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2019年10月24日(木)

外国人の“長期収容” いま入管で何が…

日本に在留する資格がなく、国外退去を求められている外国人が収容される法務省出入在留管理庁の施設、通称「入管施設」で、ある異変が起きています。
施設に6か月以上の長期に渡って収容されている人の数は、統計を取り始めた平成25年から2.5倍に増加しています。
施設から出たいと、食事を拒否するハンガーストライキが頻発するようになり、6月に男性が1人、餓死しました。
いったい何が起きているのでしょうか。

難民申請者がハンスト 収容施設で何が…

入管施設から一時的に解放され、親戚の家に身を寄せているムスタファさん(26)は、トルコで暮らしていたクルド人。
7年前(2012年)、親戚を頼って観光ビザで来日しました。
長年にわたって、トルコ政府と対立が続くクルド人。
ムスタファさんは14歳のとき、民族間の対立に巻き込まれ、捕まった警察から暴行を受けたといいます。

ムスタファさん
「(トルコに)行ったら刑務所行くか殺されるか、分からない。
あそこに戻りたくない、帰りたくない。
怖いし。」

難民申請を続けてきたムスタファさん。
その結果を待つなか、日本人とのけんかで警察につかまったことをきっかけに、入管施設に送られました。
収容されたのは、4人が寝泊まりする部屋。
いつ解放されるかも分からないまま、収容は3年以上に及びました。
今年(2019年)4月、体に痛みを感じたムスタファさん。
施設の常勤医に「専門医の診察を受ける必要がある」と告げられましたが、何度職員に訴えても外出許可はもらえませんでした。
ムスタファさんは、施設から出るためには健康を害するしかないと考え、ハンガーストライキに踏み切ります。
26日間、水と薬しか口にせず、体重が83キロから12キロ減少したところで、一時的に解放されることになりました。
専門医の診断結果は「精巣がん」。
すぐに手術で、右の精巣を切除しました。
これ以上放置していれば、命の危険があったと医師に告げられました。
ムスタファさんは、手術後の痛みに加え、精神的に不安定になり、一日のほとんどを家の中で横になって過ごしています。

ムスタファさん
「もしハンストしなかったら、命、死ぬかもしれない。
出てもまだ入管のいろいろあったことが忘れられないし、夢も見るしほとんど寝れない。」

なぜ、長期収容される人が増えているのか。
日本にいる外国人のうち、入管施設に収容されるのは、在留資格がなかったり、切れたりするなどして不法滞在となり、国外退去を求められている人たちです。
しかし、難民申請をしている人は法律上、強制送還をすることはできません。
こうした人たちの収容に期限を設けていないため、長期に渡って収容される人が増えているのです。

「収容やめろ。」

日本の長期収容に対しては、国際社会から厳しい目が向けられています。
国連は複数回にわたって、日本政府に勧告を出し、“収容について最長期限を設けること”、そして“代替措置を優先する努力”を求めています。
今週、国は有識者による専門部会を立ち上げ、対策の検討に乗り出しました。
長期収容問題を解消するための対策を、法整備も含めて検討するとしています。

出入国在留管理庁 佐々木聖子長官
「長期収容が好ましくない状態だという認識は当然のことながら持っています。
退去強制という判断に従って、外国人が出国をすることで収容が終わるべきものだと考えております。
そして、それはできるだけ早くに行われるべきことだと思っています。」

この日、ムスタファさんは弁護士と共に記者会見を開くことにしました。
施設から解放されている限られた時間を使って、現状を伝えたいと考えたのです。

会場にきたメディアは、私たちも含めて2社のみ。
それでもムスタファさんは、長期に渡る収容をなくしてほしいと、およそ1時間にわたって訴えました。

ムスタファさん
「未来が見えない、先の道が見えない。
死んでるみたい。」

ムスタファさんが入管に出頭する日。

ムスタファさん
「やな感じ。
いくのやな感じ。」

入管が近づくにつれ、ムスタファさんの表情が暗くなり、口数が減っていきました。
ここで審査官との面接が行われ、再び収容されることが決まれば、建物から出てくることはできません。
およそ3時間後、ムスタファさんが出てきました。
がんが転移していないか検査が必要だと訴え、今回の収容は免れました。
次の出頭は、2週間後です。

ムスタファさん
「この病気なかったら収容されていたかもしれない。
次どうなるか分からないね。
悲しいです。」

外国人の“収容長期化” 解決への糸口は?

実は世界的に紛争が相次いでいることから、故郷を追われた難民や避難民の数は7,000万人以上と、過去最多になっています。
すべてのEU加盟国や、多くの先進国では、人権に配慮するため収容期間に上限を設け、長期収容が起こらないようにしています。

現在の制度はおよそ70年前に作られ、ベトナム戦争から逃れてきた人たちなどを受け入れてきました。
多くの専門家が難民認定に時間がかかることや、認定される人は申請者の1%に満たず、他の先進国に比べてはるかに少ないことから、制度が時代に追いついていないと指摘しています。
今年日本は、入管法を改正し、外国人材の受け入れ拡大にかじを切りました。この問題にどう対応していくのか、これからも取材を続けます。

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