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2019年8月27日(火)

あすから開催 TICAD=アフリカ開発会議

G7サミットに引き続き、あす(28日)から、もう1つ日本にとって重要な国際会議が開かれます。
日本政府などが主催しアフリカ54か国の首脳らが一堂に会する、TICAD=アフリカ開発会議です。
近年、人口が爆発的に増加しているアフリカは、毎年5%前後の経済成長が続き、「最後の巨大市場」として中国をはじめ、世界各国が進出しています。
そのなかで、日本は遅れをとっているという指摘も出ています。
日本からの投資の拡大に向け、いま政府が進出を後押ししようとしているのが中小企業です。
JICA・国際協力機構の支援を受け、これまでのべ100社以上の中小企業が、アフリカでビジネスを始めています。
日本の中小企業が挑むアフリカ市場。
その最前線を取材すると課題も見えてきました。

モザンビークの食文化を変革! 日本企業が営む魚屋

アフリカ南東部にある、モザンビーク。
首都マプトに今年オープンし、人気を集めている魚屋があります。
売られているのは、淡水のタイと呼ばれる「ティラピア」。
新鮮で、安く買えると評判です。
日本企業から派遣されて、1人で現地のスタッフを取りまとめているのが、この店の責任者・松永徹さん。
松永さんたちの会社は、この国の食を変えようとしています。
冷凍技術が発達していないモザンビークでは、一般家庭で新鮮な魚をなかなか食べることができません。
そこで松永さんたちは、養殖から販売までを一貫して現地で行うことで、低価格を実現させました。

手作りの養殖場で4年前からティラピアを育て始め、今では年間2トン生産。
その魚をマイナス25℃で急速冷凍し、新鮮な状態で販売しています。

水産物冷凍加工会社 現地法人 松永徹さん
「品質もよく、値段も手ごろであると皆さんに受け入れられるティラピアをつくりたいですね。」

この事業を始めたのは、三重県にある社員20人の中小企業です。
日本国内向けに水産物の加工や販売を行ってきました。
日本での魚の消費量が減り続けるなか、国内市場だけでは行き詰まってしまうと危機感を強めていたのです。
国民の4割が栄養不足だと言われているモザンビークで、おいしくて栄養豊富な魚を提供できれば、ビジネスとして成り立つと考えました。
この家庭では、これまでほとんど食べることができなかった魚を、今では週に3、4回は食べるようになり、病気にならなくなったと言います。

JICAの支援で動き出した アフリカビジネス

事業を始める時、松永さんたちが利用したのが、JICA=国際協力機構の支援制度です。
JICAは、アフリカの課題解決につながるビジネスを始める中小企業に対して、事業の立ち上げに必要な調査費や人件費などを援助。
松永さんの事業は「現地の栄養改善につながる」として認められ、5000万円の支援を受けました。

JICAの支援を受けた松永さんたちが最初に取り組んだのが、養殖のカギを握る餌の開発。
日本の研究者と、現地の大学の共同研究を立ち上げました。
その結果、モザンビークでどこでも生えている、モリンガという木の葉が、餌に使えることを発見。
これまで輸入に頼っていた魚の餌を、地元の材料から作ることで、生産コストを3割以上抑えることができたのです。

モザンビーク ガザ工科大学 ミコザ・ンコーレ教授
「高い餌のせいで、多くの人が養殖を諦めてきました。
日本の技術が導入されるのはすばらしいことです。」

JICAモザンビーク事務所 遠藤浩昭所長
「中小企業が持ついろんな技術やサービスが、この国が抱える課題にフィットするものもたくさんあると思う。」

中小企業ならではの壁

しかし、アフリカで事業を続ける上で、中小企業ならではの課題もあります。
当初5年で黒字化するはずでしたが、赤字経営が続いています。
経営体力の弱い中小企業として、少しでも早く黒字化させる必要に迫られているのです。
この日、松永さんは事業をさらに拡大しようと、新たな店舗の下見に訪れました。
今年(2019年)1月には、所有者をかたる人物から偽の賃貸契約を結ばされてしまうなど、思ったように事業が展開できていません。
松永さんは、事業の経過報告を聞きに訪れたJICAの職員に、さらなる金銭的な支援を受けられないか、相談を持ちかけました。
しかし今の枠組みでは、事業展開の入り口の手伝いはできるものの、立ち上げ後の支援はできないと告げられました。
松永さんは、日本政府だけに頼るのではなく、新たな支援先を見つけなければならないと感じています。

水産物冷凍加工会社 現地法人 松永徹さん
「続けたいんですよね、ここまでいろんな人やJICAからも協力してもらってやってきたので、事業が安心できるレベルまでは必ずやりたいです。」

中小企業のアフリカ進出 課題と可能性は

日本の中小企業が現地でビジネスを成功させるための大きな課題は、進出した後、いかに事業を拡大していくかです。
アフリカには、水のいらないバイオトイレや、もみ殻から燃料を作る機械を販売する中小企業などが、JICAの支援を受けて進出していますが、この苦しい時期を乗り越えて事業を軌道に乗せているところもあるということです。
中小企業の持ち味は、行動力と柔軟さだと取材を通して感じました。
これまでもさまざまな変化に知恵と工夫で対応してきた日本の中小企業ですから、アフリカでも新たな道を切り開いてくれることに期待したいと思います。

取材:田村銀河(国際部)

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