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2019年10月25日(金)

避難所 “ホームレス受け入れ拒否” 広がる波紋

台風19号では、東京・台東区が避難所に来たホームレスの男性3人の受け入れを拒否したことで、いま避難のあり方が改めて課題となっています。
災害時には、私たちも避難所を利用する可能性があります。
皆さんはこの問題、どう考えるでしょうか?

台風の避難所 “ホームレス拒否”

上野駅の周辺で路上生活をしていた60代の男性です。
台風が接近していた今月(10月)12日の午前、支援者から避難した方がいいと言われ、台東区が開設した避難所を訪れました。
そこで区の担当者から、思いも寄らない言葉をかけられたといいます。

60代の男性
「僕の方から住所は北海道にありますと言ました。
あっちから都民の避難所ですと言われました。」

男性は、傘で雨風をしのぎましたが、その後体調を崩し、1週間入院することになりました。

「区民ではない」という理由で、受け入れを拒んだ台東区。
しかし、支援団体に話を聞くと、それはホームレスを受け入れないための“理屈”でしかないことがわかってきました。

夜回りボランティア
「(避難所では)ホームレスの対応は受け付けていないとはっきりと断られたそうです。」

ホームレス支援団体 あじいる 中村光男さん
「台風がもっとひどくなって、避難勧告とか避難指示が出た場合、それでも受け入れないのかということを(区に)お聞きしましたが、断ると。
すでにそれは対策本部で決定していることですということでした。」

台東区は実際、避難所でどう対応していたのか。
取材を進めると、台東区以外に住んでいる人や外国人旅行者も受け入れていたことが明らかになりました。
「区民ではないから」という説明で、ホームレスだけを閉め出していたのです。
今回、取材に応じた区の担当者は、ホームレスの避難を事前に想定していなかったことが原因だとして、対応が不十分だったと認めました。

台東区 危機・災害対策課長
「地域防災計画での避難所の位置づけですが、こちらは住民の避難を書かれていまして。
路上生活者の方に対しての記載が特段なかったこともあり、今回、漏れてしまったことについては、大変申し訳なかったと思っているところです。」

専門家は、こうした対応は、法的にも人権的にも問題だと指摘します。

ホームレス問題に詳しい 立教大学大学院 稲葉剛特任准教授
「災害対策基本法では、人の生命および身体を保護するということを最大の目標にするということが基本理念として定められています。
日常業務の中でホームレスの方の命や人権を守るという観点がそもそも欠けていたのではないか。」

台東区にはこれまで、全国から300件を超える意見が寄せられています。

7割は批判ですが、3割は“区の対応は間違っていない”という声だといいます。
SNS上でも、賛否が分かれています。

“避難所は命のかかるセーフティーネットだ。”

“実際に自分のそばで雑魚寝することになったらどうでしょうか?”

では、実際に受け入れた自治体はどうだったのか。
避難所として区役所の庁舎を開放した豊島区では、次々にやってくる住民で避難スペースはすぐに埋まりました。
そこに避難してきたのが、ホームレスの支援団体に連れられた16人。
急きょ、会議室を割り当てることにしましたが、難しさを感じたといいます。

豊島区 防災危機管理課 星野和也課長
「下の広いところだと、お年寄りや乳幼児も、かなりいらっしゃいました。
使ったあとも、部屋を掃除するのも、かなり大変だったので、なかなか、きれい事では済まないということが課題としてあります。」

命の危険が迫ったとき“開かれた場所”であるべき避難所。
専門家は、私たち1人1人がそのことを改めて理解し、対応していけるのかが問われていると指摘します。

ホームレス支援全国ネットワーク 奥田知志理事長
「今の社会は格差社会と言われて久しいですけれども、もっと本質的には命の格差というところまできている。
『自己責任』、『そんな人は助けなくていい』という空気が世の中にあるなら、行政が対応を改めたところで解決はしない。
今回のことは、われわれ支援団体も含めてどう対応していくのか。
(みなが)同じ命と言える社会が形成できるチャンスに変えない限り、抗議だけしていてもダメです。」

取材:戸叶直宏記者(首都圏放送センター)

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