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2019年12月2日(月)

就職氷河期世代 “経験を強みに”新たな可能性

バブル崩壊後の就職難の時代に社会に出た、30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」。
当時は就職先が決まらないまま卒業を迎えた人が、毎年10万人前後もいました。
ことしが2万人あまりなので、5倍にあたります。
今でも、50万人ほどが非正規での就労を余儀なくされていると見られています。
こうした中、兵庫県宝塚市は、全国に先駆けて、この世代を対象に正規職員を採用する取り組みをはじめ、先月4人を内定しました。
採用の舞台裏から見えてきたのは、就職氷河期世代ならではの経験が「強み」になる可能性です。

“就職氷河期世代”正規職員で採用

ことし9月、兵庫県宝塚市で行われた就職氷河期世代の採用試験。
3人程度の募集に対して、全国から1600人を超える受験者が殺到しました。

受験者
「大学時代のときはエントリーシートを出しても、面接にすら行けないというのが続いていた。」

「派遣などが多くてなかなか安定していなかったので、応募させていただいた。」

非正規から抜け出したい“氷河期世代”の挑戦

受験者のひとり、木村直亮(なおあき)さん。
木村さんは、関西の有名私立大学の在学中、100社あまりに応募しました。
しかし、内定を得ることができず、アルバイト生活を送ることに。
その後、サービス業を中心にさまざまな仕事を経験してきました。

不安定な雇用から抜け出すため、30代半ばから目指したのが、資格の取得です。
労務管理の専門職である「社会保険労務士」。
就職難に苦しんだ自らの経験も役立てたいと考えました。

木村直亮さん
「社会に出ても自分をアピールするようなスキルがないとしんどいと思っていたので、人の役に立つような知識なりを身につけたいと思った。」

木村さんは休日の大半を勉強に費やし、合格率わずか7%の試験に合格しました。
専門知識を生かし、労務サポートの職に就いた木村さん。
仕事にはやりがいを感じていますが、雇用形態は非正規のままです。

木村直亮さん
「今の仕事はどうしても1年更新ですので、年が明けたくらいから毎年憂うつな思いをしながら、何かいい仕事ないかなと探していた。」

そうした中で挑戦した、宝塚市の採用試験。
さまざまな業界での実務経験と専門知識を身につけてきたことをアピールし、最終試験に残りました。

11月14日。
宝塚市から合否を知らせる通知が届きました。
最終的な倍率は400倍。
木村さんは、合格しました。

木村直亮さん
「合格して終わりではないので、今度は実際に働いて、市の発展とか市民に役立つ仕事をしていかなくてはいけないので、それを期待されていると思うので、今度また頑張っていこうと思います。」

採用試験から見えてきた“氷河期世代”の強み

もともとは、就職氷河期世代の雇用支援を目的に始まった、宝塚市の採用試験。
グループワークや面接による選考が進む中で、採用担当者は、この世代ならではの「強み」に気づき始めました。

試験後に行われた選考会議では、こんな意見が出ました。

採用担当者
「いろいろな経験をしている面では、ひとつの仕事をしているよりも強い面がある。」

「福祉とか子育て施策だったり、実体験に近い経験をしている方が多いので、市役所の仕事とマッチしやすい人も多いかな。」

宝塚市は、当初の予定よりも採用枠を1人増やし、4人に内定を出すことにしました。

正規雇用を目指して望みつなぐ“氷河期世代”

今回、採用には至らなかったものの、自分の強みをいかして、もう一度正規雇用を目指そうとしている人もいます。
吉田洋子さんです。
新卒時に200社以上に応募したものの、内定を得られなかった吉田さんは、留学を決意。
アルバイトをしながら3年間カナダで生活し、英語力とビジネスの知識を磨きました。
帰国後も正規雇用の職に就くことはできませんでしたが、旅行代理店や大学の職員など、語学力をいかした実務経験を積んできました。

吉田洋子さん
「非正規はいつ切られるか分からないから必死でやっていた。
言われた以上にやっていたと思う。
頑張っても報われないのは分かっているが、頑張らなければ終わりというのはあった。」

70代の父親と弟の3人で暮らしている吉田さん。
家族や自分の将来を考えると、不安は消えません。

それでも、今回の採用試験を受けたことで積み重ねてきた努力や経験が報われる可能性を感じるようになったといいます。

吉田洋子さん
「今回ダメだったことによって、すごく得るものは多かった。
心の面で多かった。
いままで(非正規を)抜けられるすべがことごとく無かったので、今回試験を受けさせていただいて、(いつかは)自分の手でチャンスをつかめるかなとは思います。」

政府は、「就職氷河期」世代で、正規雇用で働く人を3年間で30万人増やす方針です。
さらに、人材不足に悩む民間企業からも、この世代を採用する動きが出始めています。

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