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2019年11月11日(月) NEW

“フリーハグ”で日本縦断 女性の願い

冷え込んだままの日韓関係ですが、市民レベルでお互いを理解しようと日本縦断をした韓国人の女性がいます。

留学がきっかけでフリーハグ

東京・渋谷の駅前に立つ、韓国の伝統衣装・チマチョゴリをまとった女性。
韓国人の学生、ユン・スヨンさん(25)です。
道行く人と抱き合い、友好の気持ちを確認し合うという活動、「フリーハグ」を4年前から続けています。

韓国人学生 ユン・スヨンさん
「両国の関係はまだ難しいですが、私たちができることや小さな行動をやっていけば、きっといい方向に向かうと思っています。」

韓国南部のテグで生まれ育ったスヨンさん。
フリーハグを始めたきっかけは、留学生として来日したときの経験でした。
それまで「日本人は韓国が嫌い」と、漠然と思い込んでいましたが、アルバイト先で同世代の日本人と触れあい、温かい気遣いを感じたと言います。
その後、お互いの本当の姿を知らないために生まれる偏見や思い込みをなくしたいと、同じようにフリーハグをしていた人と知り合い、自分も始めました。

ネット上に“批判の声”も

最近、日韓関係の悪化が長引くにつれ、スヨンさんの活動にネット上で批判が目立つようになりました。
しかし、そんな時だからこそ活動が必要と、スヨンさんは考えています。

韓国人学生 ユン・スヨンさん
「フリーハグで一気に変わりませんが、もうダメだって諦めるより、少しずつでもやっていきたい。」

日本縦断の旅で得たもの

スヨンさんは先月(10月)、ネットで募金を募り日本全国を縦断することにしました。
その中で貴重な経験となったのが、初めて訪れた福島県でした。
韓国では震災から8年たった今も、福島県の水産物などの輸入を禁止していて、大気中の放射線量の影響を懸念する報道も相次いでいます。

地元の大学生との話し合いで、スヨンさんは福島の若者たちの切実な思いに触れました。

福島大学の学生
「福島県産の食品はきちんと『大丈夫、食べられますよ』って売っているのに、まだ危ないって思ってる人たちがいるのが悲しいし、寂しい」

「『福島人は危ない』みたいに見られるんだというのが、ちょっとショック」

お互いの理解が大切だと訴える、自分の中にもあった思い込みや偏見に気付いたスヨンさん。
もっと学び、自分も変わっていく必要性を感じました。

ハグから広がる輪

全国縦断をはじめて1週間後、スヨンさんは大阪にいました。
戎橋など繁華街で立ち続けると、ハグを求めた人は400人以上にのぼり、多くの人がスヨンさんに励ましの声をかけました。

ハグを求めた女性
「がんばって。」

「すごく勇気があることだなと思います。」

夜、スヨンさんを囲んで行われた食事会。
SNSや街頭で知って応援したいと集まった人の中には、スヨンさんに出会って考え方が変わったという人もいました。
会に参加した45歳の男性は、今も政治や歴史を巡る韓国政府の主張には反対ですが、次の世代のために交流自体は大切だと考えるようになったといいます。

男性の参加者
「私はもともと“嫌韓”で保守思想の人間でした。
正直、私自身が韓国好きになることはないかもしれないですが、将来子どもや孫の世代に日本と韓国は仲良くいてほしいなと。
いろんな思想の人たちが集まっても、手はつないでおこうよと。」

韓国人学生 ユン・スヨンさん
「これが私が望んでいる“小さな日韓関係”の形かな。
他の立場や違う意見を持っていても大丈夫、という雰囲気が大事だと思います。」

“じっとしていられない”気持ちを未来へ

スヨンさんは今回、札幌から那覇まで全国15都市をまわり、ハグをした人は2,000人以上にのぼりました。
確かにフリーハグの活動には、小さな行動で何が変わるのか、自己満足ではないか、といった批判がついてまわるのも事実です。
しかし今回、スヨンさんや周囲の人たちを取材をして実感したのは、多くの人たちが今の状況ではいけないと切実に感じていることでした。
悪化したままの日韓関係を、自分の「痛み」とさえ表現する若者もいました。
何かしたい、じっとしていられないと、行動を起こしたスヨンさんのような人たちの気持ちをどう受け止め、まとめていくのか、それが双方の未来のために大切だと感じました。

取材:重田竣平ディレクター(おはよう日本)

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