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2019年9月19日(木)

不安 “支給水準下がる” 年金だけで暮らせる? 年金制度が抱える問題とは?

先月開かれた国の会議で、「およそ30年後、年金の支給水準が2割近く目減りする可能性がある」という推計が示されました。
いま、年金だけで暮らしていけるのかという不安が広がっています。
きょうは年金制度が抱える問題について考えます。

年金は大きく分けて1階部分と2階部分があります。
基礎年金に当たる「国民年金」と、「厚生年金」です。
サラリーマンは両方を受け取れますが、自営業者などは国民年金だけです。
そうした人は、現役世代などで、およそ1,500万人います。
この国民年金だけという人たち、多くが老後に厳しい生活を強いられています。

年金 “働き続けるしかない” 思い描いた老後どこへ…

報告:福田和郎記者(社会部)

埼玉県で理容店を営む阿部正明さん、82歳です。

当初、年金を受け取る年になったら引退するつもりでしたが、80歳を超えた今も働き続けています。
なぜなら、受け取れる年金が少ないからです。
30年以上保険料を支払ってきましたが、妻とあわせても、月11万円。

理容店店主 阿部正明さん
「年金だけでは生活が出来ませんので、いくらかでもやっぱり店で稼がないといけませんので。」

仕事は週に3日が限度で、毎月4万円ほどの収入を得ています。
阿部さんは、胃腸炎や前立腺肥大などを患い、医療費の負担も年々増加しています。
このため、仕事を続けても生活費が足りず、毎月、貯金を切り崩しています。
先月(8月)からは、80歳の妻の壽子さんもパートで働き始めました。

妻・壽子さん
「若い時は、年とったらゆっくり本を読んで、そして私は好きな絵を描いて、たまには旅行に行きたいなっていうそういうことしか。
夢をね、描いていましたけど、その夢も全く叶わない。」

理容店店主 阿部正明さん
「(貯金を切り崩す生活は)あと2、3年続けられるか分かりませんね。
国民年金って何だったのかと思いますよね。」

年金 徹底解説! そもそも国民年金って?

解説:小林さやか記者(社会部)

小林記者
「国民年金でもらえるのは、月に6万5,000円。
保険料を払っていない期間があれば、さらに減ってしまいます。
国民年金について、国は『生活のすべてを賄うものではない』としています。
そもそも国民年金は、農家や小売業などの自営業者を対象に、昭和30年代に始まりました。
当初は、農家なら土地、小売業なら店舗という資産を持っている、年を取れば、子どもたちが後を継いでくれるなど、支えてくれる家族がいる。
さらにサラリーマンと違って定年が無く、ご本人も長く働ける、といった想定があったと見られ、国民年金の金額は低く抑えられてきたと指摘されています。
実はいま、これらの想定に全く当てはまらない人も増えてきているんです。」

年金 想定が次々崩れ… 働けなくなった末に

報告:小林さやか記者(社会部)

北九州市で、一人暮らしをしている70歳の男性です。
個人で仕事を請け負う「個人事業主」として、長く建設現場で働いてきました。
ところが、60歳を過ぎて脳梗塞で倒れました。
左半身が不自由になり、仕事を続けることができなくなりました。
また、建設業で景気に左右され、収入が大幅に減る時もあり、貯蓄はほとんどできませんでした。
男性が受け取る年金は、毎月5万6,000円。
それだけで家賃や食費、それに光熱費を賄うことはできませんでした。

妻と離婚し頼れる家族もおらず、市役所に相談した結果、生活保護を受給することになりました。

年金 「時代に合わない」 どうする?国民年金

解説:小林さやか記者(社会部)

小林記者
「国民年金の制度が導入された当初と比べ、核家族化、単身化が進んで、頼れる家族がいない人が増えました。
平均寿命が80歳を超え、老後が長くなりました。
こうした中、働き続けるのも限界があります。
さらに、店や農地などの資産を持つ自営業者だけでなく、「個人事業主」や「フリーランス」と呼ばれる人の加入も相次いでいます。
つまり、当初の想定は、時代の変化とともに大きく崩れてきています。
国民年金をめぐる今後の議論のポイントは、大きく2つあります。
1つは、国民年金の金額を引き上げるかどうか。
もう1つは、厚生年金に入れる人を増やすかどうかです。
金額の引き上げは、そう簡単ではありません。
例えば、今の制度のまま基礎年金を月額1万円引き上げるとすると、単純に計算しても年間で3兆円あまりが必要になります。
年金制度に詳しい立教大学の菅沼教授は『年金の引き上げには現役世代の負担が伴うので、そこに理解を得られるかがポイント。
年金改革に妙案はなく、妥協点を探る必要がある』と話しています。
そして『厚生年金の拡大』。
これはすでに議論していくことが決まっています。
国は非正規労働者の加入を増やす考えですが、慶応大学の駒村教授は『イタリアのようにフリーランスなども厚生年金に加入している国もある。
日本でもこうした働き方が拡大しているので、今後検討が必要だ』と指摘しています。
政府はあす(20日)、社会保障の抜本的な改革を検討する新たな会議を立ち上げます。
そこでは低年金の問題をきっちりと検討すべきですし、私たちもその議論の行方を取材していきたいと思います。」

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