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2019年9月5日(木)

外国人の叫び “ニッポンの医療が不安”

日本で働く外国人は146万人、10年前の3倍に増えていて、いまや私たちの暮らしや産業の維持には欠かせない存在となっています。
ところがいま、彼らが体調不良で病院に行っても、適切な治療を受けられないという事態が広がっています。

外国人 “痛い 苦しい”が伝わらず 相次ぐ医療トラブル

ミャンマー人のニラ・アウンさんは、埼玉県の精肉工場で、週に5日、パートでトレーに肉を詰める仕事をしています。
母国語以外は、英語と片言の日本語しか話せませんが、人手不足の工場でとても頼りにされています。

アウンさんは、ミャンマーの両親やきょうだいの暮らしを助けたいと、4年前、日本にやってきました。
ところが、来日から3か月、突然、激しい腹痛に襲われます。

アウンさんは、すぐに近隣のクリニックに駆け込み、片言の日本語で痛みを必死に訴えました。
しかし、うまく伝わらなかったのか、処方された薬を飲んでも腹痛は治まりませんでした。
痛みの原因がわかったのは3か月後。
猛烈な痛みで、英語が通じる病院に救急搬送された時でした。

診断は、「癒着性イレウス」。
いわゆる「腸閉塞」でした。
英語による丁寧な聞き取りで、初めてわかったのです。

アウンさんは手術を受け、腸の一部を切除しました。
医師からは、早く発見できれば、薬の治療ですんだ可能性が高いと聞きました。

手術によって治療は長引き、働けない期間が長く続いてしまいました。

ニラ・アウンさん
「病院で、医師に自分の症状を伝える事ができていたら、私の病気は最初の病院で適切な治療を受けることができて、そこで治ったのではないか…。
それを思うと、とても辛いです。」

日本で暮らす外国人が増える一方で、厚生労働省の調査によると、通訳を配置している病院は、4.3%にすぎません。
言葉が通じないことによる問題は、全国の医療機関で起きているといいます。
静岡県立大学看護学部講師の濱井妙子さんは、外国人のトラブルについて、医療機関への調査を行いました。
270を超える病院から回答があり、具体的な事例が報告されました。

「患者が望むものとは、異なる手術が行われた。」

「妊婦とコミュニケーションが取れず、ケアができないまま、危険な分べんとなってしまった。」

静岡県立大学看護学部講師 濱井妙子さん
「命に関わるようなことですので、安心して医療が受けられるっていうことは非常に重要ではないかと思いますし、それがあって、それが保障されて、多くの優秀な外国人の方々に来てもらえるのかなと。」

医療通訳 日本で働く外国人 命と健康を守るために

医療通訳は、命に直結する仕事であるため、高い専門性が必要です。

外国人が多く暮らす神奈川県大和市にあるクリニックには、1週間で80人ほどの外国人が訪れるため、医療通訳を常駐させています。
患者の国籍は多様であるため、タイ語やタガログ語など、5カ国語の通訳が交代で対応しています。
短い診療時間では、必要な情報が十分得られないため、通訳は待合室から聞き取りを始めます。
通訳は、聞いた情報を整理した上で、医師に伝えます。
おかげで、医師は、短い時間で適切な診療ができ、診断、治療がスムーズに進むと言います。
また、胃カメラなど検査の場合は、患者の不安が大きいと、うまくできません。
通訳は、臨機応変に声をかけたり、状況を丁寧に説明したりして、患者の不安を取り除くことも大切です。

単に、言葉を訳すだけでなく、医師のパートナーとなって、主体的に外国人患者を支えていくことが、医療通訳の役割なのです。

小林国際クリニック院長 小林米幸さん
「外国人は、私たちの隣人として暮らしている、暮らしているだけじゃない、実際、労働力として入ってきて、しかも税金を払っているっていうことは、彼らの健康を守るのはもう当たり前。」

日本で働く外国人の多くは、健康保険料を支払っているため、医療を受ける権利があります。
国も対策を打ち出しています。

まず、地域ごとに、外国人の診療の拠点病院を決め、通訳を配置。
それ以外の多くの医療機関には、電話での通訳をすすめ、それぞれに費用の一部を補助します。
ただ、体の状態を詳しく見る必要がある場合や、器具を使った検査の場合は電話では難しく、神奈川県大和市のクリニックのように、拠点病院でなくても独自に通訳を雇っているところもあります。
それぞれの医療機関の実情に合わせて、費用の補助を広げるなどして、外国人が安心して暮らせる環境を整えていく必要があると感じました。

取材:太田緑ディレクター(おはよう日本)

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