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2019年10月20日(日)

復旧進まぬ農家 再建への課題は

台風19号では農業や漁業など、一次産業にも大きな被害が出ています。
農林水産省によりますと19日正午時点で被害があった都府県は、あわせて35、被害額は571億円あまりとなっています。
被害が広範囲に及んでいる長野県や福島県などを中心に、被害の全容は明らかになっておらず、被害額はさらに増える見通しです。
今後は被災した農家への支援が課題となりますが、復興・復旧に向けた道のりは簡単ではありません。
先月、台風15号で甚大な被害が出た千葉県では、1か月たっても、復旧が進まない実態がありました。
再建への課題を取材しました。

相次ぐ台風被害 ハウス農家 進まぬ復旧

果樹農家の木村清治さんです。
栽培していたブドウが傷つき、出荷ができなくなりました。

果樹農家 木村清治さん
「商品価値がなくなりました。
実が房から落ちてしまって。」

木村さんの畑では、度重なる台風で19棟の農業用ハウスがすべて倒壊。
今も復旧は、ほとんど進んでいません。
ハウスを再建しようと、業者に連絡したところ、予約が殺到していて、対応できないと言われたのです。

一人で片付けを始めていますが、高齢もあり、思うように進まず、今後、ハウスでの栽培を縮小することを考え始めています。

果樹農家 木村清治さん
「自分の体力も気力も限界があるので、ハウスを減らします。
最低でも、減らすかやめるかしないともうダメです。」

木村さんが住む山武市の市役所です。

相次ぐ台風で被災した農家が被害の報告や、支援内容の問い合わせに連日、訪れています。

訪れた農家
「ここまでひどくなるとは思っていませんでした。
業者に頼んでも、いつ来るかわからないですし。」

これまで市役所に寄せられた被害は200件以上。
台風19号により、さらに拡大しています。
こうした中、国は今月(10月)、農業用施設の再建費用の3割を補助すると発表。
県や市町村とあわせるとおよそ9割が負担される見込みです。
しかし、こうした補償があっても、ハウスの再建にはさらなる課題があることが浮かび上がっています。

小松菜農家の澤木勇一さんです。
7棟の農業用ハウスのうち6棟が全壊し、収入の4割を占めるハウス栽培ができなくなりました。

農家 澤木勇一さん
「残念です。
こういう状況になってしまって。」

この地域では最近、毎年のように台風の被害が発生するようになり、澤木さんは、より風に強いハウスに建て直す必要があると考えています。

千葉県では、これまで台風の被害が比較的少なかったため、コストの安い直径19.1ミリのパイプが多く使われています。
一方、台風被害の多い九州では、直径31.8ミリ以上のパイプが一般的です。

農家 澤木勇一さん
「千葉は低コストの強度の低いパイプハウスでも20~30年くらい、全く問題なくもっていたのですが、去年とおととしも台風が来ましたし、同じようなもので再建しても、またすぐやられてしまうのではないか心配がありますね。」

しかし、強度の高いハウスを建てるには、1.5倍以上のお金がかかります。

行政の補償は現状復帰が原則。
そのため、より強いハウスに建て直そうとすると、澤木さんの場合は1棟あたり50万円以上を自己負担しなければならなくなると言います。
小松菜の収入も期待できない中、再建の難しさを痛感しています。

農家 澤木勇一さん
「すでにある程度、借金をしながらやっているので、さらに借金をするとなると、本当に返せるか不安になります。
子どもも3人いますので、これ以上借金をして生活ができるかなというのもあります。」

ハウスの再建ができず、先の見通しが立たないことが多くの農家を苦しめています。
また、再建の難しさに度重なる被災が重なって、生産意欲を失ってしまう農家も少なくありません。
そうした農家を少しでも支えようという活動が民間レベルで始まっています。

“被災野菜”引き取り 農家を支援

復旧が進まないハウス農家を支援している人がいます。
千葉県佐倉市の鳥海孝範さんです。
鳥海さんは、被災した農家を周り、出荷できなくなった野菜を引き取る活動を先月(9月)から始めました。

鳥海孝範さん
「規格外で出せなくなったものとかありませんか?」

農家
「ありますね。」

農家
「本当に助かります。
ちょっと傷がついたりとかいろいろあるので。
出した野菜が結構、売れていると聞いたので、すごくうれしいです。」

引き取った野菜は経営するゲストハウスで販売します。
近所の人や飲食店などの業者が連日、購入していきます。
売り上げは引き取った農家へ還元しています。
鳥海さんは今、被災農家と販売したい業者をつなげ、直接、取引する仕組みも作りたいと考えています。
台風19号で被災した農家からも野菜を引き取ってほしいという声が届いており、販売ルートを増やすことが必要だと感じたからです。

鳥海孝範さん
「最初は元気がなかった農家さんが、作ったものの価値が出てきたことで、少しでも元気になってくれればと思います。
何か助けになるための今は過程だと思っています。」

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