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2020年1月7日(火)

スポーツクライミング 野口啓代選手 “現役最後の五輪にかける”

東京オリンピック・パラリンピックに熱い思いを寄せる皆さんに話を聞く2020インタビュー。
第2回はスポーツクライミングの野口啓代選手、30歳です。
スポーツクライミングの種目のひとつ、ボルダリングで、ワールドカップ総合優勝4回を誇る”レジェンド”で、東京五輪の出場は内定しています。
東京五輪を最後に引退することを決めている野口選手に、現役最後の1年にかける思いを聞きました。

鮮やかなネイルの裏に“努力の証”

インタビューに先だって見せてもらったのが、野口選手の指先です。
モットーは「どんなときもおしゃれでいること」。
競技をしているときも鮮やかなネイルをしていることが評価され、去年は芸能人と一緒に「ネイルクイーン」に選ばれました。

野口啓代選手
「いつも登っているとき自分の爪や手が視線に入るんですけど、そのときにネイルが赤いと頑張れて、テンションが上がる。」

その鮮やかなネイルの裏にはクライマーとして長年戦い続けてきた“努力の証”が刻まれていました。

野口啓代選手
「登りこんでいるので、指先の皮がなくなったり内出血っぽくなっている。」

壁に登り続けること、20年。
ときに全体重を支える指先の指紋はほとんど消えていました。

豊原アナウンサー
「野口さんは、いよいよことし五輪に臨まれるわけですけど、特別な思いはありますか?」

野口啓代選手
「オリンピックの決勝の日は、私の競技最後の一日で最後のトライになると思うので、これまでやってきたことを全て出し切りたいなと思っているし、周りの皆さんは(私の現役生活)最後の競技だなという目で見てくれると思うので、周りの期待もそうですし、自分自身の期待も想像を超えていきたい。」

クライマー人生を支えてきた信念

野口選手は、スポーツクライミングの歴史を切り開いてきました。
11歳で競技を始めると、16歳で日本一。
19歳で日本の女子選手初のワールドカップ優勝を成し遂げます。
競技人生を支えてきたのはある信念です。

野口啓代選手
「きれいに登るとか、かっこよく登るとかよりも、とにかくその課題を一回目で登り切れるかどうか。
『一撃』できるって、その課題より能力が勝っていないとできないと思うので、すごく実力が試されると思います。」

壁を1回目のトライで登り切る「一撃」。
達成できれば成績で有利になり、体力も温存できます。
一方で、ルートを一瞬で見極める判断力。
そして体を自在に操る筋力と技術が問われます。
野口選手は、世界の誰よりも多く壁を登ってきたと自信があるからこそ「一撃」に強い思いを抱いてきました。

野口啓代選手
「登っているときのイメージ、オブザベーション(壁を下見する)能力は全部、経験値。
“この課題は自分の得意そうな動きだな”とか、“嫌な持ち方の(持ちにくい)ホールドだな”というのは、もうパッと見た段階で分かるので。」

けがからの復活 支えたのは“東京五輪”への思い

5年前、野口選手をアクシデントが襲いました。
練習中に左足のじん帯を痛めたのです。
思うように体が動かなくなり、「一撃」の確率が低下。
ワールドカップは2年間勝てませんでした。

野口選手を支えたのは、初めて実施されることになった東京五輪に出場したいという思いでした。
  
野口啓代選手
「結局は自分がオリンピックに出たいかどうかが大切で、(スポーツクライミングにとって)初めてのオリンピックが東京で行われるので、これまで応援してきてくれた人たちの前でいいパフォーマンスをしたいなとか。
あと4年、2020まで頑張りたいと思えるようになった。」

東京五輪で「一撃」を達成するため、野口選手はトレーニングを一から見直しました。
新しいトレーナーのもと、これまで目を向けてこなかった足の裏や付け根など細かい筋肉を徹底的に鍛え、思いどおりに動く体を取り戻そうと考えたのです。

去年8月、野口選手がクライミング人生をかけた大会がありました。
東京五輪の出場権をかけた世界選手権です。
五輪出場を逃せば引退する覚悟でした。

「一撃」を目指したボルダリングの第1課題。
終盤に難関が待ち受けていました。

厚みのあるホールドに左足をかけようとしますが、足が十分にあがりません。
そこで野口選手はとっさの判断で足先ではなくひざをホールドにかけました。
長年培った経験によるひらめきと、鍛え直した体が反応したことで、全選手の中でただひとり「一撃」に成功したのです。

野口啓代選手
「登っていく中で足が上がらないから、ひざを上げちゃえみたいな。
その瞬間にやっぱりひらめいた感じですね。」

東京五輪の代表に内定した野口選手。
涙をこらえることができませんでした。

五輪イヤーの2020年。
野口選手はどんな1年を思い描いているのでしょうか。

野口啓代選手
「2020年は、私のクライミング人生、集大成の年。
一番最高の成績は全ての課題を『一撃』で全部登ること。
(東京五輪が)最後の一戦だと思うので、ここまでのいい大会、悪い大会とかいろんな思いがあるが、その集大成がその日にすべて発揮できたらいいと思う。」

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