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2020年7月22日(水)

五輪まで1年 岐路に立つアスリート

新型コロナウイルスの感染拡大で、スポーツをとりまく状況は一変しました。スポンサー企業の中には契約を見直す動きも出始めるなど、選手や競技団体は苦境に立たされているのです。五輪まで1年、岐路に立つアスリートたちを取材しました。

新型コロナで環境が一変 悩むアスリート

サーフィンの村上舜選手。去年(2019年)の世界選手権では、アジア勢トップの4位。東京オリンピックではメダル獲得を目指しています。緊急事態宣言が出され、海での練習を自粛していた4月、SNS上でショッキングな言葉を目にしました。

「モラルのない奴らがやってるサーフィンなんか、オリンピック競技から外せ。」

海沿いの観光地にでかけてサーフィンをする人たちに批判の目が向けられ、それが競技そのものへの非難に、エスカレートしていたのです。

サーフィン 村上舜選手
「もっといいイメージ持ってもらうために本当に頑張ってきたんで、とにかくショックでした。」

日本サーフィン連盟では、競技のイメージダウンに加えて、いま懸念していることがあります。 それは、30社余の企業と結ぶスポンサー契約です。業績が悪化し、契約を見直し始めた企業があるのです。

日本サーフィン連盟 宗像富次郎副理事長
「かなり厳しいという協賛企業さんもおりますので、ちょっと協賛を降りるよっていうようなところもあるのかな。」

コロナ禍の“アスリートの価値”とは何か 考え続ける日々

スポンサーに頼ることに、ためらいを感じ始めたアスリートがいます。フェンシングの三宅諒選手です。2012年のロンドン大会で、団体で銀メダルを獲得。2大会ぶりの出場を目指しています。

海外遠征の費用など、年間300万近くになる三宅選手の負担額。しかし4月、三宅選手はスポンサー企業からの支援を、いったん保留することにしました。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「いつ試合があるか分かりません。どのようにオリンピックの選手を決めるか分かりません。ですが、2021年に向けて頑張りますので、応援して下さいというのがですね、どうしても言えなかったんですね。」

「大会に出場できない自分に、価値はあるのか」、「そもそも、オリンピックは開催するべきなのか」。
自宅でしかトレーニングができない中、自問を続けました。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「オリンピックって今、この状況で必要なのかなって。いったいスポーツ選手って何だろう、いったい僕って何なんだろう。」

“自分の価値を見出すために” 三宅諒の模索

4月末、三宅選手は行動を起こします。活動資金をかせぐため、配達代行サービスのアルバイトを開始したのです。収入は1日わずか数千円。それでも、第一歩を踏み出すことで、オリンピックへと向かう気持ちを奮い立たせたのです。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「何か1つでも本当1円でもいいから、その夢のために進んでいるっていう実感がほしかったんです。」

さらに、動画投稿サイトに自分のチャンネルを開設。引退した元オリンピック選手らと“アスリートと企業の関係”について議論しました。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「アスリートの(企業への)リターンってめっちゃ難しくないですか。」

元バドミントン日本代表 池田信太郎さん
「スポーツを使ってこの社内にどう還元するか。新人研修のときに必ず、入社1年目のときに話をするとか。」

“社会におけるスポーツの価値とは何なのか”三宅選手は考え続けました。こうしたがむしゃらな姿勢は、海外メディアからも注目を集め、共感と励ましの声に、迷いが消えていったといいます。

“応援してもらうために” これからのアスリートに求められること

7月、三宅選手は、契約を保留していたスポンサーを訪ね、取り組んできたことを伝えました。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「この時期に練習だけしていて大丈夫かと、その中でもとにかく前に進めるように、工夫してやらないといけないかなと。」

スポンサー企業 松井眞紀社長
「いや、すごく感心しましたよ。三宅君の場合は、僕らになんか言うわけじゃなくて、自分の行動で、メディアも巻き込んで、機会を生み出しているのはすごく評価できるなと思います。」


企業側は、三宅選手の発信力や人柄が支援に値すると判断し、この場で契約の延長を決めました。

フェンシング男子フルーレ 三宅諒選手
「すごく緊張しました。企業がプラスになるような何かを提供するということは、やはりこれから自分が活動を通して続けていかないと見つけられないかなと。応援してもらってなおかつ、一緒に夢を目指してもらえるようなアスリートになりたいと思います。」

コロナによる環境の変化が、アスリートが自分の価値を見つめ直すきっかけになっています。「自分を応援する価値」というものを、スポンサー、社会にどう示していけるかということが、これからのアスリートにとって大切になってきます。それと同時に、私たち一人一人、そして社会全体がスポーツをどれだけ支えていけるのか、問われていると感じました。

取材:清水瑶平記者、鬼澤昌秀ディレクター

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