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2020年5月15日(金)

行き場失う 外国人技能実習生

新型コロナウイルスの影響で雇用に大きな影響が出ていますが、日本に41万人いる「外国人技能実習生」も厳しい状況に立たされています。外国人技能実習生は発展途上国の人材育成や日本の技術を伝えることを目的に、国が1993年から受け入れていて、全国各地の農業や建設業などで働いています。

ただこれまで事実上、人手不足の業種を支える「雇用の調整弁」として低賃金で働かせている実態が一部で明らかになるなど、多くの問題点が指摘されてきました。さらにいま、新型コロナウイルスによって状況はより深刻です。仕事や住む場所を失い、強制的に帰国させられるケースも出てきていて、しかも来日に必要な手続きや研修費用などのために、多額の借金を抱えている人が多く、厳しい現実が突きつけられています。

解雇され多額の借金も 相次ぐSOS

4月下旬、都内のNPO※に1人の女性がやってきました。ベトナム人のダオ・ティ・フエンさん(26)です。去年(2019年)7月に来日し、岐阜県の縫製工場で技能実習生として働いていましたが、新型コロナウイルスの影響で会社が倒産。フエンさんは突然解雇されました。ベトナムには、5歳になる息子を残しています。

ベトナム人技能実習生 ダオ・ティ・フエンさん
「来日したばかりで、借金がたくさん残っているのに、もう倒産してしまった。無一文で帰国して多額の借金を背負う、不安です。働ける仕事がほしいです。」

NPO※では、常に10人ほどの技能実習生らを受け入れ、住む場所と食事を提供しています。緊急事態宣言が出された4月以降、その数は急増。また全国からSOSのメッセージも寄せられていて、その数はこの1か月で2,000件にのぼっています。

支援 技能実習生の再就職

NPO法人の代表、吉水慈豊さんは、行き場を失う技能実習生が後を絶たない現状に強い危機感を抱いています。

NPO法人 日越ともいき支援会 吉水慈豊さん
「日本人ですら解雇されているわけだから、技能実習生や留学生っていうのは、さらにその下の立場の子たちだから、いちばん切りやすい。彼らたちは、簡単に強制帰国させられちゃうので。」

いま吉水さんが力を入れているのが、技能実習生の再就職先を探す支援です。受け入れることができる数には限りがあるため、早く次の仕事を見つけることで、1人でも多くの技能実習生を助けたいと考えているからです。

そこで吉水さんが利用したのが、4月に国が示した「特例措置」です。外国人技能実習制度は、例えば一度、金属加工などの製造業で働き始めると、自由に介護や農業など他の仕事に就くことは認めていません。しかし、今回の特例措置により、他の業種への再就職が可能になりました。吉水さんは、SNSなどを通じて技能実習生たちの情報を発信し受け入れてくれる企業を探しています。

吉水さんの呼びかけに応じて、千葉県の介護施設の担当者が寺にやってきました。吉水さんは、人手不足に悩む介護職なら、技能実習生を受け入れてもらえるのではないかと期待しています。

特例措置 専門家が指摘する課題

ただ、この特例措置の課題を指摘する専門家もいます。日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は、「技能実習生の異業種への再就職は、これまで許されておらず、そのため他の業種とのつながりが、そもそも薄い。今回の特例措置が出ても、再就職先を見つけるノウハウがないため、限界がある」と指摘します。

さらに、この機会に外国人技能実習制度を根本から見直すべきとも話します。「人手不足が叫ばれるなか、安い労働力として外国人を“使い捨て”にしていると、日本で働きたいと思う外国人はいなくなる。定着も見据えた制度にする必要がある」。今回の新型コロナウイルスの影響で、より表面化した「外国人技能実習制度」をめぐる問題。どう外国人を迎え、共生していくべきか。私たちに突きつけられた重要な課題です。

取材:上原直大ディレクター
   山内沙紀ディレクター 
   渡辺健太アナウンサー


※6月12日修正しました。

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