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2019年12月6日(金)

電気や水道… マンション“在宅避難”の課題

首都直下地震が起きたとしても、新しいマンションは耐震性が高く倒壊のおそれは低いとされています。
このため東京都では、可能なかぎり、避難所に行くのではなく、「在宅避難」をするように呼びかけています。
しかし在宅避難には課題があります。
住民は、電気や水道などライフラインが途絶えたマンションで避難生活を送る可能性が高いのです。

電気や水道が止まったら… マンション“在宅避難”の課題

東京・港区にある42階建てのタワーマンションです。
3棟に、あわせて5,000人が入居しています。
先月(11月)、在宅避難に備えた防災訓練が行われました。
マンションの自治会の防災部長・中嶋信行さんは、この日行った炊き出しの訓練で、課題を見つけました。

マンション自治会防災部長 中嶋伸行さん
「これで300人分。
全住民5,000人いますので、全く足りないです。」

「基本的には、救助物資はないと思って下さい。
あったらラッキーくらいのものですので。
皆さん、自宅で1週間、生活できますか。」

さらに大きな課題はライフラインが途絶えたときの対策です。
このマンションでは、地下に大型の非常用発電機を整備しています。
しかし、7時間しかもちません。
停電が長期化すると、エレベーターも停止し、住民は階段での移動を強いられます。

また水の備蓄は、2リットルのペットボトルを6,000本。
住民5,000人、全員に配ったとすると、1人1~2本が限界です。
しかもこれ以上、保管スペースはありません。
マンションのプールの水を浄化して使うなどの検討も進めていますが、自治会だけで行う備えには限界を感じています。

マンション自治会防災部長 中嶋伸行さん
「エレベーターも電気も水もないタワーマンションで人が住めるのか。
大変なことになると再認識しました。
僕たちが何かをやる、準備をやるのではなくて、住民がそれに向けて、自分たちの家庭を守る、近所を守るというふうにしていかなければ。」

在宅避難をするために、どんな準備をしておけば良いのでしょうか?
東京都は、飲み水や食料、簡易トイレなど、最低でも3日分、できれば1週間分、備蓄することをすすめています。

たとえば「水」はひとりあたり1日、3リットル必要とされています。
家族4人で1週間分となると、2リットルのペットボトルで42本となります。
ただすべてを、災害用にする必要はありません。
ふだんから日持ちのする飲み物や食料を、多めに買い置きしておく方法もあります。
賞味期限が近づいたものから使って、その分を買い足しておくことで、結果的に備蓄になります。
そしてライフラインが復旧したとしても、マンションの住民が直面する大きな課題がもうひとつあります。
マンションの修繕です。
建物に被害がでたとき、修繕するには住民の総会を開いて費用などについて合意する必要があります。
しかし東京で増えている大規模なマンションになると、この総会を開くことさえ難しいという深刻な実態があります。

マンション修繕に課題 住民合意はできるのか?

先月開かれた、マンションの管理組合の理事長たちの勉強会。
地震後の対策を検討するなかで、住民に連絡を取って総会が開けるのか、不安の声が出ました。

マンション勉強会参加者
「住んでるけど応答しないって場合ないですか?」

「総会の出欠も出さないし、インターホンならしても反応しない。」

「総会が成立しない可能性がある。」

3年前の熊本地震で、この課題に直面したマンションがあります。
12階建て、およそ40世帯が暮らしています。

廊下の壁などに亀裂が入り、「一部損壊」と認定されました。
保険などでまかなえない修繕の費用は、全世帯で負担。
1世帯あたりの金額は150万円でした。
管理組合の理事長・奥田俊夫さんは、総会を開き、修繕にむけて住民の合意を得ようと考えました。
しかし当時は、マンションを離れて避難生活を送る人もいました。
連絡をとって住民を集めるだけでも苦労したといいます。
ようやく総会を開き、住民の合意を取り付けることができたのは1年後のことでした。

マンション管理組合理事長 奥田俊夫さん
「決定するためには合意の形成、これがいる。
そのためには居住者の方たちのコミュニケーションがないと先に進まない。
そこのところはちょっと苦慮しましたね。」

できるだけすみやかに住民が合意するために、今のうちからできることはあるのでしょうか。
長年、被災マンションの問題を研究している専門家は、つぎの2つをポイントにあげています。

ひとつめは「住民の連絡先リストを作る」ことです。
個人情報の問題などもあって、リストがないマンションも多いのが現実です。
ひとたび地震が起きて住民の連絡先が分からないと、総会を開いて、住民の合意を得るという段階まで行くのがより難しくなります。このため、事前に作っておくことが重要になります。

ふたつめは「積立や保険」です。
都内でも老朽化に備え修繕金の積立をやっているマンションは多いですが、地震に備えたものではありません。
地震で壊れた時のための積立をしたり、管理組合で地震保険に加入をしておくといいといいます。

首都直下地震では多くのマンションに何らかの被害が出る可能性が高いとされています。
東京ではタワーマンションなどの大規模マンションが相次いで建設されているだけに、問題が深刻化する前の、今のうちから考えておく必要がありそうです。

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