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2020年4月9日(木)

聴覚障害者 マスクが意思疎通の壁に

新型コロナウイルスの感染防止に欠かせないマスク。実はこのマスクが意思の疎通の壁になっていると悩む人たちがいます。
聴覚に障害がある人たちです。手話や筆談などコミュニケーションの方法はいろいろありますが、マスクによって言葉を読み取るための手段のひとつである口が見えなくなり、大切な情報を理解しづらくなっているといいます。

「口の動きで読み取る難聴者にとっては会話が困難です。」

「買い物や病院へ行くときなど苦労しています。家にひきこもりがちになっています。」

これは聴覚に障害がある人からNHKに寄せられた声です。感染防止のためのマスクで、日常生活に影響が出ていると苦悩を訴えていました。

マスクがコミュニケーションの壁に!?

マスクの有無で伝わり方はどう変わるのか。NHKパラリンピック放送リポーターで、自身も重度の難聴で、人工内耳をつけている後藤佑季さんに聞きました。聴覚に障害のある人の多くはさまざまな情報を元に会話を行っているといいます。

NHKパラリンピック放送リポーター後藤佑季さん
「私の場合は『音』が4割ぐらいで、『唇の動き』が3割ぐらい。『表情』が1割、残りの2割が『文脈からの予測』という形です。」

テレワークが進み、テレビ電話などが活用される場合を想定し、会話をしてみました。

聞き手:「けさは『パン』でしたか?」

後藤さん:「今は母音が『あ』で、最後が『ん』のものだった気がするんですけど、口の動きが見えてないので何と言ったか分からなかったです。」

聞き手:「今度はマスクを取って同じ質問をしてみます。けさは『パン』でしたか?」

後藤さん:「パンを食べました。今回は『パ』と発音するときに唇の上下がくっついたのが見えたので『パン』だと分かりました。」

マスクで唇の動きと表情が見えなくなり、伝わりにくくなっていることがわかりました。たとえ大きな声で話してもらってもマスクによって音がこもり、聞こえにくくなっているため状況は変わらないといいます。

「マスクを外して」とは言いづらい

難聴者の多くが、コミュニケーションを取る上で、表情や唇の動きなどを役立てています。しかし、感染拡大が続く中、マスクによって情報が伝わりにくくなっていることに不安を感じています。

後藤佑季さん
「私ひとりのために感染リスクを冒して、口を見せて下さいというのはなかなか言いづらい状況。マスクがバリアになってるんだっていう事実をいろんな人に知ってもらいたいなと思います。」

聴覚に障害のある50代の女性から新型コロナウイルスへの対応で次のような不安の声が届きました。

女性は、発熱が続き心配だったので「帰国者・接触者相談センター」に連絡しようとしました。しかしサイトに載っていたのは電話番号のみで、必要とするFAX番号はありませんでした。FAX番号を探し出すまで3日かかったといいます。さらに相談センターからは、指定された病院での受診を告げられましたが予約は電話のみだったため、まず予約のために病院に出向き、その後、予約した時問に再び病院に行ってようやく受診できたそうです。潜在化していた問題が、新型コロナウイルスの感染拡大によって表面化してきているといえるかもしれません。

聴覚に障害のある人がスムーズに会話を行うためのポイントのひとつが「筆談と指さし」です。「筆談」は紙とぺンさえあればできます。また、スマートフォンに書いて伝えるのも有効的です。そして「指さし」。病院やスーパーなどでは、指でさすだけで伝わるボードのようなものがあれば、誰でも会話なしでスムーズなやりとりができると思います。これは耳が聞こえる人たちが意識することで、聴覚に障害のある人とのコミュニケーションを深めることに役立つと思います。

実は「耳マーク」というものがあります。聞こえない、聞こえにくいことを知らせたり、このお店は配慮する準備がありますよということを知らせたりするマークです。ぜひ耳マークも活用してもらいたいと思います。こうした現状は、耳が聞こえづらくなってきた高齢者などにも共通する課題です。さまざまな配慮が必要な人が身近にいることを認識することはとても大切なことだと思います。

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