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2020年6月9日(火)

新型コロナで休載も 人気漫画家のいま

新型コロナウイルスの影響でいま、ベテラン漫画家の人気作品が次々と休載に追い込まれています。背景にあるのは、制作現場が、いわゆる“3密状態”になりがちなことです。新型コロナに負けない新たな漫画づくりへ、模索が続いています。

“3密の現場” 連載52年の「ゴルゴ」が窮地に

狙った相手は逃がさない、正体不明のスナイパー「ゴルゴ13」。作者で劇画家のさいとう・たかをさんは、自身の現状をゴルゴ13になぞらえて、「ウイルスに標的にされている」と話します。

連載開始から52年。月2回の連載を休まず続けてきたゴルゴ13。しかし、その制作現場は“3密”のため、以前のように作業を続けることは難しいと、先月(5月)、初めて、新作の掲載を見合わせました。

劇画家 さいとう・たかをさん
「ただただスタッフの命を守るためです。作品うんぬんも考えてませんでした。」

さいとうさんには、 50年以上にわたって守り続けてきた工程があります。それは、1枚の紙に、複数のスタッフが順番に画を描いていくというもの。

人物や乗り物、拳銃、そして背景。職人技が紙の上で1つになることで、リアリティーのあるゴルゴの世界が生まれます。長年大切にしてきた「人と人とが近い環境」はコロナを前に崩れ、いま、ゴルゴは窮地に立たされているのです。

劇画家 さいとう・たかをさん
「作者やスタッフが集まっていなければダメなんですよね。一緒にいると線1本まで指示できる。ところが離れているとそうはいかない。3密の形はコロナの間は絶対できないと思う。」

テレワークで制作のあり方を見直し

一方、制作のあり方を見直すことで、現状を打開しようという漫画家もいます。「UQ HOLDER!」の作者、赤松健さん。5年ほど前から紙は使わず、デジタルで制作しています。

漫画家 赤松健さん
「漫画家の新しい生活様式の中でいちばん大事なのは、読者に漫画を送り続けること。作品を止めないこと。漫画の描き方について、われわれは根本的に変えていく必要がある。」

コロナをきっかけに赤松さんが進めたのが、テレワークでの漫画づくりです。データ化されている赤松さんの下絵をコマごとに分割し、在宅で作業するアシスタントのもとへ。アシスタントは、与えられたコマに背景を描いたり色づけしたりして作画。送り返されたデータを最後に赤松さんが仕上げるやり方です。
赤松さんはビデオ電話やチャットを使って修正点を指示。絵の微妙なタッチをどう伝えるかなど、まだまだ課題はあるものの、今後、漫画界のテレワーク化は一気に進んでいくと感じています。

漫画家 赤松健さん
「年配の先生でもこれを機にデジタル化するかという話が結構ある。テレワーク化、デジタル化をどんどん進める方向になっていくと思う。」

ゴルゴも動き出す

一方、ゴルゴ13の現場も変わろうとしています。まずはスタッフを交代制で半数に。制作のスピードは落ちますが、密集した状態にならない環境を優先しました。また、ずっとこだわってきた手書きも見直し、試験的に、一部デジタル化にも取り組んでいます。

スタッフの生活や安全を守りながら、自分たちの漫画のスタイルをどう守っていくか。来月(7月)の再開を目指し、さいとうさんは模索を続けています。

劇画家 さいとう・たかをさん
「私がやっているこの形でやっていく。組織みたいなものが私は一番やりやすいですし、私が生きている間は、それで頑張っていこうと思っています。」

取材:白川貴弘ディレクター

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