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2020年1月9日(木)

写真家 越智貴雄さん

シリーズでお伝えしている「2020インタビュー」。
今回は、20年にわたってパラアスリートを撮り続けてきた写真家の越智貴雄さん(40歳)です。
越智さんが撮ったこの写真は、東京オリンピック・パラリンピック招致の最終プレゼンテーションで紹介されて、世界から注目された一枚です。
越智貴雄さんの撮影方法は独特です。
限りなく低いアングルからシャッターを切るスタイルは、パラアスリートからは“オッチー撮り”と呼ばれています。

保里小百合アナウンサー
「撮り方、特徴的ですよね。」

写真家 越智貴雄さん
「選手たちから、オッチー撮りって言われています。
寝そべって撮ると迫力が増しますし、格好よさが増すと思っています。
選手たちの格好いい瞬間を切り取るためには、ポジショニングはものすごく大事です。」

写真家 越智貴雄さん
「選手たちのぶつかり合うときの声とか、床から伝わってくるんです。
車いすと一体となっていると言ったらいいんですかね。
血が通っているように見えるんですよ。」

越智さんがパラスポーツに出会ったのは、2000年のシドニーパラリンピックのときでした。
新聞社から頼まれて撮影を引き受けたものの、最初は、ためらいを感じていました。

写真家 越智貴雄さん
「相手が写真を撮られて、どう思うんだろうみたいな。
障害のある人イコールかわいそうな人、頑張っている人というような。
いま考えれば、勝手に自分の中で作りだした壁であったり、先入観以外のなにものでもないんですけど。
やはり知らなかったんですね。
障害のある人に、それまで接したこともほとんどなかったので。」

しかし、その「先入観」は、大きく変わりました。
選手たちの躍動する姿に圧倒され、夢中でシャッターを切った越智さん。
なかでも印象に残っているのが、この1枚です。

陸上400メートル、視覚障害のクラスに出場したポルトガルの選手が、ゴールしたあと、一緒に走った伴走者と抱き合った瞬間です。
いままでにない感動が越智さんに湧き上がりました。

写真家 越智貴雄さん
「絆ですね。
伴走者と一緒に共に戦ってきた二人の絆みたいなものが感じ取れたので、これはもう撮らなければとシャッターを切りました。
この4年間にどんなストーリーがあったんだろうなと、思いをはせながら。」

保里アナウンサー
「人生を変えるような出会いだったんですね。」

写真家 越智貴雄さん
「まさにです。
今の今でも、シドニーパラリンピックが僕のベースになってるんですけど、知らないことを知ることで、本当に世界が広がったと感じています。」

パラスポーツの世界に引き込まれて20年。
東京パラリンピックにむけて、越智さんは年に300日以上取材に出かけています。
最近、越智さんは、選手だけでなく、まわりの人たちの変化も記録しようと心がけるようになりました。

去年(2019年)12月、沖縄の大宜味村に取材にいったときのことです。
撮影したのは、パラカヌー日本代表の瀬立モニカ選手、22歳。
5か月間滞在するモニカ選手のために、大宜味村の人たちが合宿場所にスロープを作ってくれました。

写真家 越智貴雄さん
「モニカさんとのつながりだと思うんですけど、本当に自然と、モニカさんが困ってることに対して、村の人たちが『じゃあこれやろう』『あれやろう』みたいな感じで動いていって、大宜味村自体が、変わっていくような瞬間を見られたのが、僕の中では興味深くて。」

保里アナウンサー
「知ることで世界が広がるということが、この沖縄の村でも、まさに起こっている。」

写真家 越智貴雄さん
「まさに起こっていることだと思いますね。
『障害』や『福祉』という言葉だと、どうしても壁があるような、何かしなければいけないといったところもあると思うんですけど、パラリンピアンたちを見ていたら、やっぱり、対“ひと”なんだなと。そこから始まることって、すごく大きいんじゃないかなと思います。
それを多くの人に伝えていきたいなって。」

さて、越智さんにとっての2020とは何か、書いてもらいました。

写真家 越智貴雄さん
「“結ぶ”。
パラアスリートを写真で表現するのはもちろんなんですけど、いま社会で起こっているいろいろな事象、そのポジティブなループが回り始めたところだと思うんですよね。
それをしっかり記録することによって、未来の人に向けて、結ぶような役割ができたらなと。
しっかりと記録して、それを結ぶ。
自分への発破をかける思いも込めています。」

20年、パラアスリートを撮り続けてきた越智さんでも、いまなお新しい発見があると言います。
越智さんの“オッチー撮り”、低い姿勢からレンズを向けてきたことが、パラアスリートへの温かいまなざしにつながっていました。

越智さんの写真とコラムは、NHKのサイトでも見ることができます。

東京2020パラリンピック
越智貴雄 感じるパラリンピックGallery

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