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2019年9月4日(水)

密着! ライチョウ復活大作戦

2,000メートル以上の高い山に生息する、国の特別天然記念物ニホンライチョウ。
絶滅のおそれがあるとされています。



数が減っている理由の1つが生態系の変化です。
これまでライチョウの生息環境にほとんどいなかった動物の“侵入”が、ライチョウの生存を脅かしているのです。
開発で追われたイノシシやシカが、ライチョウの生息エリアに進出。
エサとなる高山植物を食い荒らし、登山客が残した食べ物を求めるなどして高山に侵入してきたニホンザルやキツネが、ライチョウを襲います。

長距離を飛ぶことはあまりないライチョウは、それぞれの山ごとに分かれて暮らしています。
このうち中央アルプスでは、半世紀前に姿を消してしまいました。

しかし、去年の夏、その中央アルプスで1羽のメスが確認されました。
別の山から、飛来してきたものと見られています。
この1羽の存在が、ライチョウ復活プロジェクトに結びつきました。

ライチョウ復活! 世紀の大作戦

この春、中央アルプス、木曽駒ヶ岳で行われた調査。
足跡が見つかり、去年見つかったメスが無事に冬を越せたことが確認できました。
メスの生存が確認されたことで始まったのが、「卵移し替えプロジェクト」です。

ライチョウなど一部の鳥には、オスがいなくても無精卵を生み、温める習性があります。
この習性を利用し、別の山から持ってきた有精卵と交換して、ヒナをふ化させるという計画です。
いったん絶滅した場所でヒナを誕生させ、生息域を広げようという狙いです。

環境省とともに、この計画を進めるのはライチョウ研究の第一人者、信州大学名誉教授の中村浩志(なかむら・ひろし)さんです。

信州大学 名誉教授 中村浩志さん
「非常にすばらしい機会だと思います。
50年ぶりに、ライチョウのメスに、ヒナをふ化させる可能性が出て来たわけです。」

卵は、ライチョウが比較的多く生息する北アルプスの南端、乗鞍岳で採取することになりました。
環境省の職員など、多い日には1日15人がかりで探します。
巣は、高山植物の影に隠れているため、親鳥の姿をたどって探すしかありません。

傾斜地で空を飛べるライチョウを追いかけるのは一苦労。
12日間かけて、ようやく6個の卵を見つけました。
複数の巣から集めて、乗鞍岳のライチョウの繁殖に影響を与えないよう、配慮します。
ライチョウは、卵が減ると数日のうちに、新たに産むとも言われています。

6月8日。
卵移しかえプロジェクトの決行の日です。
卵は親鳥から長時間、離せないので時間との闘いです。
乗鞍岳であらかじめ見つけてあった巣から6個の卵を一気に集め、この日のうちに50キロほど離れた中央アルプスまで運ばなければなりません。
メスが巣を作っている、標高2,900メートル付近に向かいました。

信州大学 名誉教授 中村浩志さん
「その根元に巣があります。
いま抱卵中のはずですね。」

中村さんが指さした先を見ると飛来したメスは、無精卵を抱いていました。
乗鞍岳で採取した、6つの有精卵と入れ替えました。
あとはメスが卵を温めてくれるよう、祈るしかありません。

卵を移し替えて3週間後。
6つのうち、5つの卵がふ化していることが確認されました。
半世紀ぶりに、中央アルプスでライチョウのヒナが誕生しました。

環境省 担当者
「これまで、無精卵を抱いていてヒナの顔を見ることができなかった母親が、ヒナを連れて歩いているというのは、感慨深いですよね。」

ヒナが誕生したものの、自然界では5~6羽のうち、無事に育つのは1羽程度と言われています。
決して、安心はできません。
中村さんたちは、定期的に遠くから見守ることにしました。

ふ化を確認してから10日後、自然は厳しい現実を突きつけてきました。
メスの姿は見つかりましたが、近くにヒナの姿がありません。
さらに周辺を調べてみると、キツネと見られる動物の糞が見つかりました。
天敵に食べられたかどうかははっきりしませんが、5羽のヒナは全滅していました。

今回のプロジェクトは、飛来したメスの抱卵に合わせて急きょ立ち上げたプロジェクトだったため、生まれたヒナの保護にまで手が回りませんでした。
環境省は南アルプスで、小屋の中に夜間、ライチョウの親子を入れ、天敵から守る取り組みを行っています。
中央アルプスでも来年(2020年)は、こうした保護も合わせて行いたいとしています。

ライチョウの数は全国でおよそ1,700羽。
多いと感じる人もいるかもしれませんが、人間が繁殖に手を貸さないと種が維持できない数です。
人間の影響で、生存を脅かされたライチョウを人の手で復活させる。
今回は、誕生させるところまでしか実現できませんでしたが、来シーズン以降も挑戦は続きます。

信州大学 名誉教授 中村浩志さん
「今しっかり調査して、しっかりした保護対策を立てなければ、絶滅した日本のトキのようになってしまう。
しかし、今だったらまだ間に合う。
そう信じています。」

生息環境の悪化には人間の影響があることを考えると、今のうちになんとかしなければと強く感じました。
プロジェクトの今後に注目していきたいと思います。

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