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2020年9月5日(土)

オンライン学習の進め方 学校や地域で違いが…

9月に入って多くの学校で授業が始まっています。ただ、今年(2020年)は全国で夏休みを短縮する動きが相次ぎました。文部科学省によると、新型コロナウイルスによる休校で学習の遅れなどを取り戻すため全国で9割以上の教育委員会が夏休みの短縮を決めました。学習の遅れを取り戻す手段として注目されているのが、学校と家庭を結んで行う「オンライン学習」です。ただ、学校や地域によってこうした学習の進め方に違いがあることが分かってきました。

オンライン学習を始めてみたものの…いくつもの課題

岐阜県多治見市にある公立中学校では、8月17日から授業が始まっています。この学校では、新型コロナウイルスの影響で今年3月からおよそ3か月間休校していました。学習の遅れを取り戻すために夏休みを9日間に短縮しました。

中学3年生
「本当にやりたいこともできずに、夏休みという感じがゼロでした。」

学校は休校が始まった当初、生徒の家庭にプリントを配って学習の遅れを食い止めようとしました。しかし、休校の期間が予想以上に延びたことに危機感を抱き、初めて取り組んだのがオンライン学習でした。全科目でおよそ300本もの動画を1か月で制作して、生徒が家庭で学習を進められるようにしました。

ただ、始めるにあたって、すぐに課題に直面しました。学校が各家庭のネット環境をアンケートで調査したところ、他の家族がパソコンを使っていたり、親がいないとネットを見られないなど、自由に使うことができない生徒が1割もいることが分かりました。
さらに「学習の進め方」でも課題が見つかりました。国語担当の教師は小説を読み解くことを助ける動画を作りました。この教師はこれまで生徒に考えさせ意見を言わせて授業を進めていました。しかし、動画を配信するやり方では意見のやりとりができず、手応えを感じにくいといいます。

国語教師
「教師主導で進めていってしまう形になるのが、怖いです。これが答えだよと私が言ってしまうと、子どもたちはこの教材に対してでないと正解が言えない状態になってしまいます。」

この学校では、オンラインで生徒が学習できたか不安を感じたため、休校が終わってから同じ内容を教え直しました。再びの感染拡大に備え、オンライン学習の質を高める必要を感じています。

多治見市立陶都中学校 薄井伸一校長
「現時点ではオンライン授業をそのままできるという環境ではありません。まだ定着している状況ではないので、一般の教員には、やはり研修が必要だと思います。」

行政・学校・地域一体で進める オンライン教育

一方、休校期間中にオンラインで学習を進めたことで30日間の夏休みを確保できたのが、東京都渋谷区の公立中学校です。

中学2年生
「勉強の遅れとかはそこまでなくて、夏休みの午後はゆっくりできています。」

3年前からすでにネットを活用した学習を始めていたこの学校。新型コロナによる休校期間中も、学校と生徒の家庭を結んでオンライン学習を行いました。通信機能のついた端末を全生徒に1台ずつ貸し出しています。通信にかかる費用は渋谷区が全額負担しています。時間割りも組んで進めたこの取り組みで、学習の遅れはほとんど出ていないといいます。

主幹教諭
「例年と授業の進行が全く変わらず、テスト範囲についてもいつもと同じような範囲で進められています。」

3月にオンライン学習を始めたときは、指導の動画などを学校側が配信し、それを生徒が見る仕組みでした。その後、教師の指導を生徒が同時に受ける仕組みを導入しました。学習には双方向のやりとりが重要だと考えたためです。いまでは生徒から教師に向けてリアルタイムに質問や意見を言えるようにしています。オンライン学習を有効なものにするために、地域や学校が一体となって改善していこうとしています。

渋谷区立笹塚中学校 駒﨑彰一校長
「オンライン学習で、教員も試行錯誤しながら先に進めているというのを見せるのも本当に重要だと思います。教員、子どもたち、保護者、そして地域が一緒に作り上げる“学び”だと感じています。」

国も「オンライン学習」の充実に力を入れていて、生徒1人に1つの端末を行き渡らせたり、家庭でもネットが使える環境の整備などに補助をしていく予定です。ただ専門家は、ネット環境の整備も大切ですが、教師がオンライン学習にもっと取り組めるための支援も必要と指摘しています。

教育社会学が専門 早稲田大学 松岡亮二准教授
「先生たちの単なる頑張りに任すのではなくて時間を作ってあげなければいけません。その代わりにサポートのスタッフを入れるのか学習支援員を入れるのか。方向性としてはそれをやらなきゃいけないと思います。」

学校だけにまかせず行政・生徒などが一体となってこのオンライン学習に取り組んでいくことが重要かもしれません。

取材:中江文人ディレクター

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