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2020年6月29日(月)

新型コロナで寄付金が激減 NPO法人が運営危機

新型コロナウイルスで経済が大きな影響を受ける中、セーフティーネットとして社会的弱者などへの支援を行うNPO法人にも深刻な影響が及んでいます。多くのNPO法人が資金源として頼っている募金や寄付金が減少し、存続の危機に直面するところも出ています。

寄付金7割減 NPO法人の存続難しく

5月、大阪市で子どもの里親支援を行うNPO法人のホームページに、ある文章が掲載されました。

「急激にご支援やスポンサーがいなくなってしまい、年末まで運営が維持できない状況になってしまいました。この窮地を助けてください。」

文章を掲載したのは、NPO法人「日本こども支援協会」です。10年前にNPO法人を立ち上げた岩朝しのぶさんは、親から育児放棄や虐待を受けた子どもを、一定期間自分の家庭で育てる約4,000世帯の「養育里親」の人たちを支援しています。さまざまな境遇で育った、実の子どもではない子を育てるなかで直面する、里親特有の悩みに向き合ってきたと言います。

日本こども支援協会 岩朝しのぶ代表
「子どももそもそも課題を抱えて、いろんなものを背負って里親の元にやってくるので、それを一緒に背負っていくのが里親。」

この団体の1年間の活動資金は約1,400万円。このうち約8割を企業や個人からの会費や寄付などでまかなっています。しかし新型コロナウイルスの影響で、企業の経営が悪化し、2月から4月までの3か月間で、寄付金の額は去年の3割にまで減少しました。このため、これまで全国各地で開いてきた里親どうしの相談会や、イベントを開くための交通費や宿泊費などが捻出できなくなりました。
このNPO法人では、家賃やホームページの運営費、税理士などへの支払いに毎月40万円かかりますが、収入減少により約20万円の赤字が続いています。このため現在は岩朝さんが自らの貯金を取り崩して補填していますが、この状況があと3か月ほど続けば、NPO法人を存続させることは難しいと言います。

日本こども支援協会 岩朝しのぶ代表
「いまコロナ禍で、地域の里親の相談会が開けないということは、この人たちは結局誰ともつながらないで交流できない。私がやめることで里親と子どもたちが困ると思ったらやめられない。」

SOSを助けられない NPO法人の運営悪化の影響

NPO法人の運営が悪化する一方で、新型コロナウイルスで生活が大きく崩れた人たちにとって、その存在は欠かせないものになっています。
岡山県津山市で、DVや虐待を受けた女性の保護を行っているNPO法人「オリーブの家」です。2年半前にこの団体を設立した山本康世さんです。これまで助けを求めてきた40人以上の女性を、団体が所有する3つの部屋とホテルを確保するなどして保護してきました。

6月上旬からNPO法人が保護している30代の女性です。数年前から夫の暴力を受け続けてきましたが、4月以降、夫が自宅で過ごすようになったことでDVが深刻化し、インターネットで知った山本さんのNPO法人に連絡してきたといいます。

オリーブの家 山本康世理事長
「ご連絡があった時が、新型コロナの影響があって、このままだったら自宅にいても死ぬかもしれないし、死にたいという気持ちがだんだん強くなってきたということでご相談を受けた。」

NPOが保護しているDV被害女性
「主人から暴力、DVを受けていて、夫と一緒にいる時間が増えてしまったことで悪化しました。やっぱりどこにも言えないので、こういうところがないと、多分あの生活が続いていただろうなと思います。」

このNPO法人に保護を求める女性は、この2か月で去年(2019年)の5倍の50人に増加しましたが、運営資金の大半を占める寄付金が半減したため、新たにホテルの部屋を確保する費用を捻出することができなくなりました。そのため、この状況を一時的に乗り越えるため、山本さんはスタッフの自宅を借りて、一時的に女性を保護しています。それでも助けを求めるすべての女性を保護することはできず、断らざるを得ないケースも出てきています。

オリーブの家 山本康世理事長
「コロナの影響で、非常に多くの方が保護を求めてきているので、本当になりふり構わずいろんな方にお願いしています。ここでお断りすると、その方たちはその次の日から、現状のDV環境にまた戻っていってしまう。そういう現状の人たちこそ助けてあげたいんですけれども、そこにサポートの手がなかなか行き届かないと言うのは、私たちもジレンマがあります。」

NPO法人の運営悪化をどう支える?公的支援は?

4月に全国約1,000のNPO法人を対象にした調査で、「経営に影響が出ているか?」聞いたところ、「影響が出ている・今後影響が出る」と回答したところが全体の76%に及びました。一方、こうした団体への公的支援ですが、国の「持続化給付金」は、売り上げが大きく落ち込んだ中小企業などが対象のため、寄付金などの収入に頼るNPO法人は対象になりません。
※事業収入を得ているNPOは対象になることがあります。

そこで国は先月(5月)、金融機関に預けられたまま取り引きがない預貯金、いわゆる「休眠預金」を活用した支援を行うことを決めました。NPO法人の申請は7月上旬から受け付ける予定で、まだ具体的な日程は決まっておらず、実際に助成金が交付されるのは、早くても7月下旬になる予定です。

NPO法人の研究をしている明治大学の長畑誠教授は、以下のように指摘します。

明治大学 長畑誠教授
「こうした緊急時には、NPO法人は政府の支援から漏れる人たちをセーフティーネットとして支える役割を担っている。社会的弱者にしわ寄せがいかないよう、国のNPO法人の支援には緊急性が求められる。」

取材:上原直大ディレクター

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