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2019年9月8日(日)

人手不足解消のカギは留学生

人手不足に苦しむ地方の中小企業がいま、熱い視線を送っているのが「外国人の留学生」です。
正社員として採用する企業も増えています。
群馬県では企業と大学が連携して、留学生を地元への就職につなげる取り組みを始め、成果をあげています。
カギは“企業への親近感”をどう生み出すかです。

留学生は即戦力!地方企業から熱視線

群馬県にある自動車部品メーカー。
昭和21年に設立したこの会社に、ことし(2019年)初めて外国人の新入社員が加わりました。
スリランカ人のラクマールさんです。

群馬大学の博士課程で人工知能を研究。
本来、ベテラン社員が務める設計・開発の仕事を、1年目から任されています。

職場の先輩
「パソコンの設定を英語にすることもできるんですけど、みんなと同じで日本語でできるようになりますので大丈夫です、と言ってくれます。
本当に頼もしいです。」

ラクマールさんを採用した背景には、会社が直面している採用難があります。
ことし、何度か企業説明会を行いましたが、やってきた日本人の学生はいずれも数人ほど。
高崎市内の説明会には、1人も来なかったと言います。

毎年5人、新卒の採用を目指してきましたが、おととし(2017年)からは採ることさえできない状況になり、留学生の採用に踏み切ることにしたのです。

共和産業 鈴木宏子社長
「ラクマールさんは、成績もトップだと聞きました。
話を聞いて、すぐにでも紹介してくださいとお願いしました。」

一方のラクマールさんも、自分の専門をいかしてものづくりの仕事に就きたいと思っていたところに大学からの紹介があり、この会社に決めました。

ラクマールさん
「このような仕事は 前から探していました。
このような仕事には慣れてますから、楽しんで仕事もできています。」

ラクマールさんの母校の群馬大学。

おととしから、留学生を地元に就職させる支援に力を入れています。
国から年間2,500万円の補助金を受け、進路相談や企業とのマッチングなどを行ってきました。
結果も上々で、去年(2018年)は卒業した人のおよそ半数、11人が群馬で就職しました。

取り組みを始めたきっかけは、県内の留学生を対象に行ったアンケートで驚きの結果が出たことでした。
就職先の希望を聞いたところ、その多くが東京。
群馬県内を望む人は、わずか16%余りにとどまりました。
多くの留学生が、「自分の力を生かせるのは東京での就職」だと考えていたのです。

ポーランド人の留学生
「成長できる場所として、群馬について考えたことがなかったので、群馬で働こうという気持ちが1回も起きませんでした。」

就職支援の責任者の結城恵教授は、留学生が一流企業への志向が強いことも、地方の企業に意識が向かない理由だと感じています。

群馬大学 結城恵教授
「どこに就職したいと聞くと、新聞や雑誌にもよく目にするような企業の名前が出てくるんです。
母国のご家族の期待もあって、故郷に錦を飾りたいという思いも強いんだと思います。」

留学生を地方企業へ 心をつかむ採用戦略

そうした状況を変えようと、群馬大学がおととし(2017年)から始めたのが留学生を対象にした独自のプログラムです。

この日集まったのは、留学生と地元企業13社。
それぞれでペアを組み、2週間かけて会社の魅力を知ってもらいます。

企業は、地元の特産品を海外に売り出そうとしている会社で、まずは商品に込めたこだわりを伝えます。

地酒メーカー
「田植えをして、お米をつくるところから全部やって、販売している製品がこれなんです。」

中国からの留学生、薛鳳宇(せつ・ほうう)さんです。
群馬に自分の力を生かせる企業があるのか探したいと、このプログラムに参加しました。
ペアを組んだのは、群馬県産のこんにゃくを加工し、洗顔用のスポンジを作っている会社です。
化学薬品を一切使わない、「安全性」へのこだわりを力説します。

こんにゃくスポンジメーカー 山本直人さん
「群馬県産の、みんながふだん食べているこんにゃくと同じものを使っています。
食べ物になるくらいなので、非常に安心して使うことができる商品です。」

群馬大学 留学生 薛鳳宇さん
「敏感肌の人にはふさわしい商品ですね。
いま中国で敏感肌を気にする人は、すごく多いんです。」

興味をもってもらったところで、フィールドワークに移ります。
この日は、駅で市場調査を行います。
商品の魅力を自分のことばで説明してもらうことで、より愛着をもってもらおうという狙いです。
薛さんも一生懸命、説明します。

この商品は、海外での販売も進めています。
外国人観光客にも話を聞き、反応を探ります。

外国人観光客
「顔に、よさそうだね。」

中国人観光客
「天然素材で環境にもいいの?
大変すばらしいですね。」

プログラムではこうした調査をもとに、自分だったら海外でどう販売するか、そのアイデアも考えてもらいます。

群馬大学 留学生 薛鳳宇さん
「パッケージですけど、こんにゃくの木を描いていますね。
でも私はこれを見ても、こんにゃくかどうか分かりません。
メイドインジャパンを売りにするためにも、こんにゃくに代わって例えば富士山を載せたらどうでしょうか。」

こんにゃくスポンジメーカー 山本直人さん
「自分の国の文化を生かして、海外からの視点や意見を言ってもらえればと思います。
薛さんみたいな人たちが会社にいてくれればいいなと、きょう見ながら思いました。」

2週間のプログラムを通じて、薛さんはこの会社で働く具体的なイメージが湧いてきたといいます。

群馬大学 留学生 薛鳳宇さん
「わたしは、このイベントに参加する前は、群馬の会社が外国人を必要としているかどうか不安がありました。
今回のイベントを通じて、私が本当に役立てると感じました。」

群馬大学の結城教授は、こうしたプログラムを繰り返し、企業との接点を作っていくことが、留学生が地方へと目を向けるきっかけになると考えています。

群馬大学 結城恵教授
「安心して働けて、専門領域も得意の日本語も生かせる選択肢を考えた時に、群馬にいる学生が群馬の魅力ある企業に就職するメリットはあるはずです。
その仕組みをしっかり作っていきたいと思います。」

留学生を国内で就職させようという動きは、文部科学省の支援を受け全国12の大学で行われていますが、とりわけ群馬大学の取り組みは地元での就職に成果をあげていて、注目を集めています。
群馬大学の結城教授は、地方で就職する場合「生活面」や「賃金」などに不安を抱える留学生も多いため、今後は、待遇や生活する上でのサポート体制などについて、企業から留学生に丁寧に説明する機会も多く設けていきたいと話しています。

取材:中江文人(おはよう日本)

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