首都圏に展開するクリーニング店で働くBさんです。
2年前、パート社員から店長になるとき、個人事業主になりました。
会社からは「店長になるか辞めるか、どちらかを選べ」と告げられたと言います。
Bさん
「いきなりお店に来て、オーナーにするからって話だったんで。
それもすぐ返事をよこせみたいな。
契約書が2つポンと置いてあって、『はんこを押せばいいから』と。」
もともとこのクリーニングチェーンでは、店に社員を派遣し、パートと共に営業する形をとっていました。
ところが2年前、その方針を転換。
社員の代わりにパートなどを店長にし、個人事業主としてそれぞれの店の経営を任せる方式にしたのです。
Bさんは店長になることで、年収460万円を保障されるようになりました。
手取りにすれば月30万円ほど。
Bさん
「だいたい先月は(パート代で)15万円くらいかかっていますね。
だからもう、30万円もらっても(収入は)半分です。」
さらに、「個人事業主」になったことで、働き方にもしわ寄せが。
店では連日、閉店時間の8時が近づいてもお客さんがやってきます。
Bさん
「その時間帯に持ってこられた品物は、当日タグ付けして翌日の朝配送が取りにくるまでには仕上げてなきゃいけないんですね。
(閉店時間に仕事が)終わるわけがないんですよ。」
結局、この日の作業が終わったのは、午後11時近く。
毎月の労働時間は300時間以上にのぼります。
店は正月3が日以外は無休のため、Bさんはずっと働き続けなければいけないこの状況に不安を募らせています。
Bさん
「一番しんどいのは、やっぱり長時間労働と後は休みがないことですね。
だいたい月に休めて4日。
パートの方が全然よかったですよね。」
Bさんは、同じチェーン店の店長たち5人と労働組合を立ち上げました。
現在、サポートを受けながら会社に待遇改善を申し入れています。
Bさんを支援する 日本労働評議会 工藤貴史さん
「目下のところ会社に要求しているのが、ひとつ定休日を設けさせろと。
定休日を設けることによって、パートを使うことを抑えることができるわけです。
それによって店長さんのもとに残るお金も確保できるわけです。」
一方、こうした当事者側の声に対し、会社側の見解は以下です。
▼オーナーになることを打診したところ、それに応じたため契約内容を明らかにした上で業務委託契約を締結するにいたった。
▼メリットがあると判断し、複数店舗を経営したいと申し入れてくるオーナーもいる。
▼今後、改善策について当事者らと話し合っていく。
本来は対等な契約関係ですが、働く場所を提供する会社から変更を申し出られると断るのは難しい面があり、こうしたケースは少なくありません。
また社員の働き方改革を迫られている会社にとって、残業がつかない個人事業主は都合がよい労働力になりがちです。
労働問題に詳しい専門家は、「同じ境遇の人たちと声をあげ、実態を広く知ってもらうことが大事。そうすれば行政などが会社に調査に入る可能性がある」と話しています。