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2019年11月6日(水) NEW

自治体のホームページが…

先月(10月)の台風19号で、防災情報を掲載する自治体のホームページでトラブルが相次いでいたことが分かりました。

「上田市のホームページ見られず。」

「大田区のホームページつながりません。」

先月の台風19号の際、ツイッターに寄せられた投稿です。
自分が住む地域の避難の情報や川の水位など、台風に関する情報を見ようと多くの人が市区町村のホームページにアクセスしようとしましたが、閲覧できないと訴える声が相次ぎました。

紫色で示したのは、当時、大雨の特別警報が出された地域です。
東日本から東北地方にかけて、広い範囲に及んでいました。
黄色で示しているのは、「ホームページがつながりにくい」という投稿が寄せられていた自治体です。
ツイッターを分析する国の研究機関のシステムを使って、NHKが先月12日から14日にかけての投稿を調べたところ、その数は少なくとも「53」にのぼり、多くが特別警報が出た地域に含まれていました。

世田谷区でも…

今回の台風でホームページが見られないという声は、東京でも多くありました。
中でも大きな影響が出たのが、東京23区で最大の90万人が暮らす世田谷区です。
情報が得られないことで、避難行動にも影響を与えかねない事態に陥っていました。
世田谷区では、台風の2日前から災害対策本部を立ち上げるなど、早めの準備を進めていました。
区民には、ホームページを通じて、防災情報を確認するよう呼びかけていました。
ところが台風が目前に迫った当日の午前中、突然ホームページがダウンします。

台風が近づくにつれ、アクセスが一気に集中したのです。
その数、およそ27万。
区の人口の3分の1に及ぶ数でした。
台風は、その日の夕方に最も接近する見込みとなっていました。
担当部署は、すぐに復旧にあたりましたが、状況は改善しませんでした。

世田谷区 広報広聴課 山戸茂子課長
「アクセス集中ということで不具合が起きるということは、改めて認識しました。
あまりにも(ネットが)生活の一部になりすぎていて、危機感というものをもっと持つべきだったということは反省しております。」

どうやって情報を伝えればいいのか。
防災行政無線で放送を流しましたが、雨や風が強まる中「聞こえない」との苦情が相次いでいました。

公式ツイッターで発信しましたが、“フォロワー”と呼ばれる読者は数万人程度にとどまっていました。
そんな時、世田谷区の保坂区長個人のツイッターに、予想外のメッセージが届き始めました。
情報を求める住民からのメッセージです。

区長は、災害対応の合間にツイッターで、本来はホームページに掲載するはずの情報を発信し始めました。

世田谷区 保坂展人区長
「ホームページが、一時期つながらない状態を何とか乗り越えようと。
(区のホームページに)本来出す情報がありますよね。
その情報は、すべてツイッターで見られると。」

区長の投稿を見た住民からは、より具体的な情報を求める声が届きます。

川の水位を心配する声には、ハザードマップを1枚ずつ写真に撮って投稿しました。

世田谷区 保坂展人区長
「ホームページそのものが繋がらないので見たい。
というお話に対してやっぱり写真を撮って、これがハザードマップという工夫はしたりしました。」

そして夕方、台風は接近していましたが、最新の防災情報を伝えるはずのホームページはダウンしたままでした。
多摩川の水位が上がり、区は「避難勧告」を出しました。
この日は、午前11時の段階で127人があらかじめ避難していました。
避難勧告が出る前の午後3時には、540人に増加。
満員となった避難所が出てきていましたが、ホームページは復旧しておらず、そのことを伝えることはできませんでした。

世田谷区 保坂展人区長
「暴風雨が強まって、しかも危険をおして、この避難所に行ったのに満杯で入れなかったとしたらやはり“何だ!”ということで、この避難所情報を出しておきながらっていうことになりますよね。」

区長は、新たな避難所を開設する指示を出しながら、そのつど、ツイッターで伝えるしかありませんでした。
午後6時ごろ、ようやくホームページが復旧。
辺りはすでに暗くなっていました。

避難所情報をホームページに掲載できるようになり、午後7時には、避難者数は4688人にまで増加しました。
この台風で死者は出なかったものの、住宅街では冠水した場所もありました。
刻々と状況が変化する災害時に、必要な情報を区民にいち早く伝えることの重要性が改めて浮き彫りになりました。

世田谷区 保坂展人区長
「今みなさんが何を考えて、どんな現実にあたっているのかということを受けながら、役所の発する情報はどうかな?ということを少しでも克明に、(発信する情報の)隙間と隙間に(住民が知りたい)解説というか補強情報を入れることも必要だと。」

求められる対策

自治体のホームページは、多くの情報を欲しい人にピンポイントで届けることができるため、今や災害時には欠かせない存在になっています。
それだけに自治体からは、今回の取材で、ホームページが使えないのは想定外の事態だった、という声が多く聞かれました。
しかし、毎年のように台風などの災害が来ていますから、想定外では済まされません。
そこで、大きく2つの対策が考えられます。

ひとつは、ホームページのデータの量を小さくした、災害用ページに切り替えることです。
ふだんのホームページには、データ量の大きい画像などが多く掲載されています。
それを文字だけにすることで、通信量を大幅に減らすことができます。

もうひとつは、回線そのものを強化することです。
コストはかかりますが、回線の容量を増やしたりサーバーを分散させたりすれば、通信の負担を大きく減らすことができます。
例えば、東京の足立区では、台風19号が接近する前日から、災害用に「文字だけのページ」に切り替えました。
また、もともとサーバーを分散させていたため、アクセス数が増えてもページが落ちることはありませんでした。
すべての自治体で、こうした対策をあらかじめ準備しておく必要があります。
ただ、ホームページの運用は自治体ごとにまちまちなのが現状です。
このため、中には、複雑なシステムを使っているため、どの部分で通信がパンクしたのかすぐに特定ができないという自治体もありました。

明治大学 理工学部 情報科学科 齋藤孝道専任教授
「こういう災害は、過去何回かこういうケースは起きている訳ですから、そういう準備は自治体がある程度、責任を持ってやるべきかなと。
それを自治体の中で仕組みが作れないなら、もう少し広域でやるとか、国がリーダーシップを取る必要があったんじゃないか。」

このように、災害を想定したホームページの整備が必要です。
ただ、ネットでの情報発信が注目される一方で、高齢者などの中には、そもそもネットを使っていないという人もいます。
そのため、防災行政無線を家ごとに備えたり、テレビやラジオで放送したりなど、従来からある方法を活用しながら、ホームページなどとうまく組み合わせていくことが重要です。
例えば国は、ネットの情報が届かない人には、自治会など地域のつながりを使って情報を届ける仕組み作りを目指しています。
なによりも国や自治体は、ホームページが災害の際に欠かせない「情報伝達の要」になっているという認識を持って、しっかりと整備していくことが求められています。

取材:黒瀬総一郎(科学文化部)、境一敬(おはよう日本)

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