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2019年11月17日(日)

就職氷河期世代を正社員に 就労支援のカギは「自信」

バブル崩壊後、新卒の就職状況が厳しかった時期に社会に出たいわゆる「就職氷河期世代」。
いま、正社員になりたいのに非正規での就労を余儀なくされている人はおよそ50万人いると見られています。
しかし、人手不足が深刻化する今、この就職氷河期世代に、注目が集まっています。
この機会に正社員としての採用を増やそうと、就職氷河期世代に特化した就労支援をはじめた埼玉県の取り組みに密着しました。

就職氷河期世代を正社員に 始まった就労支援

おととい(15日)、埼玉県で行われた合同企業説明会。
企業の担当者たちの熱心に声をかける姿がありました。

物流業
「未経験の方でも全然いけると思います。」

飲食業
「もしよかったら、ぜひ面接だけでも。」

この説明会は「就職氷河期世代で、正社員になりたい人」だけを対象にしたもので、81の企業が参加しました。

水道施設の整備業
「人が足りないので、ひとりでも採用できればいいかなと思っています。」

「就職氷河期世代」は223人が集まりました。

参加者(37歳)
「仕事がないと、やりたいことが何もできないですし、仕事ができたら明るくなれると思います。」

説明会を企画したのは埼玉県雇用労働課です。
地元の企業と、非正規などの若者をマッチングさせる取り組みを行っています。

企業の人手不足をうけてことし始めたのが、「30代、40代でも大丈夫正社員になろうプロジェクト」です。
これまでは採用されにくかった就職氷河期世代に限定して、説明会や研修などを開いて支援することにしたのです。

埼玉県 雇用労働課 石井順子さん
「企業側の声として“40代でもまだあと20年は働いてもらえる”といった、数年前までは聞けなかったような話が人事担当者の方から聞けるようになったんです。」

県では、説明会に向けて8月から、就職氷河期世代を対象にした研修を行ってきました。
独自のカリキュラムを用意し、「社会人としてのマナー」から「社内での人づきあい」まで徹底的に指導します。
カリキュラムで特徴的なのが、心理療法をもとにしたメンタルトレーニングです。

説明する講師
「『諦めが悪い』を言いかえると、『いちず』とか『粘り強い』となります。」

「怒りっぽい」や「きびしい」など、ネガティブなことばを、大きく意味を変えずにポジティブなことばに言いかえる練習です。

講師
「『いいかげん』は?」

参加者
「おおらか。」

講師
「『甘えん坊』を言いかえるとどういう言い方になりますか?」

参加者
「おねだりが上手い。」

研修は全部で15時間。
長年の経験で染みついてしまった考え方を変えようというねらいです。

埼玉県 雇用労働課 石井順子さん
「必要以上に自信を失っているといいますか、“正社員になれるわけがない”と決めつけてしまっている人も多いんです。
そうした不安を払拭するねらいです。」

参加者のひとり、齋藤高広さん(39)は高校を卒業したあと、地元の中古車販売会社に就職できましたが、体調を崩し数か月で退職。
その後はずっと正社員になれず、負い目を感じてきました。

齋藤高広さん
「年下の人がどんどん正社員になっているのに、自分は非正規のままだったので、自分のダメさとか焦りが焦りを呼んで、どんどん落ち込んでいっちゃうんです。」

研修では、自分が経験してきたことに自信をもつようアドバイスも行います。

講師
「なにをやっている時に生きがいを感じましたか?」

齋藤高広さん
「接客は楽しかったですね。」

講師
「人と接することが好きなんですね。
接客の中でもなにが楽しかったですか?」

齋藤高広さん
「お客さんたちに感謝されることですかね。」

講師
「なるほど。
じゃあ、接客は得意なんですね。」

毎週、欠かさず研修に参加するうち、齋藤さんは正社員として働くイメージが湧いてきたといいます。

齋藤高広さん
「僕たちにもチャンスがめぐってきたなと思います。
前向きになって高い目標を立てるのは、恥ずかしいことじゃないと思えるようになりました。」

そして、企業説明会当日。
3か月の研修を経て、人に接する仕事が向いていると感じた齋藤さん。
飲食や介護などに狙いを絞って話を聞くことにしました。

齋藤高広さん
「飲食店で働いた経験がないんですけど、研修していただけるんですか?」
「中途採用の方も御社にはいらっしゃるんですか?」

担当者
「はい、いらっしゃいますよ。
中途での経験もどこかで生かせるチャンスはけっこうあったりしますね。」

このあと、3件の面接を申し込みました。
およそ20年ぶりの正社員へ、齋藤さんは歩みを進めます。

齋藤高広さん
「未経験の分野は、これまで敬遠していたんですけど。
今回は未経験の分野ばかりですけど、応募できました。
一歩踏み込んでいこうかなと。」

県の取り組みによって、自信をもって働きはじめた人もいます。

こちらのカット野菜の製造を行う会社には、去年、県の紹介で就職氷河期世代の男性が入社しました。
厚海健一さん、44歳です。
大学を卒業した後、運送会社などで非正規として働いていました。
厚海さんはパート従業員への面倒見がよく、彼らの仕事の管理を任されています。
以前、食品を扱う仕事をしていたこともあり、業務内容もすぐに覚えました。

厚海健一さん
「給料は生活できる以上にもらえていて、今までパートでしたので、自分には正直多すぎるんじゃないかなって思うくらいです。
勤めてよかったな、自分も少しは役に立てているのかなと感じますね。」

関東きのこセンター 木下善夫さん
「氷河期世代の人たちは、十分に戦力になってもらえると感じています。
社会経験、企業経験があるので、そこは働いてもらう上でかなり大きいと思います。」

県のプロジェクトは「就職氷河期世代150人を正社員にする」ことが目標です。
この会社も2人を採用する予定で、参加を決めました。

埼玉県 雇用労働課 石井順子さん
「ちょっと年代が違ったら、普通に正社員になれたという方はたくさんいらっしゃいます。
アクションを起こしさえすれば正社員になれる、そういうスキームにしたいと思っています。」

埼玉県だけではなく、全国的にも就職氷河期世代に絞った支援は始まっています。
厚生労働省によると、大阪や京都など全国10都府県のハローワークで専用の相談窓口を設置し、進路相談や研修などを行っています。
また、来年度からは全国のハローワークでも同様の取り組みを始めるということです。

取材:中江文人ディレクター(おはよう日本)

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