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2019年11月26日(火)

“IR経済効果 ”に期待 本格化する誘致活動

カジノのほかにショッピングモールやホテル、劇場、レストランなどがあるIR=統合型リゾート施設。
去年(2018年)、IRを整備する法律ができたことで、誘致に向けて自治体や企業などが活発に動き出しています。
注目されているのはIRがもたらす経済効果です。

日本初のカジノ“IR”誘致 経済効果に期待する大阪

全国でもいち早くIR誘致へと動き出しているのが大阪府と大阪市です。
先月(10月)、IRを体験できるイベントが開催されました。
きらびやかなショーや、カジノの体験コーナーが用意され、4日間で4万人が訪れました。

大阪が狙うのは、2025年の万博会場に隣接する、埋め立て地への誘致です。
経済波及効果は建設時点で1兆2,000億円。
さらにカジノの売上には高い税金がかけられ、大阪府は年間で570億円の税収が入ると見込んでいます。

吉村洋文 大阪府知事
「世界最高水準のIRをぜひ実現して、大阪経済の成長を果たしていきたい。」

ビジネスチャンスを逃すまいと、企業も動きだしています。
こちらは、カジノのディーラーを養成する専門の学校です。
大阪ではIRの開業によって8万8千人の雇用が生まれると試算しています。

ディーラー養成学校 担当者
「ディーラーというポジションは1つのカジノで大体2,000人くらい必要になっています。
今後もたくさんのディーラー希望者を受け入れられるように、規模を拡大していきたいと思います。」

政府がIRの整備を認めるのは全国で最大3箇所。
カジノの運営会社は、大きな収益が見込める地域の自治体と手を結ぼうとしています。
ラスベガスなど世界各地でカジノを運営する最大手、「MGMリゾーツ」は、すでに大阪に事務所を設置。
大阪IRを成功に導けると自信を深めています。

カジノ運営会社 MGMリゾーツ ムーレン会長
「大阪は3つの空港やすばらしい鉄道網、交通システムがあり、魅力的な国際拠点になると考えています。」

しかし、ことし(2019年)8月。
横浜が誘致を表明したことで様相が変わりました。
大阪に意欲を示していた複数の会社が相次いで撤退し、横浜での事業に注力すると明らかにしたのです。

カジノ運営会社 サンズ 担当者
「(大阪に)投資すべきではないという結論に至った。」

ほかにも首都圏からは東京や千葉が誘致を検討しています。
誘致を巡る競争が激しくなることについて、知事は…。

吉村洋文 大阪府知事
「当然ライバルは多いですけど、その中で勝ち残っていける、トップランナーとしてやってきたという自負があるし、認定してもらえるようにこれからもやっていきたい。」

今後のスケジュールは?

いまIR誘致の動きが活発になってきているのは、スケジュールが大きく影響しています。
今年9月に国はIRの基本方針案を公表。
来年(2020年)1月にはIRの審査やカジノの免許を交付する国の「カジノ管理委員会」が発足します。
IRを誘致したい自治体から国への申請期間は2021年1月から7月まで。
それまでに各自治体はどの企業と手を組むかを決めなければならず、具体的な計画をつくる調査のための予算も組む必要があります。
今動かないと間に合わないという切迫感が自治体や企業の背中を押しています。

いま東京、横浜、大阪など8つの地域が、国への申請を予定、または検討しているとしています。
地元経済を活性化しようと誘致を目指すのは大都市だけではありません。

北海道 地元に利益は?

自動車、製紙などの製造業を中心に発展してきた苫小牧市。
今後は人口減少が見込まれ、新たな産業を作り出すことが求められています。

IR建設を予定しているのは、森に囲まれた自然豊かな場所です。
狙いは外国人観光客の増加。
市は自治体全体で年間最大140億円程度の税収増を見込んでいます。
これは市の年間の税収の50パーセントを越える額です。

岩倉博文 苫小牧市長
「外国人観光客とどう向き合うかは非常に重要な産業テーマになってくる。
そのなかでIRという装置は北海道に必要だと私は考えていて、そうしないといずれジリ貧になる。」

これに対して、治安の悪化やギャンブル依存症への懸念が根強く、さらに、地元への経済効果を疑問視する声もあります。
また海外のIRに詳しい専門家によると、IRの地元の町が発展するどころか逆に衰退しているケースもみられるといいます。

静岡大学 鳥畑与一教授
「IRはお客さんをIRの中に閉じ込めて、そこで消費をしてもらうビジネスモデル。
周りの既存のホテルや商店街がつぶれ、失業者が生まれていく。
マイナス面の方がずっと大きいと指摘される。」

IRを誘致すべきか否か。
住民投票を求めるグループも発足しています。
協力者を募って、住民投票に必要な有権者の4分の1、およそ3万6,000人分の署名をあつめ、IRについて住民の意思で決めたいとしています。

住民グループ代表
「将来何か後悔を残すことになるのではないかという思いもありますので、一人でも多く町の将来について考えて、結果を出すという方向で進めていけたらと思っています。」

今後も利害調整が続く

苫小牧市の場合は手続き上、北海道知事が誘致するかどうかを決め、国へ申請することになっているものの、北海道議会でも賛否が割れていて知事も判断を決めかねています。
どこの自治体でも、住民や議会の賛否、企業の協力、国との関係など複雑な利害関係を調整しなければなりません。
1年2か月後の2021年1月には申請受付の開始が迫るなかどう調整をはかるのか、各地で賛成・反対を含む議論が激しくなりそうです。

取材:種川次郎(NHK室蘭)

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