これまでの放送

2020年5月27日(水)

ギャンブル依存症 自粛緩和で悪化懸念

4月、パチンコ店に休業要請が出される中、都道府県をまたいで店を訪れる人たちの姿がニュースなどで伝えられました。専門家は、こうした中にギャンブル依存症の人が少なくないと指摘しています。緊急事態宣言が解除され、自粛が緩められていく中で、依存症者の家族や回復を支援する人たちの間では、症状が悪化しかねないという危機感が強くなっています。

ギャンブル依存症家族 専門家の懸念

ギャンブル依存症者の家族の自助グループでは新型コロナの感染拡大を防ぐため、依存症者の家族の集会をオンラインで開いています。

最近、話題に出るのは国民1人あたり10万円が支給される特別定額給付金についてです。「10万円が依存症の夫に渡り、ギャンブルに費やしてしまわないか」あるいは、「今回の政府の仕組みでは、給付金の申請書が依存症者の夫に渡ることになるので不安だ」など、給付金がギャンブルを悪化させるきっかけになってしまうのではないかという懸念が挙がっています。

緊急事態宣言の解除、そして定額給付金の支給などについて、ギャンブル依存症者はどのように感じているのでしょうか。

依存症からの回復に取り組んでいる50代の男性に話を聞くことができました。
新田拓也さん(仮名)は、2年ほど前、仕事で単身赴任となったのがきっかけで、パチンコに通うようになりました。しだいにやめられなくなり、家族に内緒で、サラ金などから300万円以上の借金を重ねました。現在はやめることができていますが、緊急事態宣言の解除後に近所のパチンコ店が営業を再開。少し前までの自分なら、すぐに店に向かっただろうといいます。

新田拓也さん(仮名)
「今はなるべくパチンコ店の前を通らないなど気をつけているというのはありますけれども、パチンコに夢中になっている時だったら、近くのお店が開けば“また打てる”と思っていたと思います。」

専門家によれば、ギャンブル依存症者は、脳の中に変化が見られることがわかっています。
ギャンブルなどの刺激を受けた時、脳内では快楽物質のドーパミンが放出されます。しかし、ギャンブルが習慣化すると、ドーパミンの放出が弱くなります。すると、より強い刺激を求め、自分の意思でギャンブルをやめることが困難になるのです。

精神科専門医 北星学園大学 田辺等教授
「ギャンブル依存症者は、勝った時の体験がすり込まれていて、そのイメージが湧いてくると、“お金があればもう開係ない”と、ほかのことは考えなくなるんです。緊急事態宣言が解除されて、世の中がパチンコやスロットなどに許容的になって、そして若干のお金が入った時には非常にリスクが高まると思うんですね。」

ギャンブル依存症への正しい理解を

ギャンブル依存症は、本人が自覚しにくいと言われています。回復にあたって重要なのは、家族や周りの人たちの理解です。支援者たちは、依存症について正しく知ってほしいと呼びかけを続けています。

ギャンブル依存症からの回復支援を続ける田中紀子さんは、この10年で依存症者の家族およそ3,000組を支援してきました。主催する家族相談会では、家族に依存症の特性を正しく理解してもらおうと努めています。例えば、家族がつい本人にお金を渡してしまい、依存症を悪化させてしまうケースも多いことから、「余計なお金や金目のものは本人に渡さない」と強調します。

さらに田中さんは、ギャンブル依存症への理解を広めようと、今月(5月)から、ツイッターでドラマの配信を始めました。このドラマを企画立案したのは田中さん自身。依存症からの回復支援者の役を青木さやかさんが演じます。支援するのは、競輪などのギャンブルで借金を作った夫(高知東生)と、その借金を肩代わりした妻(鈴木まりや)。妻に対して「本人が自分の力で回復できると信じ、あえて手を貸さず、勇気を持って見守ることが必要」と、依存症を正しく理解し、時には夫に厳しく接することが重要だと説いていきます。

ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子代表
「一番大事なのは家族が正しい対応を学ぶことです。そこから本人も救われる。そして、もし、周りの方に依存症らしき問題が起こった時に“相談に行ったほうがいいよ”と言える人が増えるなど、ギャンブル依存症への理解がなるべく広まってくるといいなと思っています。」

単身赴任中に陥ったギャンブル依存からの回復に取り組む新田さん(仮名)がいま、ギャンブルをやめることができているのは、妻に借金について打ち明けたことがきっかけでした。

新田拓也さん(仮名)
「私の場合、何回も借金を繰り返して、自分で身動きがとれなくなり、妻に白状してしまえばいいやと考えました。」

新田さん(仮名)夫婦は支援団体に通い、依存症について学びながら、回復への道を歩み始めています。

新田拓也さん(仮名)
「ギャンブル依存症者の特徴は、回復のほうに向かう行動を先送りすることだと言われます。1人だと、悪いことばかり考えるんです。妻が私のことをちゃんと見ていて、依存症の知識はありますので、回復には向き合いやすい環境にあると思います。」

ギャンブル依存症からの回復支援を行う田中紀子さんは、ギャンブルのために借金をすることがあれば、依存症が疑われるといいます。もし、家族や周りの人にそうした人がいれば「ギャンブル依存症問題を考える会」などのほか、各地域の精神保健福祉センターに早めに相談してほしいということです。
ギャンブル依存症の実態を少しでも多くの人に知ってほしいと配信しているツイッタードラマは、「ギャンブル依存症問題を考える会」のホームページから見ることができます。ドラマは週に2回、1話ずつ配信され、6月いっぱいで完結します。

「ギャンブル依存症問題を考える会」ホームページ

取材:麓 直弥ディレクター

Page Top