木さんは、ある挑戦に乗り出しました。山梨県の清里で、毎年夏に開いてきた音楽フェスを、ことしも規模を縮小せず開こうと考えたのです。ただ、ことしは感染拡大を恐れる地元の反対で一旦延期せざるを得ませんでした。

鈴木さんは、どうすれば開催できるのか、地元の自治体や宿泊業者などと会議を重ねました。地元の人からは、音楽フェスで人が密集することへの心配する声が多くあがりました。

出席者
「来る人は遊びに来るから開放的になってるし、やはり釘を刺したほうがいい。」

また一方で、音楽フェスをきっかけに、激減した観光客を呼び戻したいという声もあり、鈴木さんたち運営側と地元の人たちは、対策をとった上で9月に開催することを決めました。

ことしも音楽フェスを開くことに期待をかけている人もいます。地元でブルーベリー農園を営む筒隆志さんです。毎年音楽フェスに店を出しています。筒さんの農園では観光客向けのブルーベリー狩りを行っていますが、ことし訪れる人は新型コロナの影響で大きく落ち込んでいます。筒さんは、ことしも音楽フェスを開催し、地元に再び人が訪れるきっかけにできないかと考えています。

ブルーベリー農園経営 筒隆志さん
「何もしなければ、生きていけなくなって経済が回らなくなり食べていけなくなってしまう。やっぱり今動き出すことに意味があると考えざるを得ない。」

迎えた本番 初めてづくしのルール

いよいよ迎えた本番。ここではさまざまな対策がとられました。ステージの前には200脚の椅子を設置しました。座ることで客が密集しないようにするためです。そして感染拡大を防ぐために、国の接触確認アプリのダウンロードも義務づけました。お客の反応は…。

観客
「この先フェスが続かないのは嫌なので、こういう対策をやって、お互い安心して入りたいです。」

出演アーティストは35組。観客は2日間でおよそ3,000人と、去年を上回る人が集まりました。ライブ中にもルールが設けられました。もし音楽を聴いていて踊りたくなった人は、椅子の後方で間隔をあけた上で踊ります。もちろんマスクの着用が基本です。ただ会場では、熱中するあまりマスクを外してしまう人もいました。主催者の鈴木さんは、リスクを感じスタッフに対応を指示しました。

多くの集客が見込まれる会場ではスタッフが「ソーシャル・ディスタンス」や「マスク着用」を呼びかけるカードを掲げて歩いていました。注意を促しながらも客が楽しむのを邪魔しないよう運営側も気を配っていました。

観客
「運営の人たちがすごく気持ちよくやってくれました。そして、参加してる客たちの協力する心みたいなのもすごく感じました。」

会場には、多くの地元の人たちが出店し、フェスを盛り上げました。もちろん、農園の筒さんも収穫したてのブルーベリーを販売し、地元の魅力を伝えました。

ブルーベリー農園経営 筒隆志さん
「みんなでどうやったら開催できるか必死に考えてきたし、今回もこうやってみて本当に良かったと思います。」

このフェスの趣旨に賛同し、参加したアーティストたちも、通常とは異なる環境でのライブでしたが、手応えは強く感じていました。

歌手 加藤登紀子さん
「みんなの連帯感がすごいですよね。そういうフェスが存在したということはすばらしいことだと思います。」

コロナ時代に生の音楽をわかちあう試み。アーティストと客、地元がともに考え、音楽フェスの1つの“かたち”をつくり上げました。

イベント企画会社アースガーデン代表 鈴木幸一さん
「新しい時代というか新しい生活様式をつくるための挑戦の1つだったと思います。1つ扉は開いたかな。」

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