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2019年11月19日(火)

台風19号で甚大な被害 進まぬ復旧 ローカル線が危機

台風19号は、各地を走るローカル鉄道にも深刻な被害を与えました。
その1つが「阿武隈急行」です。
福島駅と宮城県の槻木駅を結ぶ、全長54.9キロの第3セクターですが、今回、県境の山間部を中心に土砂崩れなどが起き、宮城県側は全線で運休が続いています。
その復旧にはローカル線ならではの問題が立ちはだかっています。

復旧は 台風19号で甚大な被害 岐路に立つ阿武隈急行

土砂や倒木で覆い尽くされた線路や土台が流され、宙に浮いたレール。
宮城県と福島県を結ぶ「阿武隈急行」は今回の台風で、山間部にある丸森町を中心に、大きな被害を受けました。

社長の千葉宇京さんは、技術的に工事が難しい場所も多く、8年前に受けた東日本大震災の時より被害は深刻だといいます。

阿武隈急行 千葉宇京社長
「全く手に負えないというのが至るところにある。
もう本当に、さんたんたる状況だと思います。」

今回、被害が出たのは、およそ50か所。
再び大雨が降った場合、土砂が流れ込む危険性があります。
このため、線路の復旧だけでなく、周辺の土砂崩れを防ぐ安全対策なども合わせて必要になります。

復旧への大きな課題、それは「費用」です。
今回、復旧にはおよそ10億円がかかると見込まれています。
現在の制度では、復旧費用の負担は「国」と「地方自治体」が4分の1ずつ。
半分は鉄道会社が負担しなければなりません。
今回の場合だと阿武隈急行は、およそ5億円を負担することになります。
しかし、阿武隈急行は3年連続赤字経営が続き、復旧費用を負担する余裕はありません。
このため、会社からの要請を受けて、宮城県は国に鉄道会社の負担の割合を引き下げるよう求めています。

第3セクターとして運行を始めて30年あまり。
阿武隈急行は、車を運転できない学生や高齢者にとって、貴重な地域の交通手段となってきました。
台風の後、代行バスを運行していますが、電車ほどの頻度では運行できず、住民からは早期の復旧を求める声が相次いでいます。
会社では、まずは利用者の多い平野部の区間から運転を再開させる方針ですが、全線での復旧はいまだ見通せていません。

阿武隈急行 千葉宇京社長
「単に元の形で復旧すれば、それでいいのかと。
それとは別次元で考えていかなければならない。
阿武急の経営にとっても非常に切実な課題だということです。」

       

災害のたびに被害 どうする?ローカル線

実は過去の災害をふりかえっても、廃線や一部の区間で運休が続いたままのローカル線が全国各地にあります。
宮崎県の高千穂鉄道や、岩手県のJR岩泉線は廃線となり、3年前の熊本地震の南阿蘇鉄道や、2年前の九州北部豪雨のJR日田彦山線はいまだに一部区間で運休が続いたままです。
復旧に向けた最大の課題は、お金をかけて復旧させても、赤字体質が変わらなければ結局は借金が積み上がるだけということです。

この問題を考える上で参考になる事例があります。
新潟県と福島県を結ぶJR只見線です。
只見線は、2011年の豪雨災害から一部区間で運休が続いています。
当初、JR側は運行をバスに転換する案を示しましたが、住民側と話し合いを重ねた結果、2年後、2021年度の再開を目指すことになりました。

このときに用いられたのが、「上下分離方式」というやり方です。
維持・管理に費用のかかる線路などのインフラを「自治体」が保有し、列車の運行をJRが行うというもので、鉄道会社側の負担を軽減することで、運行再開に道筋をつけました。

さらに、ローカル線の経営にくわしい専門家は、「ローカル線が社会インフラや地域資産としてどういう価値があるか、鉄道会社だけでなく地域住民も一緒に考えていくことが大事だ」と話しています。
ローカル線は、地域住民にとっての交通手段としてだけでなく、外から人を呼び込むための、いわば「資産」としての側面もあります。
今後も大規模な災害が予想される中、鉄道を社会インフラや地域資産としてどう位置づけるか、地域住民も一緒になって考える必要があると思います。

取材:川田陽介記者(仙台放送局)

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