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2019年9月29日(日)

韓国で“反日批判”本がなぜベストセラーに?

“戦後最悪”ともいわれる日韓関係が続く中、韓国では今、ある本が異例のベストセラーとなっています。
韓国の元・大学教授らが書いた「反日種族主義」です。
このタイトル、どういう意味かというと「韓国人は、反日思想を掲げなければ生きていけない種族だ」として、いきすぎた反日姿勢を批判的に記しています。
この本をめぐり、いま韓国では大きな議論が起きています。

“異例”のベストセラー「反日種族主義」

「反日種族主義」は、韓国・ソウルの書店にあるベストセラーのコーナーに並べられていました。
7月に発売されてから、韓国最大手の書店で3週連続1位の売り上げを記録。
「1万部売れればヒット」と言われる韓国で、10万部以上を売り上げています。

“隣国の日本を先祖代々の敵だとしてとらえる感情。
あらゆるうそが広まっているのは、この“反日種族主義”によるものだ。”

これまで韓国では、こうした本に批判が集まることはあっても、ベストセラーになることはほとんどありませんでした。
この本を執筆したのは、研究者など6人です。
代表著者である元・ソウル大学教授のイ・ヨンフンさんは、韓国の近代経済史などを研究してきました。

イさんは今回の本で、日本の統治下にあった朝鮮半島でコメの生産量や輸出量が大幅に増加し経済発展したと、データに基づき主張しました。
さらに太平洋戦争中の徴用や慰安婦をめぐる問題でも、韓国のこれまでの通説に異を唱える内容が記されています。
イさんは異なる見方があることも知るべきだと、出版に踏み切りました。

元・ソウル大学経済学部教授 イ・ヨンフンさん
「“反日は善で、親日は悪である”という感情を韓国の国民が克服できなければ、韓国の明るい未来はないと私は考えています。
(韓国が)先進的な社会や経済・政治へと進むためには、隣国である日本との心からの信頼・協力体制が不可欠であるという当たり前のことを伝えたかったのです。」

韓国で起きた大論争

こうした内容に、韓国では大きな議論が起きています。
本への抗議集会が開かれ、著者のひとりと口論になった場面もメディアで報じられました。
大手ネット書店のレビューを見ると、最も評価が高い「5」が51.8%、最も低い「1」が45.7%と大きく分かれています。
肯定的に評価している読者のひとり、イ・グァンミンさんです。
イさんが暮らす街には、日本政府を批判する旗が至る所に掲げられていました。

イ・グァンミンさん
「これを見るたびに、日韓の対立の激しさを感じます。」

イさんが本を読んだきっかけは、日韓関係が悪化する中で、その内容が論争の的になっていたことです。

イ・グァンミンさん
「(本を読んで感じたのは)衝撃と驚きでした。
自分が漠然と知っていたことと反対の内容が、かなり多かったんです。
これまで自分の中にあった常識とは異なるものでした。」

読み進めるうち、歴史をもっと学んだ上で日本を再評価することも重要なのではないかと考えるようになったといいます。

イ・グァンミンさん
「日本統治時代に、日本は間違いなく過ちを犯していたと思うし、第2次世界大戦の加害者であり、植民地に対しても加害者です。
でも感情的な部分とは別に、正確な統計やデータに基づく研究がもっと必要なんじゃないでしょうか。」

本を批判している人にも話を聞きました。
食堂を経営する、シン・ワンソプさんです。
日本政府やその政策を批判し、日本製品の不買運動にも参加してきました。

シン・ワンソプさん
「もう二度と読みたくありません。
物騒で、ゴミのような本だと思いますね。
私が一貫してこの本に反感を覚えた理由は、著者があらかじめ決めた論調に当てはまる資料ばかりに言及しているからです。」

これまでシンさんは、“反日”姿勢に批判的な本を、手にすることはありませんでした。
しかし今回は、この本をめぐり、大きな議論が起きたことで、自分も内容を確かめたいと購入しました。

シン・ワンソプさん
「いったいどんな内容なのか、読んでもいないのにむやみに本について語るわけにはいきません。
著者が主張するような歴史の資料もありますが、それに反する資料もあるので、すべてについて真実の究明が行われるべきです。」

評価が分かれ、議論が巻き起こっていることが、さらに人々の関心を高めています。

韓国の市民
「世間で問題になっているし、国民の意見が分かれているので、私もどんな本なのか知りたくて買いました。」

「私と反対の意見を持つ人の本に何が書かかれているのか気になるので、読んだ方がいいと思っています。」

異例のベストセラーになったこの本、賛否は分かれていますが、取材をすると本を批判する意見の方が多いように感じました。
幼い頃から教科書で習ってきたことに真っ向から反する内容だとして、「本の内容は間違いだ」と考える人が多いようです。
最新(2019年9月19日)の世論調査では、「日本製品の不買運動に参加している」と答えた人は65.7%と、過去最高になりました。
輸出管理をめぐる日本政府の対応などに批判的な意見は根強く、いま日本に対して厳しい態度を取らなければならないという雰囲気が広がっているのを、確かに感じます。

韓国社会に現れた“変化”

ただ読者の中には、不買運動などの反日行動は行き過ぎだと感じている人がいるのも事実です。
表立ってそうした意見を言えない雰囲気があるため、最近では、こっそりと日本製品を買ったり日本旅行を楽しんだりする人もいて、そうした行動は「シャイジャパン」と呼ばれています。
さらにこうした人たちが、加熱する反日の動きに歯止めをかけたこともあります。
ソウルでは先月(2019年8月)、区が主導して日本製品の不買などを求める「ボイコットジャパン」と書かれた旗を大通りに掲げました。
しかし多くの市民がインターネットを通じて反対意見を寄せ、区はわずか数時間で旗を取り外したのです。

抗議したノ・ミョンウさん
「不買運動をするのは、日本人や日本社会との断絶を意味するものではありません。
こういう時だからこそ、日本人にさらに親切にする必要があります。」

日韓関係の改善は簡単ではありません。
太平洋戦争中の「徴用」や日本の輸出管理をめぐり、日韓両政府の対立は深まっていて出口は見えていませんし、韓国では全体として対日世論は厳しいままです。
ただ、賛否は分かれているとはいえ、こうした本がベストセラーになったこと自体は異例で、韓国社会のひとつの変化の現れだとも思います。
今後、日本との関係を冷静に考えようという動きが世論にどのような影響を及ぼしていくのか、注目されます。

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