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2020年8月28日(金)

2020の夏 世界に配信された“義足のランウェイ”

8月25日は、東京パラリンピックの開会式が予定されていた日です。開会式が始まるはずだった夜8時から、“義足のモデルたち”によるファッションショーが開催されました。

パラリンピック開会式が予定されていた時刻に…

ステージに登場したのは、全国から集まった12人の女性たち。この日のために特別に作られた個性豊かな義足で、ランウェイを飾りました。新型コロナ対策のため、会場には観客を入れず、ステージの模様はネットで世界に配信。参加したモデルには、東京パラリンピックを目指すパラアスリートの姿もありました。

パラ陸上 大西瞳選手
「希望に向かって前に前に進めるように、来年のパラリンピックにむけて、自分自身もここで気持ちを切り替えていきたいです。」

パラ陸上 前川楓選手
「日本中、世界中の方に見てもらえることができたのですごくうれしいです。」

義足のかっこよさを知ってほしい

今回のイベントを企画したのは、写真家の越智貴雄さんです。20年にわたってパラスポーツを追い続け、国内はもちろん海外の大会にも足を運び、その魅力を発信し続けてきました。もっと多くの人に義足のかっこよさを知ってほしいとの思いから、7年前からはアスリート以外の義足のモデルを撮影し、写真集やファッションショーを企画しています。

写真家 越智貴雄さん
「義足を隠さなければいけないものだと思っている人たちが結構いるっていう話を聞いたんですね。僕の中では、それまでパラアスリートの躍動する姿、義足のアスリートの人たちしか見てなかったので、ちょっとショックを受けました。かっこよく義足をはきこなしている姿が、もっともっと世の中にまじわっていって、逆境から乗り越えて突き進む力を伝えることができたらなと。」

義足でステージへ 18歳の挑戦

イベントに参加する1人・海音さん(18歳)です。ステージに立つことで、これまでの生き方を変えようとしています。幼いころはキッズモデルとして活動し、アパレルブランドの広告や、雑誌の表紙を飾るなと、活躍が期待されていました。しかし、12歳の時に血液の病気が原因で、右足の膝から下を切断。夢だったモデルの仕事も、断念しました。リハビリを経て退院しましたが、学校では義足のことを打ち明けられませんでした。

海音さん
「義足っていう普通の人じゃないっていうのが嫌で隠していました。本当は(制服のスカートの丈は)これぐらいの長さなんですけど、別注して長く作ってもらいました。友達と旅行だったりとか、好きなファッションとかできなかったりとか、人の目を気にしたりだとか神経質に隠したりするのはすごく疲れます。」

踏み出す勇気をくれた パラリンピックの閉会式

海音さんが、今回のショーに参加しようと決めたきっかけは、リオデジャネイロ・パラリンピックの映像を見たことでした。閉会式に登場した義足のモデル・GIMICOさんの姿が目に焼き付いたといいます。

海音さん
「堂々と歩いている姿がすごくかっこよかった。義足を出してかっこよくなってもいいんじゃないかなと。」

本番の前日、海音さんはショーで使う義足のフィッティングのため、義肢装具士のもとを訪れました。用意されたのは、普段使っている義足とは全く異なる、シルバーの義足でした。膝から下のラインが美しく見えるように、海音さんのために特別にデザインされました。

モデルに向かって歩み出す日 選んだ衣装は…

迎えた本番当日。全国から集まったモデルたちが、それぞれ自分が最も輝く衣装を準備して、ステージに上がっていきます。そんななか、海音さんが選んだのは、高校時代に来ていた制服。今まで履けなかった短いスカートで、義足を見せて登場しました。


海音さん
「すごいかっこよく、堂々とした自分で歩いてきて、生まれ変わったような、新しい自分として笑顔で歩けたと思う。ステージに出た時には緊張がなくなっていて、自分らしく歩けたと思います。」

義足のファッションショー 伝えたかったメッセージは

海音さんのように、洋服で義足を隠したりして、障害を生活している人はたくさんいます。もちろん「見せない」という選択肢があっていいと思います。一方、あえて「見せる」ことで、障害のある人とない人が少しでも歩み寄って、お互いの理解が深まるきっかけができれば、みんなが生きやすい社会になるのではないかと感じました。

取材:後藤佑季(NHKパラリンピック放送リポーター)、伊藤博克ディレクター、山内沙紀ディレクター

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