これまでの放送

2019年11月3日(日)

アメリカ大統領選挙まで1年 果たしてその行方は?

アメリカ トランプ大統領
「私は歴史上、どの大統領よりふさわしい大統領になれる。」

トランプ大統領がさらに4年、政権を握るのか。

民主党 ジョー・バイデン前副大統領
「トランプ大統領はアメリカを裏切っている。
弾劾に値する。」

それとも野党・民主党が政権を奪還するのか。
アメリカ、そして世界の今後を左右するアメリカ大統領選挙は来年(2020年)の11月3日に投票日を迎えます。
現地では早くも選挙に向けた動きが熱を帯びています。
今回の大統領選挙、最大の焦点はトランプ大統領が再選するかどうかです。

トランプ大統領は就任以来、一貫して不支持が支持を上回っていますが、支持を見てみると数々のスキャンダルや疑惑にもかかわらず、40%程度を維持し続けています。
選挙で大きな強みとなるこのいわゆる岩盤支持層を確実に固めた上で相手側を切り崩せるかが、再選の鍵となります。

しかし、ここに来て新たにウクライナ疑惑が発覚。
これはトランプ大統領が民主党の有力な大統領候補の1人バイデン前副大統領に不利な情報を得ようと前副大統領と関わりのあったウクライナに圧力をかけたとされる疑惑で、民主党は大統領権限の乱用だとして議会下院で大統領をやめさせる弾劾の調査に踏み切りました。
逆風が強まるなか、トランプ大統領はどのような戦略で選挙に臨んでいるのか、その内幕を取材しました。

トランプ陣営の再選戦略(1)~疑惑全否定で支持固め

再選を狙うトランプ大統領は全米各地で毎週のように演説会を開き、選挙に向けた活動を本格化させています。
そこで毎回、強調するのが、野党・民主党、そしてメディアへの批判です。

トランプ大統領
「過激派の民主党はアメリカの崩壊を望んでいる。
ウソのニュースを流すメディアが問題だ。
なぜならこのフェイクニュースメディアと民主党は仲間だからだ。」

民主党やメディアが伝える話はすべてウソだと主張。
対決色を全面に打ち出し、岩盤支持層を固めるねらいです。

トランプ陣営は今、疑惑の徹底した否定を戦略の柱に据えています。
各地で運動員を養成するセミナーを開き、疑惑は作り話だという主張を全米に拡散させようとしています。

トランプ陣営 選挙対策本部長 パースケル氏
「CNNなどテレビは必ず間違っている。」

「200万人のボランティアを動員し、彼らが近所の家のドアをノックすることが勝利を呼ぶ。」

陣営で教育を受けた運動員は地元で集会を開催。
多様な層に、草の根で民主党やメディアへの不信感を訴えます。

ダラス地区 トランプ陣営 責任者 キーナン・ウィリアムズ氏
「僕の父親もトランプ大統領が大嫌いだった。
周囲の人の話を聞き、CNNを見ているからね。
大統領は人種差別主義者だと言われるが、テキサス州での選挙対策担当は僕だ。
大統領が人種差別主義者なら、僕を代表にしたりしないよ。」

聴衆
「大統領の物議を醸す問題を聞かれたら、どうする?」

キーナン・ウィリアムズ氏
「もちろんトランプ大統領だって完璧じゃないんだ。
完璧なのは神だけさ。」

トランプ大統領の選挙戦略の立案に深く関わるコンサルタントに話を聞くことができました。
徹底した疑惑の否定は、疑惑追及の世論への対抗策だと明かしました。

トランプ陣営 選挙コンサルタント ジェイソン・マイスター氏
「大統領を決めるのはメディアではない、有権者だ。
トランプ大統領はメディアがどのように活動し、自分をおとしめようとするかを理解している。
前回の選挙よりトランプ大統領はさらに強くなっている。」

トランプ陣営の再選戦略(2)~ねらいは労働者

トランプ陣営が重視するもうひとつの戦略が、好調な経済を武器にした労働者層の取り込みです。
アメリカでは今、失業率が歴史的な低さで推移しています。

陣営は、前回2016年の選挙で接戦だった州を中心に労働者層が多い地区を洗い出し、浸透をはかろうとしています。

東部ペンシルベニア州。
かつて製鉄などで栄えた工業地帯で、地方部の労働者の票が勝敗の鍵を握ると分析されています。

伝統行事のハロウィーンを前にしたこの日、人口5000人足らずの街でトランプ陣営の集会が開かれていました。
登壇したのは全米最大の保守系政治団体の会長と、ホワイトハウス元高官のその妻。
陣営の大物幹部です。
小さな集会でも幹部を投入し、まずは疑惑を否定。
そして減税や補助といった身近な政策の実現を訴えます。

陣営幹部
「ワシントンで間違いないと言われている話は、フェイク(偽り)だ。」

陣営幹部
「民主党はトランプ減税や健康保険の制度を変え、家庭生活を狙い撃ちにしている。
彼らがいう温暖化対策をしていたら、電気代だってうなぎ登りよ。」

トランプ大統領の支持者
「表だっては言えないけど、“私もあなたと同じトランプ支持者よ”と言ってくる人がたくさんいるのよ。」

トランプ陣営はいま、この活動を民主党の地盤でも展開しようとしています。
労働者層にねらいを絞って訴えれば、支持を変えさせることも可能だと分析しています。

ジェイソン・マイスター氏
「アメリカ経済は世界が羨むほど好調だ。
トランプ大統領は製造業を復活させた。
そのおかげで仕事を得た人が、民主党の支持基盤の州にもいる。
われわれはそうした州を狙っていく。
有権者はぐらついている人が多い。
みんなアメリカ国民のために働く人を求めているんだ。」

計算されたトランプ陣営の戦略

トランプ陣営は疑惑を全否定するという選挙戦略ですが一定の効果をあげているといえます。
トランプ大統領の支持率はウクライナ疑惑の後もそこまで落ちていません。
多くの人にとって最も切実なのは自らの生活。
そこに訴えかける政策を強調する一方で、スキャンダルは民主党やメディアが仕掛けたいわば政治的なゲームだと脇にやる理屈は、地方の労働者の心情を読んだ計算された戦略ともいえます。

ただ、戦略の鍵となっている「経済」については懸念材料もあります。
今の好調な経済がこれからも続くという保証はありません。
中国との貿易摩擦による農家などへの悪影響、そして景気後退の兆しを指摘する声も出始めています。
トランプ大統領は貿易交渉では早期の合意を、国内では繰り返し金利の利下げを求めていますが、これはこのままでは選挙に悪影響が出かねないという焦りの裏返しともとれます。

そして今後、選挙の行方を占う最も重要なポイントは、相手が誰になるのかということです。
民主党の候補者選びは中道派と左派の争いが激しさを増していますが、トランプ大統領は中道派のバイデン前副大統領が相手になれば、幅広い票を取り込まれるおそれもあると警戒しています。
一方で左派のウォーレン議員らが相手ならば主張がかなり偏っているとしてまだ与しやすいとみているようです。
ただ、この民主党左派はトランプ大統領と同じく労働者層に訴える政策を強調しているため、票の奪い合いになる可能性もあります。
民主党側はまずはウクライナ疑惑を徹底的に追及してトランプ大統領の信用を失墜させようとしていて、この疑惑の行方、そして民主党の候補者選びが来年の大統領選挙を占う当面の焦点になります。

取材:栗原岳史記者(ワシントン支局)

Page Top