これまでの放送

2019年10月1日(火)

消費税増税 ニーズに合った使い方を

導入から30年の消費税。
平成26年以来となる、3度目の引き上げで、税率は10月1日から10%になりました。
今回の増税で5兆7,000億円と見込まれる増収分の使い道のうち、柱の政策の一つとされているのが、幼児教育と保育の無償化です。
政府の試算では、子育て世代の負担を軽減することで、少子化対策につなげようと、年間およそ7,700億円をあてるとしています。

今回、一律無償化される対象は、3~5歳までの子どもを持つ世帯。
0~2歳までは、所得が低い住民税が非課税の世帯のみが対象になります。
対象となる世帯では歓迎する声が多い一方、子育て支援として十分ではないという声もあります。
なぜこのような声が上がっているのでしょうか。子育ての現場を取材しました。

都内に住む田中育美(仮名)さん、30歳です。
5歳と2歳の子どもを育てています。
今回、長男の幼稚園に支払っていた月額2万5,700円が無償化されました。
出産前に仕事をしていた田中さんは、家計を支えるために、早く仕事に復帰したいと思っていました。

田中育美(仮名)さん(30)
「2人をすぐに預けて働きに出るつもりだったので、数万円の出費が無くなるよりも、働いた方がよっぽどお金の面ではいいかなとは思う。」

しかし、問題となったのは次男の預け先です。
長男が通う幼稚園は3歳からで、2歳の次男を預けることはできません。

近所の保育所6か所を見て回りましたが、どこも空きはありませんでした。
最終的に区から紹介されたのは、自宅から遠く離れた保育所でした。

田中育美(仮名)さん(30)
「電車に乗って3~40分以上かかったと思います。
上の子を先に送って、下の子を送ってとやっているとまたさらに時間がかかってしまうので、ちょっと現実的に厳しい部分があるのかなと思っています。」

通勤時間を考えると、遠くの保育所に次男を預けることはできず、働きたくても働けない状況が続いています。

田中育美(仮名)さん(30)
「上の子を無償化してもらっても、まず下の子を預けないことには仕事ができないので、あまり状況は正直変わらないというか。
複雑なところの方が大きいです。」

田中さんのように、子どもを預けられる保育所が見つからない「待機児童」の問題は、今も深刻です。

ことし(2019年)4月の時点で、全国の待機児童の数はおよそ1万7,000人。
そのうちの、実に90%近くが、0歳から2歳です。
今回の支援策でも原則無償化とならないばかりか、そもそも預けられないという問題に直面しているのです。
9月、東京・世田谷区で開かれた保育所探しのセミナー。
来年(2020年)の入園に向け、早くも50人が詰めかけました。
国はこの5年、施設の拡充や保育士の確保などで保育の受け皿を毎年10万人前後増やし続けています。
それでも働く女性が増える中、追いついていないのが現状です。
この日の来場者の多くは、2歳以下の子どもの親たち。
無償化についても説明されましたが、それよりも前に、子どもの年齢に関わらず、預けられる受け皿作りを優先してほしいという声が相次ぎました。

参加した母親
「家計にとってはありがたいんですけど、やっぱり足元は待機児童対策。」

参加した母親
「予算があるのなら待機児童の改善にお金を使って。」

専門家は、「子育て世代」に税金を使う政策は評価できるとした上で、その使い道には課題があると指摘します。

慶應義塾大学 中室牧子教授
「いま幼児教育無償化になったからといって、将来子どもを作ろうと思う世代の意思決定にどれほど大きな影響を与えるのか、ということがある。
いま、保育所が足りてないとか幼児教育の質が十分ではないというところに対してしっかり投資をしていかなければいけない局面にある。
今回はその順番がある意味逆になってしまった。」

政府は、引き上げられた税金を使って、待機児童の解消に向け、来年度末までに32万人分の保育の受け皿を整備し、保育士の確保や処遇改善も行うとしています。
限られた財源の中で、子育て世代に振り向けられる支援が、本当にニーズに合ったものになっているのか。
しっかりと見つめていく必要があります。

取材:間野まりえ 小林さやか(社会部)
   石川香矢子 松岡智洋(おはよう日本)

Page Top