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2019年9月25日(水)

3つ子育児 孤立させない支援を

注目の裁判で、ある母親に判決が言い渡されました。
判決を言い渡されたのは、3つ子の次男を床にたたきつけて死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた母親(31)です。
これまでの裁判で明らかになったのは、過酷な育児の状況でした。
ミルクは3人合わせると、1日に24回。
睡眠時間は1、2時間ほどでした。
行政のサポートも十分受けられず、追い詰められ孤立を深めていました。
2審の名古屋高等裁判所では「育児の十分な支援が得られず酌むべき点も少なくないが、刑が重過ぎて不当だとは言えない」として、1審に続いて懲役3年6か月の実刑が言い渡されました。

この裁判をめぐっては、1審で実刑判決が出て以降、「3つ子の育児の過酷さを正しく評価していない」などとして、2審では執行猶予を付けるよう求める署名活動がネット上で行われました。
また、双子や3つ子を育てる「多胎家庭」を支援する団体のメンバーが名古屋高等裁判所に、1万3,400人分を超える署名を提出しました。
きのう(24日)、裁判を傍聴した支援団体のメンバーからは、「多胎育児の大変さを考慮した判決ではないと感じた」という声も上がりました。

3つ子の母親が語る 過酷な育児

多胎家庭には実際、どのような負担があり、どんな支援が必要なのか。
同じように追いつめられそうになった3つ子の母親が、その経験を語ってくれました。
生後7か月の3つ子を育てる道絵さんです。

日中、夫は仕事のため、3つ子の世話を1人でしなければなりません。
3つ子の1人は肺に病気を抱え、呼吸器を使っています。
授乳は1日5回。
決まった間隔で、3人同時に飲ませるのは一苦労です。
1回の授乳で、準備から洗い物まで1時間。
合間におむつを替えたりするなど、休む間もありません。
3つ子を育てる苦労を身にしみて感じていた道絵さんは、事件についてこう話していました。

3つ子の母親 道絵さん
「他人事じゃないと思ったのがいちばんで、支援がほとんどなかったからお母さんが孤立しちゃって、多分、困ったことがたまりこんで、そのはけ口がなくって子どものほうに向いちゃったんだろうな。」

道絵さんを最も苦しめたのが、睡眠不足です。
生後4か月のころ、1日8回ミルクをあげていたときのスケジュールです。
3時間おきに授乳。
その後、後片付け、おむつ替えが続き、また次の授乳時間に。
1日の睡眠時間は、1時間半ほどしかありませんでした。

当時の育児日誌には、「夜間、3人同時泣き」、「ムリ」など、追い詰められた道絵さんの言葉が並びます。

道絵さん
「つらかったですね。
寝られないから。
寝不足でどうしようもない気持ちが、目の前の子供に向いちゃうことが多くて、なんで寝ないのと怒ったり、やっちゃったなっていうのがいちばん大きくて、そればっかり、後悔とかあとから押し寄せてきた。」

病気の次男に加え、さらに2人の乳児を育てるのは困難だと主治医が判断し、道絵さんは訪問看護を受けられるようになりました。
看護師は次男の病状を診るだけでなく、残りの2人の入浴や育児も手伝うなど、ほぼ毎日1~2時間支援します。
わずかな時間、道絵さんは仮眠をとるなど、体を休めることができると言います。

道絵さん
「1時間、2時間寝させてもらえたのが、本当に助かってます。
この時間けっこう大事だな。」

道絵さんのような母親を、どう支えればいいのか。
全国でも、先進的に活動しているNPOがあります。
NPO「ぎふ多胎ネット」を立ち上げた、理事長の糸井川誠子さんです。
自らも3つ子を育てた経験があります。
糸井川さんは、3つ子を抱えた道絵さんのような人のために、定期健診の手伝いを行っています。
こうした機会に子供の世話を手伝うだけでなく、母親の悩みを聞くなど、不安を取り除こうとしています。

さらに、NPOでは双子や3つ子などの多胎児を抱える親たちに向けた子育て教室を開くなど、親同士が出会う場を設け、互いの悩みを共有し、孤立をなくそうとしています。

こうした機会に糸井川さんは、多胎児を持つ家庭に対して自宅を訪問し、家事や育児の負担を軽くする支援体制を、自治体に整えて欲しいと訴えています。

NPO ぎふ多胎ネット 理事長 糸井川誠子さん
「支援が必要なのは、本当に短い期間なんですよ。
おおむね3歳ぐらいまでなんですね。
そこまで手厚くきちっと支援をすれば、その後は本当に健康的に育っていく家庭なんですよね。
でもそれがシステムになっていない。
形になっていない。
それをやっぱり、制度としていかに組んでいくかっていうことが、行政の役割だと思うんですね。」

多くの命が産まれた喜びを感じられるように、そして、これ以上、小さな命が失われないようにするためにも、育児を支える仕組み作りは喫緊の課題です。

取材:小野匠哉(NHK名古屋)、村上裕子(NHK名古屋)

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