これまでの放送

2020年1月14日(火)

“高度外国人材”として働けない

日本で働く外国人が増え続けています。
その数は、おととし(2018年)の数字でおよそ150万人。
「留学生のアルバイトなど」、「技能実習」についで、いま急増しているのが「高度外国人材」と呼ばれる人たちです。
およそ28万人と、この5年で倍増。
特に増えているのが、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格で、エンジニアや通訳、デザイナーなど、高度な技能が必要な仕事にあたっています。
雇う側の日本の企業は、日本人と同等の給料を支払うことが求められます。
「技能実習」と違い、長い年数の雇用が可能なことが特徴です。

こうした「高度人材」は、日本に欠かせない存在になっている一方で、「高度」ではない仕事に従事させられていたり、仕事に定着しなかったり、といったケースも出始めています。

岡山市にある工場用の機械を設計する会社では、積極的に高度外国人材を雇用し、いまでは従業員の2割近くをベトナム人の高度人材が占めています。

ベトナム人の高度人材 キエンさん
「トイレのふたをつくる機械を作っています。」

こうした「高度人材」は、人手不足に悩む地方の中小企業などでは貴重な戦力です。

機械設計会社 野田誠取締役
「日本人の新人をベトナムのベテラン社員が教える時代ももう間近かなと思います。
いまではもう切っても切れない存在です。」

ところが、「高度外国人材」が、想定されていない仕事に従事させられるケースも起きています。
3年前に高度人材としてベトナムから来日した男性は、ベトナムの大学でバイオテクノロジーと経営学を学び、高い専門性を持った高度人材として来日しました。
畜産や食肉加工を手がける会社に就職が決まり、当初は、肉の品質を左右する飼料の管理部門を任されると聞いていました。

ベトナム人の男性
「飼料の品質管理の仕事だと言われました。
面白そうな仕事なので日本へ行こうと思いました。」

しかし、実際に任されたのは牛舎の片付けや餌やりなどでした。
専門知識を活かした仕事をさせてほしいと訴えましたが、聞き入れられず、1年あまりで退職しました。

ベトナム人の男性
「技術は学べませんでした。
日本に何年いられるかわかりませんし、希望の仕事ができるまで何年もかかるのは無駄だと思いました。」

ベトナム人労働者の就職を支援しているこの会社には、同様の訴えが、全国からSNSなどを通じて複数寄せられています。

「建築の設計者なのに現場で単純な土木作業をしている。」

「自動車整備の技術があるのに、倉庫の整理ばかりだった。」

「申請された仕事と実際にやっている仕事が違う。」

「私たちはとても不安です。」

本来、高度人材に、専門分野以外の仕事をさせることは法律でできません。
制度を管理している出入国在留管理庁も、こうした事態を問題視しています。

広島出入国管理局 髙島唯吉統括審査官
「定期的な立ち入りや巡回をしたいと思っていますが、我々も人員に限りがあります。
審査を厳格化していくというようなことも検討しております。」

企業側と働く側の考えがかみあわず、高度人材が定着しなかったケースもあります。
金属加工を手がける会社では、「高度人材」が相次いで離職するという事態がおきました。
この会社では、ベトナム人2人に高度な金属加工をしてもらおうと雇用しました。
入社から半年あまりの間、完成品の点検や機械の清掃などをしてもらい、金属加工の仕事も教え始めていたところでした。

この会社がすぐに高度な仕事をさせなかった理由について、文書で取材に応じました。

「専門用語を含む言葉の聞き取りおよび状況を理解してもらうことが必要でした。
当人がなかなか仕事をさせてもらえないと感じていたようであれば誤解であり、残念に感じております。」

金属加工の仕事は、十分な日本語力が身についてから本格的に始めてもらう予定でしたが、企業側の考えは伝わりませんでした。

ベトナムで高度人材をあっせんする会社では、日本の企業との情報のやりとりは十分ではないと言います。
募集の段階では、日本企業からは、仕事の詳しい内容や、どの程度の技能が必要なのかなど、知らされないことがあるといいます。

高度人材のあっせん会社 レ・ティ・ニュンさん
「日本企業から渡された情報が不正確だったり不十分だったりしても、ベトナムの斡旋会社としては、応募者にそのまま仕事の内容を説明せざるをえないのです。」

高度な仕事に就くはずの外国人が、高度とはいえない仕事をさせられるというのは残念な状況です。

その背景には、高度人材が急速に増えている実態があります。
高度人材は、この5年で28万人と倍増していますが、中でも増えているのが、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の高度人材で、人手不足に悩む地方の中小企業がエンジニアなどとして、雇うケースが増えています。
働く側は日本で働きたいという気持ちが強く、雇う側も人手不足に悩まされているという中で、お互いに求めるもののすりあわせが十分でないというケースが起きています。
中には、最初から単純労働をさせる目的で高度人材を入国させ、本来とは違う仕事をさせるといった悪質なケースも出てきています。

では、「高度人材」に本来の働き方をしてもらうにはなにが必要か。
まずは、悪質なケースを防ぐために、入国後もきちんと申請どおりの仕事を行っているか、行政が定期的な立ち入りや巡回などを通じて、確認することが必要です。
企業でも、業務内容を丁寧に説明して働く側と意思の疎通をはかることがよりいっそう重要になります。
高度人材をめぐっては、世界中で人材獲得競争が激しさを増していて、「高度人材」に選ばれる国になるためにも、企業、行政がともに受け入れ態勢を整備していくことが求められています。

Page Top