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2020年4月15日(水)

新型コロナ 不安抱え働く妊婦たち

先週、ある要望書が厚生労働省に提出されました。全国400人以上の妊娠中の働く女性たちからのもので、国に踏み込んだ対策を求めています。そこには、人との接触が多い現場で働く妊婦たちからの「日々不安が増すばかり」、「仕事を休みたくても休めない」など、悲痛な声が綴られていました。今も働き続ける妊婦は、どんな状況に置かれているのでしょうか。声を上げた人たちを取材しました。

不安抱え働く妊婦たち 現場の実態は

要望書に声を寄せた1人、学童保育の指導員で妊娠5か月の女性です。先月(3月)から小学校が休校になり、学童保育の需要が急増。多くの子どもたちと近くで長時間接することが不安だといいます。

学童保育指導員 妊娠5か月の女性
「学童の現場は忙しいので休めない。ずっと朝から晩まで(子どもたちを)お預かりで、子どもたちも遊びに夢中になってしまうとマスクもとってしまい、密着してくる場面もあります。リスクは高いのかなと思いますね。」

そして、ただでさえ気を使う電車通勤の不安が、さらに増しているといいます。

学童保育指導員 妊娠5か月の女性
「つり革や手すりが、すごく菌が残ると言われているので、そこをつかむのもちょっと怖い。でも妊婦なので、転ぶのも厳禁なのでつかまざるをえない。」

休みを希望しましたが、上司からは「現場の状況を見て判断してほしい」と言われただけでした。

学童保育指導員 妊娠5か月の女性
「現場の今のことを考えると、結局休めない。 胎児への影響も未知数で、最悪の場合、流産するんじゃないか、子どもに障害が残るんじゃないかと思うと、とても不安ですね。」

さらに、よりリスクが高い現場で危機感を感じていたのが、医療機関で働く妊婦たちです。 妊娠5か月の看護師の女性は、勤務先の病院で感染の疑いがある患者が増えているといいます。

看護師 妊娠5か月の女性
「(感染の疑いのある患者と)接触する機会もあるので、感染したらどうしようという不安は常に隣り合わせにあります。 私が抜けてしまったら(病院の)対応が手薄になってしまうというのもあるので、休みづらいというか、働かないとと思う気持ちもありますね。」

そして、自分がもし感染したら出産はどうなるのか、大きな不安だといいます。

看護師 妊娠5か月の女性
「自分がもし(新型コロナに)かかっちゃったら、(出産を)予定していたところで産めなくなる可能性や、拒否される可能性があるんじゃないか。そういうところも不安です。国で妊婦さんの出勤停止を出して(要請して)ほしい。」

妊婦のリスク

新型コロナウイルスに関して「妊婦とそのほかの人で、重症化する可能性は変わらない」とされています。しかし、日本産婦人科感染症学会副理事の早川智教授は次のように話しました。

日本産婦人科感染症学会 早川智副理事
「妊娠中に感染すれば、さまざまなことが起きることもありますし、一定の確率で重症化することもあります。ですから感染しないのが一番ですが、(症例が少ないので)長期的にどうなるかということは傾向を見ていかないと分からない。」

そのうえで早川教授は、妊婦が抱えるリスクについて以下の点を指摘しています。

①一般的に妊婦は「肺炎にかかると重症化する可能性がある」と言われています。子宮が大きくなると横隔膜が持ち上がり、肺を圧迫して血のめぐりが悪くなるなどのことがあるためということです。

②「今後、治療法が限られる可能性」があります。治療薬として期待されているアビガンは胎児の体に影響を与える可能性があり、今後もし使えるようになったとしても、妊婦は利用できません。 このため、選択肢が限られてしまうかもしれないということです。

③海外では「胎児が感染したケース」も確認されています。今のところ新型コロナが直接の原因で赤ちゃんが亡くなったり重症化したりした例は報告されていませんが、まだ症例が少ないため分からないことが多いということです。

さらに感染すると、かかりつけの産婦人科に妊婦検診や出産を断られる可能性があります。その場合、帰国者・接触者相談センターに相談すれば、感染していても受け入れてくれる医療機関を紹介してくれることになっています。

今 求めていること

こうした妊婦への対応として厚生労働省は今月(4月)1日、働く妊婦に配慮するよう雇用主などに要請しました。しかし、その後も事態が改善しないため、妊婦の女性たちによって国に要望書が提出されました。
その要望は、主に2つです。

1つ目は、妊婦を「出勤停止」にしてほしいということです。すでに国は経済団体や団体に、妊婦が休みやすい環境を整備するよう要請していますが、さらに「出勤停止」というところまで踏み込んでほしいと求めています。

2つ目は、妊婦が仕事を休んだ場合の「所得補償」です。現在、子どもの通う保育園などが休園になり保護者が仕事を休んだ際、雇用主の企業などに助成金が支払われることになっていますが、子どもがいる親だけでなく、妊婦にも同じ水準の補償をしてほしいと求めています。

取りうる対策

妊婦側が今すぐにできる対策はあるのでしょうか。
女性の労働問題に詳しい、圷(あくつ)由美子弁護士は、すでに制度としてある「母性健康管理指導事項連絡カード」を使うことができるといいます。雇用主に休みを求めるために、法的な効力を持つカードを提出するという方法です。主治医が妊婦に特別な配慮や休みが必要と診断してその旨を記入すれば、雇用主の側は書かれた内容に沿った措置を講じる“法的な義務”が生じます。つまり、主治医に診断をもらって休業などを訴え出る方法です。カードは母子手帳にも記載があるほか、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

●カードのダウンロードはこちらから
厚生労働省ホームページ「母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について」
※NHKサイトを離れます

今回取材した看護師の妊婦の方の中には、「この非常時に休んではいられない」と働き続ける中で、職場の同僚から「スタッフは替えがきくけど、おなかの子どもの母親はあなたしかいない」と言われ、子どもの命を守るために声を上げることにしたという方もおられました。弱い立場の人を守るための対策が急がれています。

取材:新井直之ディレクター・渡邉侑子ディレクター

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